イエレンFRB議長のジャクソンホール会合での発言以降、株式市場参加者にとって最大の関心事は、米雇用統計(9/2発表)から日米の金融政策決定会合(9/21)に至る過程で何が起こるかという点にあると思われます。
8月の米雇用統計で「非農業部門雇用者数」(前月比)が事前予想の18万人増を超え、「失業率」が事前予想の4.8%以下となり、全体に賃金インフレを警戒させる内容になっていると理解されれば、円安・ドル高を追い風に株価が上昇を加速させるシナリオもありそうです。反面、雇用統計が事前予想よりも弱い数字を示した場合、円高・ドル安への反転や株価の下落も警戒されるでしょう。
しかし、米雇用統計やFOMCだけが株式市場の話題というわけではなく、「人の行く裏に道あり花の山」かもしれません。市場参加者が9月末にかけて関心を強めていくとみられるもうひとつのテーマに注目すべきかもしれません。それは「株主還元」だと思います。
3月決算および9月決算の銘柄のほとんどが9/27(火)に権利付最終日を迎えますが、そこに向け、配当や株主優待など株主還元に手厚い企業が「静かに」人気を集める可能性もありそうです。仮に米雇用統計がどのような数値になっていても、日本の緩和的金融政策は当面は継続するとみられ、配当や株主優待を享受して株式投資のパフォーマンスを上げる努力は必要であり続けると考えられます。
そこで今回の「日本株投資戦略」では、主力銘柄の中から好配当利回りが期待できる銘柄を選び出してまず母集団としました。さらにそれらの中から、中間配当や株主優待もあり、9/27(火)時点で権利を確保しておくことが有利とみられる銘柄を抽出し、ご紹介することにしました。投資家の皆様が多く社名や事業内容を知っている主力企業でも、株主還元に手厚い銘柄は決して少なくないと思います。
ご存知「主力銘柄」でも好配当の享受が可能
表1は東京株式市場に上場する主力銘柄(時価総額1,000億円以上の3月決算銘柄)のうち、年間で好配当利回りが期待できるうえ、中間配当も予定されている企業をご紹介したものです。また、9月末時点での株主優待の有無についても併記させていただきました。具体的なスクリーニング条件は以下の通りです。
(1)時価総額1,000億円以上(8/31現在)で、3月決算の東証上場銘柄(金融、ETF、REITは除く)(2)17/3期末、16/9中間期末に配当が予想されている銘柄
(3)17/3期の純利益が黒字を予想(会社予想)されている銘柄
上記の全条件を満たす銘柄を17/3期予想配当利回りが高い順に20銘柄をランキングしたものが表1です。なお、そのうち9月末付で株主優待を実施する予定の企業には◯印を、そうでない銘柄には×印を付けました。
なお、3月末が決算期末の銘柄については、9月中間期末の権利付最終日が9/27(火)になっていますので、この日までに株式を保有していない場合は、中間配当や株主優待を受け取る権利が生じませんので要注意です。
前回、株主優待銘柄についてご説明した時と同様に、一般的に権利付最終日にかけてある程度の期間に、権利取りを目的とした買いで株価が上昇し、権利落ち日以降に下げる銘柄も少なくありませんので、その点にも注意が必要です。
こうした値動きに伴うリスクを回避する手段として、信用取引口座を開設している投資家であれば「つなぎ売り」という手段もあります。当社WEBページにもご説明ページがありますので、ご参考いただければと存じます。
また、予想配当利回りは通常、「年間に受け取るすべての配当金について、一株当たりの金額が計算時の株価に対し何%に相当するか」を示しています。すなわち、中間期末および期末の配当をすべて受け取った場合の利回りになります。例えば、中間期末の配当だけを受け取り、期末の配当取りの権利が確定する前に売却した場合の利回りとは異なりますので注意が必要です。
表1は「予想配当利回り」が高い銘柄をご紹介していますが、上位銘柄の多くは予想PERやPBRでみても低いという共通項があるようです。自動車や商社など、株式市場で「割安セクター」とみなされている銘柄が多くなっています。これらの銘柄は何らかの理由で株価が大きく下げたものもあり、その結果として配当利回りが高くなったものもあるようです。個々の銘柄の業績動向にもご注意いただきたいと思います。