株式会社レコフデータの調査によると、日本企業が当事者となった2017年におけるM&A件数は3,000件を超えた。2018年上半期の実績も前年を上回るペースとなっている。近年、M&Aの活用は小規模企業にも裾野を広げているが、実務上、どのような手順でM&Aが進められるのかについては、あまり馴染みがないという方もいるだろう。そこで以下では企業を買収する際の手順を紹介したい。

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(画像=OPOLJA/Shutterstock.com)

「会社を買う」とはどういうことか?

そもそも「会社を買う」というのはどのような行為だろうか。たとえば、株式会社の場合、議決権を行使する権利や配当を請求する権利など、会社を支配する権利はすべて株式に集約されている。つまり、「会社を買う」というのは株式を買うことにほかならない。

そのため、小規模な会社を買う際には、売り手であるオーナー経営者との間で「株式売買契約書」あるいは「株式譲渡契約書」を締結することになる。買収後の事業展開などポストM&Aが大切であることは言うまでもないが、M&A手続としては株式譲渡にかかる最終契約書の締結が1つのゴールといえる。

M&Aの手順とは?

売り手案件を保有するM&A仲介会社のスタイルや対象会社の事業規模、ビジネスの複雑性によってもM&Aの手順には違いが生じるが、基本的な流れは以下のようになる。

・情報の収集
買い手として最初にM&A情報に触れる機会としては、M&A仲介会社、M&Aアドバイザー、金融機関、士業などを通じて案件の打診を受けるというケースが一般的だ。その際、「ノンネームシート」と呼ばれる売り手企業の実名を伏せた概要資料を閲覧することも多い。

・秘密保持契約の締結と詳細情報の取得
案件の内容に興味を持ち、追加的な情報を得たい場合は秘密保持契約(NDA)を締結して詳細資料の開示を受ける。会社の沿革、財務情報、環境分析などが含まれた詳細資料はIM(インフォメーション・メモランダム)と呼ばれることもある。

・トップ面談と基本合意
M&Aを次のステップに進める際にはトップ面談が実施される。追加的な質問、経営方針や組織風土の確認をするなど経営者同士による重要なコミュニケーションの場となる。意思疎通ができたところで、買収スキーム、価格、スケジュールなどを含む基本的な合意がなされ、LOI(覚書あるいは基本合意書)などの形で文書化される。

・詳細調査
基本合意にもとづき、具体的な条件などを詰めていく前提として、買い手による詳細調査が行われる。詳細調査はデューデリジェンスと呼ばれ、資産の実在性や評価、簿外負債の有無などの財務調査が中心となる。それに加えて、ビジネス(事業性)、法務、IT、労務などに主眼を置いたデューデリジェンスを行うこともある。

・条件交渉と最終契約書
詳細調査の結果を踏まえて、譲渡価額の算定基礎となる企業価値を評価したり、必要な契約条項を検討したりすることで契約条件の交渉を行う。契約条件で合意に達すると、最終契約書としてまとめられる。

小規模企業では簡便的な方法も

以上のようなM&Aの流れを把握しておくことで買収が完了するまでのスケジュール感もつかみやすくなる。ただ、実務上は進捗管理なども含めM&Aアドバイザーなどに調整してもらうのが通常だ。

特に小規模な会社の買収では、買い手と売り手にそれぞれ専属のM&Aアドバイザーをつけるのではなく、単独のM&Aアドバイザーが双方の調整を行うことも多い。また、買い手が独自に監査法人や公認会計士に詳細なデューデリジェンスを依頼するのではなく、M&Aアドバイザー主導で財務内容の調査や譲渡価額の提案を行うこともある。

買収を成功させるためには、信頼できるM&Aアドバイザーを見つけることも重要といえる。M&Aアドバイザーが十分な経験や実績を持っているか、幅広いネットワークを有しているかという視点で最適なパートナーを選定すると良いだろう。