資産形成

平成26年度税制改正に、「1年単位で、NISA口座を開設する金融機関の変更を認めること」と「同一の勘定設定期間内においてNISA口座を廃止した後、翌年以降に再度NISA口座の開設を認めること」が取り入れられました。しかし、NISA恒久化や課税口座との損益通算は今後の課題となりました。今回は、そのNISA恒久化に着目してみます。


NISA恒久化の要望

日本証券業協会「平成26年度税制改正に関する要望」には、「NISAの普及・定着を図るために、非課税期間及び非課税口座開設機関を恒久化すること」が最初に挙げられています。その理由は、「教育資金や結婚資金、住宅資金、老後の備えなど国民の資産形成の本格的な支援のためには、恒久化が必須だから」と、「英国では恒久化等により飛躍的にISA利用者が増加し、国民の4割が利用しているから」などです。イギリスでは、2000年に個人貯蓄口座(ISA)が始まり、当初は2009年までとし導入7年後に制度の効果を検証することとされていましたが、2008年NISA口座を恒久化しました。そして、野村総合研究所8月公表資料によると、NISA制度に関する調査で、利用意向がない回答者のうち876万人(全回答者の9.1%)が、「制度が恒久化されればNISAを利用したい」と答えています。この調査で「NISAを利用したい」と答えたのは3093万人(全回答者の32.2%)なので、恒久化されると普及効果がありそうです。


NISA恒久化のメリット

NISAが恒久化すると、毎年非課税枠を利用でき、将来の資産形成が可能となります。売買のタイミングを計りやすくなり、長くロールオーバーできるようになるため、配当(株式数比例配分方式の場合)と分配金を非課税で長期間受け取ることができます。それでは、長くロールオーバーできると、譲渡のときには何が変わるのでしょうか。ロールオーバーできる場合とできない場合を比べてみましょう。もし、NISA終了時にロールオーバーできなれば、課税口座(特定口座または一般口座)払い出され、課税口座での取得価格は移管時の時価となります。

たとえば50万円で購入した株が、移管時に30万円であれば、課税口座での取得価格は30万円となります。その後40万円で売却しても、10万円利益が生じたとして課税されます。平成26年~平成49年の上場株式の譲渡所得は、所得税と住民税を合わせて20.315%ですから、10万円の譲渡益に対する課税は2万315円です。この課税口座で購入した場合よりも損失が大きくなるので、このパターンは避けたいですね。しかし、ロールオーバーしていれば、上の例で非課税のメリットは享受できませんが、課税は生じません。このように、NISAを恒久化しロールオーバーに制限が設けられなければ、課税口座へ移管したために実質的には利益が出ていないのに課税されるという不都合を避けることができます。