公務員などへの接待を規制する金英蘭法が施行された2016年10月以降、韓国主要企業の接待費が減少したと、聯合ニュースが2017年5月9日付で伝えた。高級レストランや農家など経営環境が悪化し、廃業した店もある。

接待費が増加した現代グループ

接待
(写真=ESB Professional/Shutterstock.com)

2016年9月28日、韓国の根深い不正や汚職をなくすことを目的とする「不正請託および金品など授受の禁止に関する法律」が施行された。同法を発案した政府組織・国民権益委員会の元委員長の名前を取って「金英蘭(キム・ヨンラン)法」と呼ばれる同法の施行を機に接待を見直す企業が増えたのだ。

韓国の主要30企業グループで、接待費の内訳を公表した111社の2016年10-12月期の接待費は計212億8600万ウォン(約21億1000万円)で、前年同期比28.1%減少となっている。一方で、同期間の30企業グループの売上総額は2.3%増え、営業利益は48.0%増加した。

グループ別では錦湖アシアナグループの接待費の減少幅が最も大きい対前年同期費65.4%減で、次いでロッテ59.9%減、GS55.0%、未来アセット50.33%と4グループが半分以下となった。

一方で、接待費が多い企業もある。グループ別の接待費総額は、SKグループが29億9200万ウォンで最も多く、現代自動車24億9800万ウォン、現代重工業19億9900万ウォン、ハンファ17億600万ウォン、夏林14億3500万ウォン、現代百貨店11億4400万ウォンと続く。対前年同期比2.1%増となった現代グループの接待費が目立っている。

ダメージを受ける飲食業と農水畜産業

金英蘭法は公務員、メディア関係者、私立学校教員等に対する接待等を規制する法律で、許認可、人事、学校入学などの口利きや金品授受の禁止、外部での講義に対する謝礼などを対象とし、会食費3万ウォン、贈答品5万ウォン、慶弔費10万などの上限を定めている。

ソウルの光化門周辺は、韓国政府やソウル市の官庁が集中し、韓国料理や日本料理を提供する高級レストランも多い。同地域の高級レストランは、歴代大統領や政治家、キャリア官僚、マスコミ関係者などの利用が多かったが、2012年にはじまった政府機関の地方移転で主要顧客の公務員が激減。金英蘭法の施行で客足が減り、死活問題となった店が少なくない。

韓国では会食費を1人がまとめて払う文化がある。上司など組織内の上級者が部下との会食費を負担する。同法は公務員が部下の食費を負担する行為や親戚への贈答、民間企業間の接待は規制の対象外だが、同法の施行に合わせて割り勘が増え、民間企業間の接待も大幅に減少した。

接待の上限である3万ウォンに合わせてメニューを見直した店も多い。主力メニューの刺身では3万ウォンで収まらないとして、メインメニューをイシモチに変えた寿司店や韓国産牛から輸入牛に変えた焼肉店もある。

高級レストランは、相応の従業員を雇い、賃料も月数百万ウォンに上る。公務員だけでなく企業関係者の利用も減り、経営が行き詰まって廃業した老舗飲食店やジャンルを変更した店もある。

飲食店だけではない。お祝いの花や慶弔用の花輪も需要が急減し、なかでも農畜産農家のダメージが大きいという。農水畜産物の供給拡大と物価の安定が急務で、改正を求める声が上がっているが、接待や上司の支払いに安住してきた店も多い。カード払いが主流の韓国では、いまでも割り勘を嫌がる店もあり、企業努力が求められる。(佐々木和義、韓国在住CFP)

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