カギを握るのは企業貯蓄率 マイナスになれば日本経済拡大の可能性大

会計やマーケットのミクロ経済ではROEやROAが重視されるが、企業がどれだけ実際に働いている資本を効率的に使っているかを見るマクロ経済では、このNFOに対する利益率の方が重要であろう。企業のネット資金調達額に対する利益率(RoNFO)を見ると、2016年1-3月期には18.3%となり、1990年前後のバブル期(+20%程度)以来の高さになっている。

分子の経常利益は法人企業統計を使い分母のサンプルと一致しないため、他の利益率との単純な比較はできないが、RoNFO自体の時系列的な比較は有効である。株価が強く上昇すると、株式・出資金が時価評価で膨らむためNFOが増加し、RoNFOを下押しするが、その下押しに十分に耐え、+18%程度を維持している。

長年のリストラや事業再編・再構築、または新規企業の興隆などによる構造改革により、マクロ経済としての日本企業は、かなりの高利益体質になっているばかりではなく、資本効率的になっていることが確認できる。

ミクロ経済のROEやROAだけでは、日本企業の実力を過小評価することになってしまう。マクロ経済では、日本企業のRoNFOは高いため、企業貯蓄率がマイナスとなりNFOが増加する環境となれば、日本経済の拡大は著しくなる可能性を秘めていることになる。

三本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)の政策により企業を刺激し、企業活動を回復させ、企業貯蓄率をマイナスに戻し、デフレ完全脱却を目指すアベノミクスの方向性は正しいと考える。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

【編集部のオススメ記事】
「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)