東京株式市場では、日経平均株価が6/12(火)に一時2万3千円台を回復したあと下落に転じ、6/28(木)には2万2千円割れも意識される水準まで値を下げてしまいました。米国が中国をはじめ他の国々に保護主義的な圧力をかけ、世界経済に悪影響が及ぶ可能性が懸念されていることが大きいと考えられます。

しかし、東証一部の新安値銘柄数が本年最高(6/26)となり、騰落レシオが一時75%(同日)まで下がるなど、株価が反発に転じても不思議ではない指標も出てきています。日経平均株価は100日移動平均線や200日移動平均線等を下値支持ラインとして、反発の兆しもみせています。

そこで、今回の「日本株投資戦略」では、6/12(火)を境とする株価下落局面で株価が相対的に大きく下げたものの、業績や収益力を考えれば、投資チャンスになっている可能性のある銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。

「貿易摩擦で株価波乱」の中、投資チャンスの優良銘柄はコレ!?

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(画像=PIXTA)

それでは、さっそくスクリーニングにより、銘柄抽出を試みてみたいと思います。

(1)東証1部上場銘柄であること(広義の金融は除く)
(2)時価総額が1千億円超の銘柄であること
(3)業績予想を公表しているアナリストが2名以上いる銘柄であること
(4)過去4週間で市場予想EPSが3%超上昇している銘柄であること
(5)今期市場予想ROE(自己資本純利益率)が10%超の銘柄であること
(6)今期市場予想配当利回りが東証1部の平均(1.7%)を超える銘柄であること
(7)6/12(火)~6/28(木)の株価下落率が同期間のTOPIXの下落率(3.7%)を超えている銘柄であること

上記の全条件を満たす銘柄を株価下落率の大きい順に並べたものが表1となります。

過去4週間は約1ヵ月に相当します。この間、すでに米国が輸入鉄鋼・アルミの関税を強化することや、中国からの輸入品500億ドル分に課税を強化すること等の動きは株式市場で消化された形になっています。

その間、アナリストは企業調査の結果、これらの企業の予想EPSを平均的に引き上げていることになります。加えて、配当利回りやROEの面でみれば、これらの企業は一定以上の水準にあると評価されます。すなわち、投資する上で評価できる点が相対的に多いと考えられるにもかかわらず、株価下落率は市場平均以上となっている訳です。

「貿易摩擦で株価波乱」の中、投資チャンスの優良銘柄はコレ
(画像=SBI証券)

表1:「貿易摩擦で株価波乱」の中、投資チャンスの優良銘柄はコレ!?

コード / 銘柄名 / 株価(6/28)(円) / 株価騰落率(6/12~) / 過去4週間予想EPS変化率 / 今期市場予想ROE / 予想配当利回り
<7729> / 東京精密 / 3,710 / -10.7% / 3.43% / 13.7% / 3.08%
<4188> / 三菱ケミカルホールディングス / 909.3 / -9.3% / 3.54% / 15.2% / 3.92%
<5949> / ユニプレス / 2,170 / -8.2% / 3.95% / 10.4% / 2.65%
<8031> / 三井物産 / 1,841.0 / -6.9% / 4.28% / 10.3% / 4.07%
<6857> / アドバンテスト / 2,282 / -6.8% / 3.44% / 21.9% / 2.03%
<6103> / オークマ / 5,780 / -6.8% / 5.44% / 11.6% / 2.08%
<6807> / 日本航空電子工業 / 1,734 / -6.3% / 6.72% / 10.8% / 1.84%
<3738> / ティーガイア / 2,862.0 / -6.0% / 4.76% / 31.6% / 2.55%
<1808> / 長谷工コーポレーション / 1,518 / -5.4% / 3.37% / 22.9% / 3.43%
<8002> / 丸紅 / 833.9 / -5.1% / 3.27% / 13.2% / 4.06%

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。予想EPSや予想ROE、予想配当利回りはBloombergが集計した市場コンセンサスをベースに計算されています。

スクリーニング銘柄の投資ポイント

ここでは、表1でご紹介した銘柄の一部について、チャート上のポイントを中心にご紹介します。

東京精密 <7729> は半導体製造装置に展開し、ウェハテスト用で世界首位を誇っています。需要はいまだ旺盛で、現状での市場の利益予想は会社予想を上回っています。

チャート的には104週(約2年)移動も下回り、底割れ的状態ですが、2016/2安値1,970円から2017/11高値5,130円までの上昇に対する半値押し水準である3,550円に接近しつつあります。

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(画像=SBI証券 図1:東京精密(7729)・週足)

同じ半導体製造装置メーカーであるアドバンテスト <6857> も、市場の利益予想は会社計画を上回っています。株価は4月頃まで推移していた水準まで戻っており、値ごろ感が出ているようです。

三菱ケミカルホールディングス <4188> はMMA(メタクリル酸メチル)が、需給堅調により市況も高止まりが続いているようです。やはり、市場の予想利益は会社予想を上回っているようです。株価は104週移動近辺で下げ渋りの傾向が出ています。ROEの水準が高いものの、予想PERは7倍程度で低く、値ごろ感が強まっているようです。

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(画像=SBI証券 図2:三菱ケミカルホールディングス(4188)・週足)

ユニプレス <5949> は日産向けが8割を占めるプレス大手です。業績は好調で市場の予想利益が会社予想を上回っています。 足元は3/26の安値2,245円を割り込むなど、下落傾向が続いている印象です。米トランプ大統領が自動車分野の関税を検討していると伝えられるだけに、買いにくい面があることも確かです。ただ、PBR0.7倍台はさすがに、低すぎるという印象です。

原油価格が一時に比べ値を戻しており、商社セクター全般にとってやや追い風になる可能性が出ています。その意味で、総合商社の株価をチェックしておくことは有用かもしれません。

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(画像=SBI証券 図3:ユニプレス(5949)・週足)

三井物産 <8031> はやや変則的な「Wトップ」を形成した後に調整入りとなり、足元は大きく下げてしまいました。しかし、52週(約1年)移動平均線で下げ渋る兆しをみせており、底打ちの可能性が出てきています。同様に丸紅(8002)も26週移動平均線の水準で下げ止まる兆しを見せています。総合商社は押し目買い好機が接近している可能性がありそうです。予想配当利回りの高さも魅力のひとつです。

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(画像=SBI証券 図4:三井物産(8031)・週足)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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