中国で2015年収費公路(有料道路)統計公報が発布された。それによると収支欠損(赤字)は3187億元にも及び、コントロールできる範囲を超えつつるという。

たしかにガラガラの高速道路と建設中の現場は、中国では見慣れた光景である。実情はどうなっているのだろうか。

料金の減免処置で経済へ貢献

統計によると2015年、全国で544億6000万元に上る通行費の減免を実施している。そのうち生鮮食料品輸送車の減免が281億元、重要連休における小型車減免措置で207億2000万元、その他政策性減免56億3000万元となっており、生鮮輸送が50%を占めている。減免額は収入総額の13.3%にも及ぶ。

しかし、農産品の流通経費削減、観光旅行業の発展に「突出貢献」をした。

道路収入はどのように使われているのだろうか。同統計によると、2015年の全国有料道路の通行費収入総額は4097億8000万元。支出総額は7285億1000万元である。交通運輸部公路局によると支出の80%は、債務と利息の返済に当てられる。残り20%は道路の保守管理と、道路と付属施設の建設である。有料道路のうち98%以上は高速道路で、1級60%、2級40%に分かれている。これらは建設政策に則って行われている。

止まらぬ赤字拡大

交通運輸部によると、2015年の全国の赤字額は3187億3000万元だが、これは2014年の1571億1000万元の2倍にふくらんでいる。さらに言えば2010年の赤字額は323億3000万元に過ぎず、5年で10倍近くに膨れ上がった

2015年の債務元本返済は、1391億3000万元の増加、利息は150億9000万元の増加で、それぞれの増加率は、△66%、△7.2%である。これについて公路局の見解は、(1)建設任務が重く債務の増加が速い。(2)当面、債務償還がピークの時期に当たる--というものだ。

これでは債務の増加は止まりそうにない。累計債務は4兆4493億7000万元に及び、ここ5年、毎年返済必要な債務元本は3000億元、利息は2670億元、と5000億元を上回る。とても今の収入レベルでは返済できそうもない。日本人なら誰でも道路公団改革を思い出すに違いない。

特許経営制度その他の問題

国家発展改革員会運輸研究所によると、中国の高速道路は、まだ一刻も速く集中的に建設する段階にあり、国家財政の投入なくして需給を満足させることはできない。

しかし現行の道路管理条例と社会資本の吸引とがうまく機能していないことも確かである。特許経営制度、価格政策、資本の増減資など、改善を要する課題は多いとしている。

一方で高速道路の運営は起債期、経営期、養護期と3期に分かれ、養護期になれば債務は自然に減少するから心配ないと体制の擁護も忘れていない

とにかくまだ何1つとして改革はなされていない。あまりの債務増加ぶりに、何か発言しなくては示しがつかなくなった可能性が高い。大問題がさらに大きさを増している。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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