10月の生産は事前予想を大きく下回る

鉱工業生産
(画像=PIXTA)

経済産業省が11月30日に公表した鉱工業指数によると、17年10月の鉱工業生産指数は前月比0.5%(9月:▲1.0%)と2ヵ月ぶりに上昇したが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比2.0%、当社予想は同1.7%)を大きく下回る結果となった。出荷指数は▲0.5%と2ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比3.1%と6ヵ月ぶりの上昇となった。

10月の生産を業種別に見ると、半導体・IC測定器などの電気機械が前月比2.5%の高い伸びとなり、国内外の設備投資回復を反映しはん用・生産用・業務用機械も前月比0.7%の上昇となったが、化学(除く医薬品)(前月比▲2.9%)、石油・石炭(同▲6.4%)が大きく落ち込んだことから、生産全体の伸びは小幅にとどまった。速報段階で公表される15業種中、8業種が前月比で上昇、6業種が低下した(1業種が横ばい)。

鉱工業生産
(画像=ニッセイ基礎研究所)

なお、大手自動車メーカーが無資格検査問題で一時的に生産を停止した輸送機械は前月比0.7%の上昇となり、影響は限定的だった。ただし、在庫指数が前月比9.5%の急上昇となっており、国内向け出荷停止の影響が在庫の積み上がりとなって現れた可能性がある。

財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は7-9月期の前期比▲0.2%の後、10月は前月比1.6%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は17年7-9月期の前期比0.4%の後、10月は前月比0.7%となった。17年7-9月期のGDP統計の設備投資は前期比0.2%の低い伸びにとどまったが、企業収益の大幅増加に伴う潤沢なキャッシュフローを背景に10-12月期には伸びを高める可能性が高い。

鉱工業生産
(画像=ニッセイ基礎研究所)

一方、消費財出荷指数は17年7-9月期の前期比▲2.3%の後、10月は前月比▲0.4%となった。耐久消費財(前月比▲1.1%)、非耐久消費財(前月比▲1.6%)ともに落ち込んだ。すでに公表されている業界統計、商業動態統計など10月の消費関連指標は、台風上陸や長雨の影響で全体的に弱めの結果となったが、天候要因による消費の不調は一時的なものにとどまる可能性が高く、11月以降は持ち直しに向かうことが見込まれる。

17年7-9月期に前期比▲0.5%と7四半期ぶりの減少となったGDP統計の民間消費は、10-12月期には増加に転じる可能性が高い。ただし、実質所得の伸び悩みが続いていることから、力強い回復には程遠い状況が続くだろう。

IT関連財の牽引力は弱まる

製造工業生産予測指数は、17年11月が前月比2.8%、12月が同3.5%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(10月)、予測修正率(11月)はそれぞれ▲3.8%、▲0.3%であった。

10月の生産実績(速報)は事前の市場予想を大きく下回ったが、11月、12月の生産計画はいずれも高めの伸びとなっており、生産の上昇基調は維持されていると判断される。 17年10月の生産指数を11,12月の予測指数で先延ばしすると、17年10-12月期は前期比3.6%の高い伸びとなる。生産計画が下方修正される傾向が続いていることを考慮しても、7-9月期の前期比0.4%から増産ペースが大きく加速する可能性が高いだろう。

ただし、これまで生産の牽引役となっていたIT関連財の勢いが鈍化している点には注意が必要だ。IT関連財の生産を四半期ベースでみると、16年7-9月期の前期比4.3%をピークに伸び率の低下が続き、17年7-9月期は前期比0.3%となった。16年後半から17年初め頃にかけては生産全体の伸びを大きく上回っていたが、17年度入り後は逆に全体の伸びを下回り、牽引力は弱まっている。

鉱工業生産
(画像=ニッセイ基礎研究所)

また、IT関連財の在庫指数は17年4月を底に20%近く上昇しており、10月には前年比でも上昇に転じた。IT関連財の在庫調整圧力が高まりつつある点は要警戒だろう。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長

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