年末の楽しみに「流行語大賞」がある。2016年の流行語大賞には、「神ってる」が選ばれた。25年ぶりにセリーグ制覇した広島カープの緒方監督が鈴木誠也選手を称した言葉だ。金融業界関連からは「マイナス金利」と「トランプ現象」がトップ10に選ばれた。金融関連としては2013年のアベノミクス以来でないだろうか?流行語大賞にも選ばれるほどの「マイナス金利」と「トランプ現象」以外で「金融業界の流行語トップ5」を筆者の視点から選んでみた。

第5位 ドイツ銀行破綻懸念

欧州の金融危機は収束しつつあるが、ドイツ銀行の経営問題は2016年の世界の銀行株や金融市場を揺さぶり続けた。同行の株価は、今年に入り50%以上の下落となり、9月に史上最安値を付けた。あの世界を揺るがせたリーマンショック時の安値をも下回る株価だった。

ドイツ銀は、15年の決算では68億ユーロ(約8200億円)の最終赤字を計上。今期の四半期ベースの決算では黒字化しているものの、米国が実施した7月のストレステスト(健全性審査)では不合格となった。さらに、9月には米司法省が住宅ローン担保証券の不正販売を巡り140億ドルの和解金の支払いを要求したことで、BIS基準の未達懸念が伝わり、ドイツ銀株は急落し、米国の銀行株や日本の銀行株だけでなく世界株安を引き起こした。

ヘッジファンドのカリスマ、ジョージ・ソロスもドイツ銀を6000万株も空売りしていたことで話題になった。

第4位 ポケモノミクス

流行語大賞でも「ポケモンGO」はトップ10にセレクトされているが、任天堂の「ポケモンGO」は株式市場でも「ポケモノミクス」という派手な舞台を演出した。

米国でポケモンGOが先行配信されたのは7月6日。配信前の任天堂の7月6日株価は1万4380円だった。ダウンロード数の好調さや社会現象とも言えるヒット状況が米国でレポートされたことで株価が人気化、7月8日には出来高急増、7月9日には株価が2万円突破、7月19日に株価は3万円を突破した。

2兆円だった任天堂の時価総額はわずか8営業日で一時4兆円を超え、19日の高値は3万2700円。株価はなんと配信前から2.3倍となった。これだけ時価総額の大きな株が短期間で急騰することは非常にまれだ。 出来高も異常なほど膨らんだ。7月20日の任天堂の売買代金は7323億円と、個別株として日本市場過去最高を記録、任天堂だけで東証売買代金の約27%に達するほどの過熱ぶりだった。

投資家は関連銘柄探しにも熱狂した。任天堂の株主の京都銀行 <8369> 、任天堂とモバイルゲーム配信について資本・業務提携をしているDeNA <2432> 、「ポケモンEXPOジム」を運営しているサノヤスHD <7022> 、「ポケモンパン」の第一屋製パン <2215> 、店頭でのコラボを発表した日本マクドナルド <2702> などが集中物色され「ポケモン狂想曲」現象を引き起こした。

第3位 OPEC減産合意

今年は原油価格に振り回された1年だった。年初は、中国が元を引き下げたことなどから中国発の世界経済減速懸念となり、日本株は大発会から6日連続安で始まった。世界的な供給過剰懸念、米欧による対イラン経済制裁解除に伴うイランの輸出拡大観測などから原油安が追い打ちを掛けることとなり、世界の金融市場はリスクオフの展開となった。

原油の指標銘柄であるNYMEXのWTIの価格は今年1月20日には26ドル68セントと12年8ヶ月ぶりの安値を付けた。日本株もリスクオフで下げが加速、2月12日には日経平均は15000円を割り込んだ。原油安、円高は日本ではデフレ要因だ。今年の流行語トップ10になった「マイナス金利」の導入もこうしたリスクオフの状況が生み出したものだった。

原油は1月の底値後反転した、9月には11月のOPEC総会で減産合意するとの報道で原油は一時50ドル台を回復した。11月30日のOPEC総会では8年ぶりのOPEC減産が合意に至り、原油価格も52ドル台と今年の最高値を更新している。サウジアラビアがシェア主義から価格政策に方向を転換したとも言われている。

第2位 「BREXIT」

英国のEU離脱に関する国民投票でなんと英国民は大半の予想を裏切りEUからの離脱を選択した。「BREXIT」と言われ今年最大のネガティブ・サプライズだった。世界的な不透明感の台頭から、ユーロやポンドといった欧州通貨は大きく売られ、リスク時のヘッジ通貨として円が買われた。ポンドは5分で8円下落するという歴史的な急落だった。ドル円は2年7ヶ月ぶりの100円割れとなった。

BREXITによる金融市場の混乱は、主要市場の中央銀行の追加金融緩和などで比較的早く立ち直ったが、世界にポピュリズムの流れを作る大きなツームストーンとなった。

BREXITに続き、米トランプ氏を次期大統領に選び、欧州では極右政権が人気を高めてきている。リーマンショック後に貧富の差の拡大、既存のエリート主義による体制に限界を感じた大衆がポピュリズムの道を選びはじめ、グローバル化から保護主義への流れを選びはじめたのだ。こういった流れを作った象徴的事象としてBREXITの持つ意味は大きい。

第1位 グレートローテーション

グレートローテーションとは世界の運用資金の大きなシフトのことをいう。世界の金融市場はトランプ氏が積極的なリフレ政策「トランポノミクス」を推し進め、財源として国債が多発されるとの見方から、債券急落、株急騰という反応を示した。金利低下で30年続いていた「債券」バブルがいよいよ終焉を迎え、「株式の時代」が来るとの見方が強くなってきている。

事前のマスコミ予想では圧倒的に大統領選でのクリントン氏の勝利を予想していた。トランプ氏が勝利した場合は「トランプリスク」として、世界の株式市場は10%ほど調整し、円高になるとの見方が支配的だった。それが全く違う流れとなったのは、すでに米国の利上げモードでその下地ができていて「トランプ現象」がそのきっかけになったのかもしれない。

バンクオブ・アメリカ・メリルリンチによると債券投資信託や上場投資信託(ETF)からトランプ以降の5週間で300億ドル(約3兆4000億円)を超える資金が流出した。2013年以降、同時期としては最大の流出額で、債券投資で損失が生じたことが背景だ。その大半が株式ファンドや株式市場に向かっている模様だ。

今年7月には1.366%の過去最低水準を付けた米国10年債の利回りはトランプ後12月9日には2.478%まで暴騰(債券価格は急落)している。一方で、NYダウは連日過去最高値を更新、日経平均も年初来高値を更新するなど、確かに金融市場のステージが変わってきたような実感がある。

グレートローテーションは本物なのか。来年の金融界での流行語はどうなるのか、2017年も興味がつきない。(ZUU online 編集部)

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