悪材料の減少
前回のレポートで述べた通り、日本株はリターン・リバーサルの動きが顕著だ。ドル円が依然として102円程度の水準であっても、この程度の円高なら大丈夫と織り込んだ感があり、為替感応度の高い株の買い戻しが進んでいる。
為替感応度のファクターリターンを見ると、円高進行に伴って年初からずっとマイナス効果だった(為替感応度の高い株が売られたことを示す)。それが、7月中旬に一時的に円安に振れたあと、再び円高に戻っても、為替感応度のファクターリターンはプラス効果を維持している。これは円高であっても為替感応度の高い銘柄が買われていることを示している。
これまでの内需ディフェンシブ一辺倒の物色からグローバル景気敏感株へも買いが入るようになった。出遅れていた割安株が物色されている。そうかと思うと、今日は決算を受けて内需が息を吹き返している。マザーズのバイオ関連も買われている。だからと言って、グローバル景気敏感が売られているわけではない。良い循環物色が始まっている。
利益確定売りを入れながら、基調としてはこのまま月末のジャクソンホールでのイエレンFRB議長講演まで堅調相場が続きそうだ。ジャクソンホールで年内利上げを示唆するコメントがあればドル高へ為替は修正し始めるだろう。その時点では日経平均は17400円(EPS1200円×PER14.5倍)程度が期待できると考える。
僕は7月の日銀の決定会合と8月初めの経済対策の閣議決定で「政策期待相場」は終了、一旦手仕舞って夏休み、と提唱した。その通りに、先週は日経平均は一時1万6000円の大台を割り込んだ。そこが「政策期待相場」終了に伴う調整のボトムとなったようだ。そこから気が付けば1000円近く上げてきた。日銀のETF買い入れによる下値不安の後退が背景とされる。もちろん、それもひとつの材料だが、もっと大きな要因を認識するべきだろう。
トランプ・リスクの低下、円高による業績悪化懸念の織り込み、ドル円相場もダブル・ボトムを形成しつつあること。9月の金融政策期待。日本株を取り巻く投資環境は、悪材料がほとんど見当たらないことに気付くだろう。
広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券
チーフ・ストラテジスト
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