投資史上に名を残す「最も偉大な投資家」5人を紹介しよう。バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway Inc.)を世界最大規模の持ち株企業に育てあげたバフェット氏、大胆不敵にもイングランド中央銀行に挑戦し勝利をおさめたソロス氏、新しい投資の潮流を感じさせるティール氏など、各投資家の投資スタイルにそれぞれの生い立ちや性質が反映されている点がおもしろい。

5人の共通点は自らの判断に確信をもっている点だろうか。過去の失敗に恐れを見いだすのではなくそこからなにかを学びとり、次の投資に役立てるというポジティブな思考も特徴だ。

ウォーレン・バフェット (米国)――11歳で株券を買った「オハマの賢人」

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(画像=Getty Images)

「オマハの賢人」と呼ばれるウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏は、87歳になった現在も「史上最高の投資家」の一人として世界中で高く評価されている。

バフェット氏は証券会社を営んでいた父親の影響か子どもの頃からお金を増やす才覚に長け、わずか11歳で初めて株券を購入。コロンビア大学のビジネススクールで投資額を学んだ後、「偉大なる投資家」として投資の歴史に名を残すベンジャミン・グレアム氏 が運営していた資産運用会社グレアム・ニューマンに入社。

グレアム氏の引退を機に会社が解散したため故郷オマハに戻った際、売りにだされていた繊維業のバークシャーの株を買い進め 、筆頭株主となった。その後のバークシャー・ハサウェイの繁栄ぶりは今さら語るまでもないだろう。現在のバフェット氏の純資産は851億ドル(フォーブス誌2017年12月20日データ )。「世界長者番付」の上位常連だ。

バフェット氏が多数の投資家から尊敬を受けている理由は、投資家としての功績だけではなく、その人間味あふれる地に足のついた人柄にも起因する。マクドナルドとコカ・コーラが大好物など質素な生活を好み、40年前に購入した家に今でも暮らしている。

その人柄は投資スタイルにも反映されており、単に目先の株に投資するのではなく、バリュー株への長期投資を実践するかたわら自社を通して様々な企業を買収し、経営を立て直すという戦略を得意としている。

前金融危機時、総額250億ドル以上を投じて経営難に陥ったバンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックス、ゼネラル・エレクトリックなど大手企業を次々と救済。「最後の貸し手」の 救済策は、後に莫大な利益を生みだすこととなった。

ジョージ・ソロス (米国)――市場の歪に利益を見いだす「イングランド銀行をつぶした男」

バフェット氏と並ぶ偉大な投資家として知られるジョージ・ソロス(George Soros)氏。ソロス・ファンド・マネージメント(Soros Fund Management) 会長、助成団体オープン・ソサエティ財団(Open Society Foundations)設立者として、87歳の現在も投資活動や社会活動に活発だ。

ハンガリーおよびユダヤ系米国人という生い立ちで、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに入学するも希望していた金融産業に就職口が見つからず、卒業後は宝飾品のセールスをするなど平凡な人生を送っていたという。

しかし米国に渡ったのをきっかけに転機が訪れる。後に世界最大規模のヘッジファンドとなったクォンタムファンド(Quantum fund)をジム・ロジャーズ氏とともに立ち上げ、1992年、投資史上の伝説となったポンドの空売りで10億ドル以上の利益を上げた。

これは欧州通貨に連動していたポンドが過大評価されていると判断したソロス氏が、クォンタムファンドを通して大量のポンドを空売りしたことが発端だ。イングランド銀行はポンド買いで対抗するがポンド売りの勢いは止められず、最終的に英国はERM(欧州為替相場メカニズム/ユーロ導入までの移行期間、加盟国間で通貨変動を2.25%以内に抑えるという原則)脱退に追い込まれた。

ソロス氏曰く、自身の投資は「再帰性理論」を基盤にしているという。「市場は常に間違っている」というソロス氏の名言があるが、大雑把に解釈すると「人間が引き起こす社会的事象は個人によって解釈が異なるため、誤解や思い込みが生じやすい」ということになる。

ポンド空売りから分かるように、ソロス氏は世界市場で生じた歪を見つけだし、そこから収益の可能性を引きだす短期的な投資法を得意としている。現在の純資産は80億ドル。

ジム・ロジャーズ (米国)――「人の何倍も努力した」頭脳明細な投資家

ソロス氏とともにヘッジファンドの歴史を築いたジム・ロジャーズ(Jim Rogers)氏。エール大学とオックスフォード大学卒のスーパーエリート投資家だが、実際にウォール街で就職するまで投資の知識はほとんどなかったという。

クォンタムファンド設立のほか、1989年にはロジャーズ・インターナショナル・コモディティ指数(RICI) も立ち上げた。現在はニューヨークからシンガポールへと拠点を移し、ロジャーズ・ホールディングス・アンド・ビーランド・インタレスツ (Rogers Holdings and Beeland Interests)の会長を務めている。現在の純資産は30億ドル(リッチエスト2017年12月データ )。

見習いアナリストとしてウォール街で勤務していたロジャーズ氏は、「グローバルマクロ」の先駆け者でもある。グローバルマクロとは、各国・地域の金融政策や社会情勢、マクロ経済などを細かく調査・分析し、機動的にグローバルな投資を行うヘッジファンドの運用手法のひとつだ。「値上がりするチャンスがある株を安く買って高く売る」という独自の投資法を成功させる要となっている。

頭脳ではピカ一のはずだが非常に謙虚な性質のようで、成功の秘訣を質問された際、「多くの人より賢いというタイプではなかったので、人の何倍も一生懸命働いた」と答えている(フィナンシャルタイムズ紙 より)。米国南部のアラバマ州で育ったロジャーズ氏は、近所の野球場からソーダの空き瓶を回収するというビジネスを、なんと5歳で立ち上げたというから、人並み以上の努力は幼少の頃からすでに始まっていたようだ。

カール・アイカーン(米国)――ツイッターでアップルの株価を5%押し上げた「ものいう投資家」

カール・アイカーン(Carl Icahn)氏は、「乗っ取り屋」「ものいう株主」の異名をとるほど貪欲な投資スタイルで知られている。自ら立ち上げたヘッジファンド、アイカーン・エンタープライジズ(Icahn Enterprise s)が保有する巨額の運用資金をフル回転させ、企業の経営権を次々と取得していく。

2017年だけでも米国のプレシジョン・オートケア(Precision Auto Care)やフェラデル・モグル・コーポレーション(Federal Mogul Corporation)を買収している。また株主として積極的に経営面に乗りだすことでも有名だ。

アイカーン・エンタープライジズは子会社を通し、投資、自動車、鉱業、ゲーム、不動産、メタルなど産業分野にとらわれることなく、世界中で事業を運営する精力的な企業である。

つい最近まで「分からないものには手をださない」とIT株には奥手だったバフェット氏とは対照的に、アイカーン氏はネットフリックス(Netflix) やヤフーの株 も早い時期から取得してきた。

2013年にはアップルの株を大量保有していると明かし、「過小評価されているため、ティム・クックCEOにより大規模な自社株買いをすすめた」とツイート。これによりアップル株のオプション取引が急増し、価格を約5%も押し上げた。

カーン氏は投資家としてはもちろん、トランプ政権誕生後は大統領の特別顧問任命・退任でも話題となった。昨年11月、トランプ大統領の勝利によって株価が跳ね上がると確信し、当選パーティーを抜け出してまで10億ドルを投資投資家根性に脱帽だ(ブルームバーグより )。現在の純資産は163億ドル。

ピーター・リンチ(米国)――ゴルフのキャディーから副社長へ、運用資産を700倍に増やした「カメレオン」

国際大手投資企業フィディリティ(Fidelity)の社長のゴルフキャディーから副会長にまで上りつめたピーター・リンチ(Peter Lynch)氏。アナリストとして在籍した13年間(1977~1990年)、運用を担当していたマゼラン・ファンドのリターンは年間平均29%を記録。同ファンドの運用資産を2000万ドルから140億ドルへと押し上げた。

リンチ氏はボストン大学で心理学、哲学、歴史を専攻した後、ペンシルバニア大学ウォートン校でMBAを取得した。そのせいか投資スタイルは「カメレオン」と称されるほど、その時の状況やリンチ氏の自己判断によってころころと変わる。

しかし長期投資に重点を置いているという点ではバフェット氏などの投資スタイルと共通しており、「自分がなにに投資しているか、なぜその投資をするのか把握する」「無謀な賭けにはでない」「柔軟性と謙虚さをもち、失敗から学べ」といった投資の心得を様々なカンファレンスや講義の場を通して広めている(インベストペディアより )。

ピーター・ティール(米国)――PayPalで決済・送金の歴史を変えた現代の投資家

若手大物投資家の代表的存在、ピーター・ティール(Peter Thiel)氏は、ペイパル(PayPal)の設立で決済・送金の歴史を塗り替えるという偉大な功績を上げた。世界中の投資家が注目するシリコンバレーで、絶対的な影響力をもつ人物だ。次々と先進的な事業への投資を展開していく様は、まさに現代を生きる投資家の風格を感じさせる。

スタンフォード大学で哲学法務博士の学位を取得後、法務事務官や証券弁護士を務めた堅物だ。1996年にティール・キャピタル・マネジメント(Theil Capital Management)を設立した2年後、テスラ(Tesla)のイーロン・マスクCEOなどと共同でペイパルの前身コンフィニティ(Confinity) を立ち上げた。

2002年にペイパルをeBayに売却したのを機に、ヘッジファンドのクラリウム・キャピタル(Clarium Capital )、ビッグデータ解析サービスのパランティア(Palantir) 、ファウンダーズ・ファンド(Founders Fund )、バラ―・ベンチャーズ(Valar Ventures )、ミスリル・キャピタル(Mithril Capital )など、数々の新ベンチャーを息をつく間もなく設立。フェイスブック(Facebook)の取締役やYコンビネータ(Y Combinator)のパートナーも務めているというから、そのバイタリティーに恐れ入るばかりだ。

こうした猛烈な投資スタイルは、「新たなテクノロジーが世界を作りだす」という起業家としてのティール氏の信念に根差すものだろう。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)