NAND型フラッシュ・メモリーで培った競争力を他事業へ
しかし、2010年以降スマートフォン向けの半導体「NAND型フラッシュ・メモリー」の世界的な需要拡大を追い風にして、東芝の半導体事業は急激な回復を見せます。2013年9月期の中間決算では、半導体事業の営業利益が1137億円と前年同期比約4倍に増え過去最高を記録します。14年3月期には連結営業利益が2900億円になりますが、大半を半導体が稼ぐことになります。東芝の半導体事業(電子デバイス事業グループ)の事業構造については、2011年頃に再編成され、現在では「ディスクリート半導体」「ロジックLSI」「アナログ・イメージングIC」「メモリ事業」「ストレージ・プロダクト事業」の5つの事業で構成されています。世界シェアトップレベルの「NAND型フラッシュ・メモリー事業」の競争力を他の半導体事業に生かせるかが今後の課題です。
東芝は、半導体、HDDなどで構成する電子デバイス事業グループ売上高を2016年度2兆2000億円まで引き上げるとしています。現在、電子デバイス事業グループでの成長を牽引しているのは、「NAND型フラッシュ・メモリー事業」と同メモリを使用したストレージである「SSD(Solid State Drive)事業」です。NAND型フラッシュ・メモリーの需要について、今後スマートフォンやタブレット、ウェアラブル端末といったコンシューマー機器向けに加えて、サーバやストレージ機器などエンタープライズ機器用SSD向けにも見出していますが、こうしたエンタープライズ分野は今後注目といえるでしょう。
メモリ事業の強化とエンタープライズ分野への本格シフトがカギ
東芝は、NAND型のメモリ事業で「微細化による大容量化、コスト削減の徹底追求」という方針を継続し、今後の需要増へ対応していくとしています。既に2014年4月から量産を開始している15nmプロセス世代品を2014年秋稼働予定の四日市工場でも量産し、次世代型NANDメモリとされる記憶セルを縦方向に積層する「3D NANDメモリ」の開発を加速させる方針です。この分野ではキャノンとの提携の話し合いも行われています。四日市工場にキヤノンの先端製造装置を導入して研究を進める方針です。共同研究するのは「ナノインプリント」と呼ばれる次世代半導体露光技術です。NAND型フラッシュ・メモリー市場で現在シェア32%を握る世界2位の東芝は、キヤノンと協力することで首位のサムスンに対して開発力で優位に立ち、「3D NANDメモリ」市場で主導権を握る考えです。
ディスクリート事業、システムLSI事業については、「国内・コンシューマー」から「海外・車載、産業、通信領域」にシフトして事業構造変革を行っていく方針です。具体的な注力製品分野としては、ディスクリート事業では、白色LED、DTMOS、GaN・SiC等、またシステムLSI事業では、画像認識・モーター制御用LSI、FPGAなどの代替を狙うストラクチャード・アレイをそれぞれターゲット分野としてあげています。エンタープライズ分野の動向が今後の先行きを占うポイントといえるでしょう。
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