本記事は、白取 春彦氏の著書『本当に頭がよい人とわるい人の大きな違い: 頭をよくする思考術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

本当に頭がよい人とわるい人の大きな違い: 頭をよくする思考術
(画像=Yuliia/stock.adobe.com)

賢さと幸福を身につける方法

頭がよければ必ず幸福になれるというわけではないことは、誰でも経験則から知っていることです。また、世間でうまく立ち回り、いつも自分がトクをするようにはからっていれば幸福になれるというわけでもありません。豊かな財産があり、かつ運さえよければ幸福になれるとも限りません。
昔から多くの人はどうすれば自分が幸福になれるかという方法を探し求めています。ということは、自分がそれほど幸福ではないと感じているからでしょう。彼らの仰ぎ見る幸福のイメージはしばしばとても幻想的で甘いものでしょう。
幸福になる方法をすでに見出していたのは古代ギリシアの哲学者アリストテレスです。
彼のいう幸福になる方法とは、自分自身がすぐれた性質を身につけること、です。
このすぐれた性質とは、内在的な善のことです。この内在的な善とは、自分の内側にある善、また、わたしたちが自分に備え持つことができるすぐれた性質を指しています。

たとえば、よい人間関係を築くことは内在的な善の一つです。そのほかに、寛容であること、そこから人を赦せることもすぐれた性質です。もちろん、そのすぐれた性質の中には賢さが含まれているのは当然のことです。
ただし、性質とはいっても、生まれつきの性質という意味ではなく、そういうふうになろうという自分の意志によって手に入れることができる性質を意味しています。
そのようなすぐれた性質を手に入れるためには、自分が実際に行動してそれを自分の習慣にしてしまうことだとアリストテレスは述べています。そういうふうな習慣化によって、他のすぐれた性質、知恵、公平さ、善良さ、誠実さ、などをも自分の性質にすることが可能になるのです。そして内在的な善と自分自身が重なったとき、わたしたちはそうなるべくして幸福な人になっているというわけです。
一方、アリストテレスは外在的な善のことをも述べています。
外在的な善とは自分の外側にある善のことで、たとえば金銭がそれです。社会にあっては、ある程度の金銭がなければ自由に生活していくのが難しくなります。そのために金銭は必要なものですが、自分の内には備わっていない。だから、自分の外にある善という意味で外在的な善なのです。

物理的な力もまた外在的な善であることはもちろんです。その外在的な善が実際に善となりうるのは、わたしたちがそれをよい方向に上手に利用した場合だけです。しかし、外在的な善だけがあれば充分に暮らせるというわけにはいきません。もしお金がたくさんあったとしても自分を本当に心から信頼してくれる人が身近にいないのならば、安心して日々を暮らすことがかなり困難になります。

ところで、日常においてわたしたちをとても喜ばせたりするものはどうでしょう。それこそ、リアルな幸福というものではないのでしょうか。たとえば、宝くじで大金が当たる、とても美味おいしい食事をとる、高級な酒に酔う、たくさんのボーナスをもらう、好きな人と結ばれる、働かなくてもよくなる、スポーツや勉学でトップになる等々、心を躍らせるものはたくさんあります。
そうなったら、そのいっときは幸福感を味わうでしょう。しかしながら、その幸福感はたんに「感」でしかありません。あるいは、それらはギャンブルで大きく勝ったときと同じ僥倖ぎょうこうにすぎないのです。
射幸心しゃこうしん」という言い方にそれがはっきりと表れています。そのときに感じている気持ちの高揚は、幸福というよりも一過性の異常な興奮状態から生じたものであり、その興奮はすぐさま冷めてしまい、ずっと持続することはありません。
こういった幸福感は英語でhappyハッピーといいます。happyはhappenハップンから来ていて、もっとさかのぼると8世紀頃の北欧の古ノルド語のhapハプに起源を持っています。古語のこのhapも英語のhappen も本来は「予期しなかったことがたまたま起こる」とか「偶然」という意味です。要するにハッピーな出来事は偶然であり、日本語で言えば僥倖なのです。
わたしたちが今使っている意味での幸福、また、アリストテレスが示唆する幸福はこのhappyではなく、英語でいうならばWell-beingウェルビーイングのほうでしょう。なぜならば、これは善く存在することという意味だからです。
善く存在するということは自分の意志と現実での行ないからのみ生まれるものであり、たまさか起きることを喜ぶのとはまったく異なった充足感があるからです。

本当に頭がよい人とわるい人の大きな違い: 頭をよくする思考術
白取 春彦(しらとり・はるひこ)
青森市生まれ。ベルリン自由大学で哲学・宗教・文学を6年にわたって専攻する。帰国後、別名で小説を書いていたが、哲学関係の著作に移る。哲学と宗教に関する解説、論評の明快さに定評がある。主な著書に、ミリオンセラーとなった『超訳 ニーチェの言葉』『頭がよくなる思考術』『生きるための哲学 ニーチェ[超]入門』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『「愛」するための哲学』(河出書房新社)、『超要約 哲学書100冊から世界が見える!』(三笠書房)など多数。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)