東京株式市場は米中貿易摩擦に一喜一憂の展開が続いています。引き続き、世界的な貿易戦争の激化に対する備えは重要と考えられますが、市場の関心は当面、「企業業績」にシフトしてくる可能性が大きそうです。そうした中、7月下旬からは3月決算企業の第1四半期の決算発表が始まります。企業業績の良し悪しが株価の明暗を分ける季節がやってきました。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、「第1四半期」で大幅増益が期待できる銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。さらに、日銀短観(2018年6月調査)を再吟味し、2018年4~6月期の好調業種、不調業種をチェックしてみました。
「第1四半期」で大幅増益が期待できる銘柄はコレ!?
それでは、さっそくスクリーニングにより、銘柄抽出を試みてみたいと思います。
(1)東証1部上場銘柄であること
(2)時価総額が1千億円超の銘柄であること
(3)業績予想を公表しているアナリストが2名以上いる銘柄であること
(4)3月決算銘柄であること
(5)広義の金融以外の業種であること
(6)前年度第1四半期、前期(通期)ともに営業利益が黒字であること
(7)今期市場予想営業利益が10%超の増益予想で、会社予想営業利益を上回っていること
(8)来期市場予想営業利益が10%超の増益予想であること
(9)今年度第1四半期の市場予想営業利益が10%超の増益予想であること
表1は、上記の全条件を満たす銘柄を(9)であげた今年度第1四半期の市場予想営業増益率の高い順に並べたものです。狙いはあくまでも「第1四半期」でアナリストの予想増営業益率が高い銘柄を抽出することですが、アナリストが今期、来期ともに通期ベースで高い増益率を見込んでいないようでは株式市場で高い評価を得ることは難しく、(7)や(8)の条件も必要であると、「日本株投資戦略」では考えています。
ご存知の通り、2018年4~6月期はトランプ米大統領が相次ぎ保護主義的な政策を打ち出したこと、FRBの政策金利引き上げが進む中で、新興国通貨が下がるなど投資環境は大きく変化しています。前年同期との比較では円高・ドル安が進展し、原油価格は大幅に上昇しています。個人投資家がこうした中、独力で今年度第1四半期に好業績が見込まれる銘柄を抽出するのは相当に困難であるとみられ、アナリスト予想を尊重することは有効であると考えられます。
表1:「第1四半期」でアナリストの予想営業増益率が高い銘柄
コード / 銘柄名 / 第1四半期市場予想増益率 / 今期会社予想増益率 / 今期市場予想増益率 / 来期市場予想増益率
<6967> / 新光電気工業 / 294.5% / 44.9% / 51.0% / 18.1%
<4921> / ファンケル / 91.9% / 12.5% / 29.8% / 18.8%
<3254> / プレサンスコーポレーション / 76.0% / 20.5% / 21.8% / 12.9%
<7732> / トプコン / 47.6% / 24.2% / 31.1% / 20.3%
<6976> / 太陽誘電 / 32.5% / 3.9% / 28.8% / 29.8%
<7701> / 島津製作所 / 31.2% / 5.1% / 10.7% / 10.7%
<9375> / 近鉄エクスプレス / 30.0% / 9.4% / 14.9% / 11.0%
<7296> / エフ・シー・シー / 26.5% / 3.2% / 19.6% / 13.1%
<7230> / 日信工業 / 26.2% / 14.0% / 30.2% / 10.5%
<6055> / ジャパンマテリアル / 22.7% / 8.8% / 25.9% / 25.7%
<7205> / 日野自動車 / 20.2% / 3.3% / 15.4% / 13.9%
<6981> / 村田製作所 / 19.1% / 48.0% / 62.2% / 20.7%
<6305> / 日立建機 / 18.2% / -12.3% / 11.7% / 10.3%
<6287> / サトーホールディングス / 17.5% / 16.8% / 17.6% / 20.2%
<6197> / ソラスト / 12.9% / 13.2% / 22.4% / 17.0%
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。増益率はすべて営業増益率。市場予想はBloombergが集計した市場コンセンサス。今期は2019年3月期、来期は2020年3月期を指しています。
「日銀短観」が示唆する好調業種・不調業種
2018年4~6月期の決算発表で、予想外に好業績となりそうな業種はどこでしょうか。そのヒントは「日銀短観」に求められると思います。
表2は「日銀短観」(2018年6月調査)における「大企業」の業況判断指数です。「2018年3月調査」における「先行き」(B)よりも「2018年6月調査」における「最近」(C)が良かった業種、すなわち、「差(1)」が大きい業種ほど、予想外に業況が良かった業種と考えられます。
表1には「電気機器」に属する企業が多いようです。しかし、表2をみると、この業種は3ヵ月前に想定したよりも厳しくなった企業が多いと見受けられます。したがって、好調な企業と不調な企業が相当に混在している可能性がありそうです。
表2:日銀短観(2018年6月調査)で予想外に強かった業種は?(大企業の業況判断指数)
2018年3月調査最近A / 2018年3月調査先行きB / 2018年6月調査最近C / 2018年6月調査差(1)C-B / 2018年6月調査先行きD / 2018年6月調査差(2)D-C
電気・ガス / 3 / -5 / 13 / 18 / 3 / -10
石油・石炭製品 / 44 / 19 / 31 / 12 / 7 / -24
不動産 / 37 / 27 / 37 / 10 / 30 / -7
対個人サービス / 27 / 27 / 37 / 10 / 35 / -2
窯業・土石製品 / 28 / 19 / 28 / 9 / 24 / -4
非鉄金属 / 32 / 18 / 26 / 8 / 24 / -2
対事業所サービス / 44 / 35 / 43 / 8 / 43 / 0
建設 / 43 / 37 / 44 / 7 / 34 / -10
物品賃貸 / 18 / 18 / 24 / 6 / 24 / 0
繊維 / 3 / 6 / 11 / 5 / 5 / -6
化学 / 26 / 17 / 22 / 5 / 16 / -6
卸売 / 19 / 16 / 21 / 5 / 18 / -3
運輸・郵便 / 16 / 14 / 19 / 5 / 16 / -3
紙・パルプ / 4 / 4 / 8 / 4 / 4 / -4
宿泊・飲食サービス / 3 / 7 / 11 / 4 / 6 / -5
生産用機械 / 52 / 51 / 53 / 2 / 52 / -1
自動車 / 22 / 13 / 15 / 2 / 13 / -2
木材・木製品 / 24 / 12 / 13 / 1 / 19 / 6
鉄鋼 / 10 / 8 / 9 / 1 / 9 / 0
はん用機械 / 44 / 43 / 44 / 1 / 39 / -5
金属製品 / 10 / 13 / 13 / 0 / 13 / 0
造船・重機等 / -4 / -7 / -7 / 0 / 4 / 11
食料品 / 16 / 14 / 13 / -1 / 15 / 2
情報サービス / 29 / 28 / 26 / -2 / 26 / 0
電気機器 / 24 / 23 / 20 / -3 / 29 / 9
業務用機械 / 26 / 29 / 21 / -8 / 26 / 5
小売 / 11 / 10 / 0 / -10 / 6 / 6
通信 / 33 / 33 / 20 / -13 / 27 / 7
※日銀短観(2018年6月調査)をもとにSBI証券が作成。差(1)が大きい順に業種を並べ替えています。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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