中国,安倍首相,真珠湾
(写真=Benjamin van der Spek/Shutterstock.com)

中国で事前の関心が高かった安倍首相の真珠湾訪問は、実際にどのように報道されたのだろうかか。最初の公式反応は、12月28日の外交部・華春宝報道官の定例記者会見である。まずそれから見てみよう。

外交部の記者会見

記者「日本首相が真珠湾を訪問している。日本首相は南京をも訪問し中国人民に謝罪すべきではないか?」

報道官「ここ数日、中国メディアも西側メディアも、安倍首相のハワイ真珠湾訪問に関心を寄せていた。安倍首相は慰霊であって謝罪ではないという部分には十分留意している。その上、西側には作り話も多い。それは主に中国に向けたものだ」

「もう一つ我々は、50人におよぶ日本と米国の歴史学者が、連名で安倍首相あて質問状を発していることを思い起こす。安倍首相は中国、韓国など東南アジア国家の戦争被害者に哀悼を示すべきである。その中では最も中国人に対し謝罪しなければならない」

記者「日本の共同通信社報道によると、寛容の心と歴史和解が真珠湾訪問のカギとし、第二次大戦の歴史の完全清算を希望するとしているが、どう思うか?」

報道官「それで解決とは恐ろしい情景だ。世界反ファシズム戦争の東方主戦場は中国だったことを忘れてはならない。この戦いの勝利ために中国人は大きな犠牲を払った。中国や東南アジアの被害国との和解はまだだ。日本のリーダーは言を左右にし、歴史の負債と向き合うことを避けている」

以上はネットニュース騰訊新聞に載ったやりとりだが、外交部の会見記録ではこの半分以下に圧縮されている。またNHKニュースで報道された「巧みなショーだ。」という発言も載っていない。大した出来事ではない、ということにしたい意図のようである。

官制メディア

次に官制メディアの代表、人民日報から見てみよう。

日本政府の方向性は〝慰霊の旅”であって謝罪を表すものではない。安倍首相は、かつて日本が侵略したアジア諸国に謝罪するつもりもない。しかしこれには日米各界から批判がある。と前置きし次のように続く。

日本の「村山談話の継承と発展をする会」は27日、東京で記者会見を行い、安倍首相の真珠湾追悼を批判した。同会は安倍政権はアジアの戦争犠牲者を無視している。南京などへの日本侵略戦争犠牲者追悼に赴くべきである。侵略行為の謝罪、日本各地に強制連行や強制労働などの記念碑を建て、アジア各国の抗日戦争記念館と同様に献花し、生存者に謝罪する行動が必要だと声明した。

さらに日本の識者の談話として、「A級戦犯の孫である安倍がこの時期に慰霊したのは、日米関係の不変を確認するためである」「今回の慰霊は犠牲者に新たな屈辱を与えるものだ」などと伝えている。

最後に華報道官の触れた国際的な動きを詳しく紹介している。12月25日、米国、カナダ、日本、韓国、オーストラリアなどの50人を超す学者が「公開質問状」を発表した。安倍政府は歴史を正視し、戦争の被害国と犠牲者に謝罪すべきという内容だが、これには日米の大物大学教授や、著名映画監督、オリバー・ストーン氏らが参加したことを強調している。

内容はすべて第三者の筆を借りた間接的な日本批判に終始した。外交部が会見記録を圧縮したのと同じで、特にアピールするほどの大事にあらず、と強調したいようである。真珠湾訪問が発表されたときの疑心暗鬼を伴うテンションの高さはすでに見られない。

これは日米間の些事にすぎず、中国の主張は変わらないと立場をすっきりさせたことによるのだろう。もう大きく扱われることはなさそうである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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