大手広告代理店に続き、今度はマスメディア関係者の「長時間労働」に伴う過労死が、ニュースで話題になっています。2015年6月30 日に閣議決定された「日本再興戦略」で、引き続き盛り込まれた「働き過ぎ防止のための取り組み強化」。同年7月24 日の閣議決定では「過労死等防止対策推進法」に基づき、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が定められました。

政府は「働き方改革」で長時間労働の是正を訴え、対策の強化を求めています。しかしメディアで話題になること自体、まだ十分とはいえません。抜本的な解決には、そこに潜む問題点を明確に把握することが重要です。

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(写真=Trum Ronnarong/Shutterstock.com)

長時間労働の是正策や現状は?

厚生労働省は「長時間労働」の削減に取り組むため、企業へ働き方の見直しを推し進め、疑いのある事業場へ指導・監督の徹底などを実施しています。大臣を本部長とした「長時間労働削減推進本部」を設置し、省を挙げて取り組む方針です。各都道府県労働局には労働局長を本部長とした「働き方改革推進本部」を設け、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進など、労使団体へ協力の要請や情報発信も行っています。

しかし相次ぐ過労死による悲劇や企業側の対応を見ていると、現実には長時間労働の実態はおさまっていない一面もあります。労働基準法において決められている勤務時間は1日8時間かつ、1週間で40時間です。しかし、実際は「残業」などで超過勤務をしている労働者がまだ多くいることがうかがえます。

かつて、「働き蜂」とからかわれた日本人ですが、バブル景気に踊った1980年代の年間総労働時間は2,100時間を超えていました。1987年に労働基準法が改正されて、法定労働時間は週48時間から40時間へ段階的に引き下げられ、週休2日制も広がりました。

しかし、総務省統計局の「労働力調査」によると、現在、働き盛りの30~40代前半の男性の4人に1人が週60時間以上働いているのです。これは、週20時間以上の「残業」という実情を明らかにしています。

90年代後半から、契約社員や派遣社員、パートタイムなどの非正規労働者の割合がアップする一方、働き盛りの正社員に業務が集中する結果、残業時間が一向に減らないという実態が浮き彫りになっています。

長時間労働が引き起こしている諸問題とは

一般的に、何時間以上が「長時間労働」に該当するという規定はありません。目安となるのが、労働基準法が定める1日8時間、1週40時間です。これを超える場合には、同法36条による協定(36=サブロク協定)を企業と労働者の間で結ぶ必要があります。

これに伴い、一般の労働者は1ヵ月45時間、2ヵ月81時間、3ヵ月120時間、1年で360時間を上限に残業が許されています。また、1年の半分を超えないなどの条件付きで、さらに長時間の労働を認める協定を結ぶことは可能です。

2017年1月、厚生労働省は1ヵ月に80時間を超える残業をさせた事業場などに行政指導を実施しました。ここから、継続的に月に45時間以上や月に80時間を超える残業があるケースなどは、長時間労働とみなされる恐れがあります。

長時間労働は、労働者の健康に最も影響があります。労働時間が長いということは、1日24時間という限られた中で、プライベートな時間は減少します。最も減りそうなものが睡眠時間となると、日常生活に余裕がなくなり、睡眠不足で心身に支障をきたしかねません。さらに、常態化すれば、業務の効率が悪くなるという悪循環を引き起こし、最悪、過労死という悲劇を招いてしまいます。

加えて、長時間労働は残業代という人件費の増加につながります。法定労働時間の1日8時間を超える残業代には通常の報酬に25%が上乗せされます。22時を超える労働には深夜残業代として、さらに25%を上乗せ、休日出勤すると、35%の上乗せが企業に義務付けられているのです。

職場での長時間労働対策と今後の課題

「働き方改革」が声高に叫ばれている一方で、長く働けば評価されるような日本企業に顕著な社会風潮は、いまだに色濃く残っています。しかし「長時間労働」は労働者だけでなく、生産性を向上させるためには企業にとっても好ましい時代は過ぎ去りました。

残業が増える傾向にある場合は、必要性を明確にすることが不可欠です。継続的、慢性的に続くようなら、業務自体に問題が潜み、労働力不足が明らかなら従業員の数を見直す必要があります。部署ごとに残業時間が異なるケースでは、労働力のバランスが崩れていることも考えられるので人員配置の見直しが欠かせません。

長時間労働が一過性のものであれば、外部発注のほか、契約社員やパートタイムなどを効率よく活用することも検討の余地があります。何よりも法定を超える長時間の残業は、労働基準法に抵触する恐れがあるので、くれぐれも注意が必要です。(提供:あしたの人事online


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