経済学の権威、ジェレミー・シエゲル教授が、「トランプ大統領が辞任したら、ダウ・ジョーンズが1000ポイントあがる」 と発言した。

今年に入り、多くの専門家が「トランプラリーの終焉予言」とともに、市場が悲観的な方向に走ると予測しているが、シエゲル教授は終焉が好転につながるとの見解だ。

フリン前大統領補佐官の捜査をめぐり、新政権誕生後、最大の反転

トランプ政権の現実が明らかになるにつれ、米株式市場がトランプ・ラリーから目覚め始めた感が濃くなり始めている。

5月に入り、政権交代以来、最大の反転を見せたが、直接の引き金となったのは、ロシア接触をめぐる疑惑の渦中にいるフリン前大統領補佐官の捜査を、トランプ大統領がFBIに取りやめるよう要請したという欧米メディアの報道だ。

報道直後、ダウ工業株式30種平均の下げは372.82ドル(約4万1573円)を超え、S&P500種は1.8%安の2357.03。ナスダック総合指数は2.6%の下落となり、ボラリティ指数が46%に達した(ブルームバーグ、5月17日データ)。

こうした変動を「下落は一時的なもの」と楽観視する声と、トランプラリーの終幕を確信する声で、現在市場は入り乱れている。

トランプラリーを後押ししているのは共和党の自由主義?

「インデックス投資の教祖」との異名を持つ、コロンビア大学のジェレミー・シエゲル教授は、かねてからダウの好調ぶりに楽観的な見解を示す一方で、「市場にとっての潜在的なマイナス要因は、トランプ大統領自身によってもたらされる」と予言していた。

S&P500種の下落直後、CNBCのTV番組に出演した際には、「トランプ政権の終結が株式相場を押し上げる」 と発言。

ウォール街がいだいていたトランプ政権の幻想が崩れて行くとともに、今後株価がさらに下落するとの悲観的な予想に反し、シエゲル教授は「トランプ大統領が辞任すれば、市場を激動させる要因が少なくなる」と見ている。

トランプラリーがトランプ大統領個人の政治的思想のみで形成されたものではなく、共和党全体の信念を反映したものである点を、その理由として挙げている。

折しも米国では、トランプ大統領に代わる人物に、ペンス副大統領を推す声が高まっている。大統領交代という事態に発展したとしても、共和党の精神は引き継がれて行くことになる。ウォール街にとっては、トランプ政権が引き起こす数々のリスク要因を排除すると同時に、共和党本来の経済政策支柱である「自由主義」は維持されるというわけだ。

バーナンキFRB議長「市場は政治的リスクを無視する傾向が強い」

最もシエゲル教授の見解を「まだまだ楽観的」と見なす声も上がっている。米ゴールドマン・サックス、独アリアンツのエコノミストなどは、「投資家の楽観視とラリーの現実のギャップは、市場の認知的不協和の兆し」と冷静に分析し、大型インデックスの年内4%下落 を予言している。

ベン・バーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長 は、ラスベガスが開催された金融イベントで、「市場はいつも決定的な瞬間が訪れるまで、政治的リスクを軽視する傾向が強い」と、ウォール街の楽観主義を非難。

数年前、米経済への圧迫が強まった際にも、昨年の英Brexit国民投票の影響も、「非常に楽観視していた」危険性に、懸念を示している。

リソルツ・ウェルス・マネージメントのディレクター、ベン・カールソン氏 は、最新のブルームバーグの寄稿で、トランプラリーがそもそも短命と予測されていたことなどを挙げ、「市場はすでに次の段階に向かっている」と、トランプラリーの終幕を宣言した。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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