できる人,英語の敬語,フレーズ
(写真=The 21 online)

40代からは「丁寧な表現を用いる」

本日発売の『THE21』2017年2月号の総力特集「40代からの『英語』の学び方」では、「英語を使うのに語彙はそれほど必要ない」「構文も簡単でいい」ということを識者の方々に指摘していただいている。とはいえ、40代以上ともなれば、ある程度、相手にしっかりとした印象を与えたいところ。そんなときに役立つ「英語の敬語」の使い方を、『英語のお手本』(朝日新聞出版)の著者であるマヤ・バーダマン氏に聞いた。

「最初からフランクに」は大きな誤解!

「英語には、日本語のような敬語はない」と思っている人は多いのではないでしょうか。確かに、「だ/である」と「です/ます」といった文体の違いや、尊敬語や謙譲語のシステム、「御社」「弊社」といった敬語特有の単語は、英語にはありません。「お世話になっております」「よろしくお願いいたします」などの決まり文句も、英語には相当する言葉がありません。

では、英語に敬語がないのかというと、そういうわけではありません。英語にも相手に敬意を示す丁寧な表現があり、ビジネスシーンではそうした言葉を使うことがマナーとされます。

「英語圏の人たちはフランクだ」と思われがちですが、これも誤解。欧米でも、きちんとした場では、くだけすぎたコミュニケーションは避けるのがベストです。洋画では初対面の相手に「ファーストネームで呼んでくれ」と言うシーンがよく出てきますが、現実の場面でこれをすると違和感を持たれます。

本来は礼儀正しい人が、欧米人に合わせようと思って無理にフランクに振る舞うことで信頼を失う、というすれ違いが起こっているとしたら、なんとも残念なことです。

もちろん、「ネイティブスピーカーではないのだから、多少礼儀を欠いた表現をしても許されるだろう」という意見も一理あります。しかし、継続的な関係を築くなら、やはり気持ちをきちんと届ける表現が不可欠。プロフェッショナルとして信頼されるためにも、誠意や敬意が伝わる表現を知っておくことが得策です。

相手に敬意を伝える「ひと工夫」とは?

英語と日本語とで違うのは、敬意の表わし方です。

日本語では、尊敬語や謙譲語を正しく使い分けることや、「いつもお世話になっております」などの決まった言い回しを使うことなど、「型」どおりの表現を使うことが敬意を示すことになります。

それに対して、英語にはそうした決まった「型」がありません。むしろ、「型どおりの表現をしない」ことが相手への気遣いになるのが特徴です。

たとえば、「ありがとうございます」を「Thank you.」ですませず、相手のしてくれたことに具体的にひと言触れて、「Thank you for your help.」などと言うことで丁寧な表現になります。つまり、英語で丁寧な表現をするときは、その都度、状況に即した言葉を考えて、相手に伝えるのです。このように、相手の行為や状況に即して言い方にひと工夫加えることを「パーソナライズ」と言います。

こう聞くと大変だと思うかもしれませんが、まったく心配はいりません。新たに単語や文法を暗記する必要はなく、よく知っている単語の組み合わせによって、簡単に表現できるからです。

日本語の表現を直訳すると逆効果にも!?

使える場面が多い表現を、いくつかご紹介しましょう。

まず、誰かにお願いをするとき。「Please+命令文」を使う人が多いでしょうが、毎回これでは、少々つっけんどんな印象を与えてしまいます。丁寧なのは、「Would you please ~?(~していただけますでしょうか)」。2語加えるだけで、印象が格段に良くなります。

「It would be appreciated if you could ~(~してくれるとうれしいです)」、「It would be helpful if you could ~(~してくれると助かります)」も丁寧。この3つを覚えておけば十分でしょう。

「~していただけないでしょうか」と、日本語では否定形にすることで敬意を表わすことがあるので、そのまま英語に訳して「Won't you ~?」と言う人がいるのですが、これだと「やってくれないんですか?」という相手を責めるようなニュアンスになってしまいます。

相手の依頼や誘いを断わるときは、いきなり「I can't」で始めず、「I'm afraid that(申し訳ありませんが)」を最初につけましょう。

日本語では、「それは難しいです」という婉曲な断わり方がありますが、これをそのまま「It's difficult.」と英語で言うと、「できません」ではなく、「難しい(けれどやってみます)」という意味に受け取られてしまいます。

もう1つ、日本人がやってしまいがちで、ネイティブスピーカーにはあまり印象が良くないのが「オウム返し」です。初対面の人に「How do you do?(初めまして)」と言われて、そのまま「How do you do?」と返すのは機械的に聞こえ、きちんと相手に向き合っていないような印象になります。たとえば、「It's a pleasure to meet you.(お会いできてうれしいです)」など、別の言葉を返しましょう。これも、「型どおりの表現をしない」、気遣いのある英語的な敬語表現と言えるかもしれませんね。

覚えておくと便利な英語の「敬語」表現15

「お願いをする」とき

1 Would you please submit the report by Monday?
月曜日までに報告書を提出していただけますか?

2 I'm sorry to trouble you but would you please submit the report by Monday?
お忙しいところ恐れ入りますが、月曜日までに報告書を提出していただけますか?

3 It would be appreciated if you could ~.
~していただけると嬉しいです。

4 It would be helpful if you could ~.
~してくれると助かります。

5 Would it be possible to ask you to ~?
~していただくのは可能ですか?

「感謝する」とき

6 Thank you for your help.

7 I appreciate your helping me.
ご協力いただき、ありがとうございます。

8 I appreciate your assistance with this project.
このプロジェクトではお世話になりまして、ありがとうございます。

9 Thank you for your continued support.
いつもお世話になっております。

「断わる」とき

10 I'm afraid I'm not able to help.

11 I'm sorry but I'm not able to help.
申し訳ありませんが、難しいです。

12 I regret that we are unable to accept the proposal.
残念ながら、ご提案は採用できません。

「よろしくお願い申し上げます」の代わりに使える表現

日本語ではメールの最後に「よろしくお願い申し上げます」と書くのが「型」だが、英語には決まった「型」はない。その代わりに使いやすい表現の例。

13 I look forward to seeing you again.
またお目にかかれることを楽しみにしています。

14 I look forward to hearing from you.
お返事をお待ちしています。

15 I look forward to working with you.
(お仕事で)ご一緒できるのを楽しみにしています。

マヤ・バーダマン(Maya Vardaman)『英語のお手本』著者
宮城県生まれ。上智大学卒業。ハワイ大学に留学し、帰国後は秘書業を経てゴールドマン・サックスに勤務し、現在は別の外資系企業に勤務。近著に『英語のお手本』(朝日新聞出版)がある。(取材・構成:林 加愛)(『 The 21 online 』2017年2月号より)

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