東京株式市場は上値の重い展開が続いています。四半期決算の発表が佳境となり、企業業績の明暗が分かれていることに加え、米国と中国の貿易摩擦問題がくすぶり続け、世界経済の先行きを心配する声も多くなっています。

そうした中、東京株式市場は「8月相場」に突入しています。市場参加者の多くが夏休みを取得する月であるため、売買が細り、さらに動きにくくなる可能性もありそうです。反面、8月は生活に密着し、投資家にとっても馴染み深い外食企業や小売企業の多くで配当・株主優待の権利が確定する月でもあります。

そこで今回の「日本株投資戦略」では、8月に株主優待の権利が確定する銘柄について考えることにしました。投資家の関心が強い銘柄をご説明する一方、業績面についても考慮し、「日本株投資戦略」特選の「8月優待銘柄」についてもご紹介することにしました。

投資家の関心が強い8月優待銘柄は?

日本株投資戦略,20万円,3月優待銘柄
(画像=PIXTA)

表1は当社WEBサイト上の「国内株式」内に設置されている「株主優待検索」ページから、8月に株主優待の権利が確定する銘柄を「閲覧回数順」にソートし、その回数の多い銘柄について上位20銘柄を並べたものです。それらの銘柄について株価(8/2終値)と過去1ヵ月、過去3ヵ月の騰落率、最低投資単位での株主優待内容を記載しております。

最近、株主優待は多くの投資家の関心を集めているようです。しかし、「魅力ある株主優待」を考える時、投資家によって「投資余力」も「投資スタンス」も「生活スタイル」も「好み」もそれぞれ異なると思いますので、魅力を感じられる株主優待内容も「人それぞれ」であるのが現実だと思います。

経済効率的には無論、なるべく少ない投資金額で権利を確保でき、優待と配当を合わせた総合利回りが高ければ、満足度は高くなると考えられます。しかし、「魅力ある株主優待」はそれだけでは決まらないとみられます。知名度や業績面で安心感のある銘柄であることや、優待内容がその投資家にとって有用性の高いものであることも重要な要素だと考えられます。

8月に株主優待の権利が確定する銘柄には、外食企業や小売企業が多いのが特徴です。このため、株主優待の内容としても、それらの企業の店舗等で使える食事券や買物券等が多いのが特徴です。食事券や買物券は株主になった企業の商品やサービスの提供を受けることで、それらの企業をより深く知るチャンスになると思われます。

なお、表1をご参考いただき、8月に権利が確定する株主優待について検討する時は、主に以下の3点にご注意ください。

(注1)表1の株主優待の内容は、最低投資金額で得られる権利の概要を示したもので、詳細や最低投資金額を超えた投資金額での優待内容等については、各社公式サイト等でご確認ください。例えば吉野家ホールディングス <9861> の場合、最低投資単位である100株以上保有の場合は飲食券(300円)10枚が付与されますが、1000株以上保有の場合は同20枚、2,000株以上では同40枚が付与されます。また、飲食券10枚を同社の定めた期限までに返送した場合、同社グループ会社製品詰合せセットと交換が可能になっています。

(注2)表1に掲載した銘柄の権利付最終日はほぼすべての銘柄が8/28(火)ですが、ライトオン <7445> と西松屋チェーン <7545> については8/15(水)です。権利落ち日以降に買い付けても株主優待の権利は享受できませんのでご注意ください。また、権利付最終日に向けて買い需要が増えやすい反面、権利落ち日以降はそれが剥げ、株価が下がりやすくなる面がありますので併せてご注意ください。

(注3)長期保有の株主を大切にしたいと思う企業では、その銘柄の保有期間が一定期間以上の投資家に対し、株主優待の内容を厚くする企業も多くなっています。例えばコシダカホールディングス <2157> では、100株以上保有の株主に対し、株主優待券2,000円相当が付与されますが、3年以上継続保有の場合に金額で2倍(4,000円分)の株主優待券が付与されます。

日本株投資戦略,20万円,8月優待銘柄
(画像=SBI証券)

表1:8月に権利が確定する株主優待実施銘柄で「閲覧回数」の多い銘柄

コード / 銘柄名 / 株価(8/2) / 過去1ヵ月の騰落率 / 過去3ヵ月の騰落率 / 最低投資単位を保有している場合の株主優待(8月権利確定分)内容の概要
<3607> / クラウディアホールディングス / 593 / 4.0% / 6.8% / 株主優待券1枚およびおこめ券1㎏分
<7445 / ライトオン※ / 1,064 / -0.9% / 0.8% / 優待券3,000円相当
<9861> / 吉野家ホールディングス / 1,911 / -10.8% / -5.2% / 飲食券(300円)10枚
<3387> / クリエイト・レストランツ・ホールディングス / 1,347 / -14.2% / -2.1% / 優待食事券3,000円相当
<3048> / ビックカメラ / 1,654 / -0.1% / -10.5% / 買物優待券(1,000円)1枚
<2292> / S FOODS / 4,305 / 1.8% / -6.0% / 自社グループオリジナル商品カタログ販売
<7513 / コジマ / 523 / -3.1% / 9.0% / 買物優待券(1,000円)1枚
<4668> / 明光ネットワークジャパン / 1,128 / -11.0% / -9.4% / クオカード1,000円相当
<2157> / コシダカホールディングス / 1,287 / -18.2% / -25.4% / 株主優待券2,000円相当
<7630> / 壱番屋 / 4,705 / -0.7% / 3.7% / 優待券1,000円相当
<7581> / サイゼリヤ / 2,340 / -3.5% / -8.3% / 2,000円相当のイタリア食材
<8200> / リンガーハット / 2,402 / -4.8% / -9.3% / 食事優待券(540円)2枚
<9979> / 大庄 / 1,753 / -0.1% / 0.7% / 優待飲食券または産直品2,500円相当
<8127> / ヤマトインターナショナル / 599 / -1.0% / -4.2% / (株主優待は300株以上保有の株主に付与)
<9414> / 日本BS放送 / 1,362 / 2.9% / -3.9% / 1,000円相当の「ビックカメラ」商品券
<2379 / ディップ / 2,873 / 3.9% / 6.1% / オリジナル・クオカード500円相当
<3543> / コメダホールディングス / 2,186 / 1.5% / 0.7% / 1,000円相当の自社電子マネー
<2686 / ジーフット / 793 / 0.9% / 0.4% / 優待券(1,000円)1枚
<7545> / 西松屋チェーン※ / 1,208 / -2.2% / -10.1% / 買物カード1,000円相当
<3222> / ユナイテッドスーパーマーケットホールディングス / 1,302 / -6.1% / -9.4% / 買物優待券(100円割引)30枚または(2)食品

※Bloomberg、当社WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。過去1ヵ月の騰落率は8/2(木)終値と7/2(月)終値、過去3ヵ月の騰落率は8/2(木)終値と5/2(水)終値との比較により計算されています。 ※の銘柄については、権利付最終日は8/15(水)になります。

「日本株投資戦略」特選の「8月優待銘柄」はコレ!?

前項でもご説明したように、近年、株主優待は多くの投資家の関心を集めているようです。

しかし、その結果、株主優待を実施する企業の一部で株価が大きく上昇し、資産や利益の規模と照らし合わせて考えた場合に割高な水準まで到達してしまっている企業も見受けられます。「株主優待」という制度は、投資の初心者の方が株式投資の魅力に触れるひとつの「入り口」になると思われますが、株価下落というリスクと無縁ではないことを改めて注意する必要があると考えられます。

業績予想の下方修正等による株価下落リスクが大きそうな銘柄が多そうな点も要注意です。そこで「日本株投資戦略」では、8月に株主優待の権利が確定する銘柄の中から、好業績が見込め、業績予想下方修正等による株価下落リスクがその分小さいとみられる「日本株投資戦略」特選の「8月優待銘柄」としてご紹介することにしました。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)8月に配当・株主優待の権利が確定する銘柄であること(2月または8月決算銘柄)(全部で105銘柄)
(2)当社WEBサイトの株主優待検索ページで、閲覧回数が上位約半分となる55位以上であること
(3)2月決算銘柄の場合、第1四半期の営業増益率が通期(2019年2月期)の会社予想営業増益率を上回っていること
(4)8月決算銘柄の場合、第3四半期累計の営業増益率が通期(2018年8月期)の会社予想営業増益率を上回っていること
(5)株主優待に必要な株式数が最低投資単位の100株以上であること
(6)株主優待付与の条件として保有期間に制限がないこと
(7)最低投資単位(100株)での投資金額が20万円以下であること

上記のすべての条件を満たす銘柄を、「閲覧回数順」に並べたものが表2です。なお、マルマエ <6264> 、システムインテグレータ <3826> 、フロイント産業 <6312> については、(6)の条件のみ満たしていませんでしたので、表2に掲載されませんでした。長期保有を前提に投資を検討されている投資家であれば、除外する必要はないのかもしれません。

なお、表2に掲載されていない銘柄でも、「つなぎ売り」等のテクニックを用いてリスクを回避することも可能です。その他、株主優待に関係する投資情報も、ぜひご参考ください。

日本株投資戦略,20万円,8月優待銘柄
(画像=SBI証券)

表2:「日本株投資戦略」特選の「8月優待銘柄」はコレ!?

コード / 銘柄名 / 株価(8/2) / 四半期増益率 / 通期予想増益率 / 最低投資単位を保有している場合の株主優待(8月権利確定分)内容の概要
<3048> / ビックカメラ / 1,654 / 38.4% / 23.5% / 買物優待券(1,000円)1枚
<7513> / コジマ / 523 / 138.0% / 38.4% / 買物優待券(1,000円)1枚
<7545> / 西松屋チェーン※ / 1,208 / 22.0% / 20.8% / 買物カード1,000円相当
<3222> / ユナイテッドスーパーマーケットホールディングス / 1,302 / 12.5% / 4.5% / 買物優待券(100円割引)30枚または(2)食品
<3063> / ジェイグループホールディングス / 937 / 219.2% / 37.4% / 食事優待券(1,000円)2枚

※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。決算期はビックカメラとコジマが8月決算で、残りの銘柄は2月決算です。「四半期増益率」は8月決算の場合は第3四半期累計営業増益率(前年同期比)、2月決算の場合は第1四半期営業増益率(前年同期比)となっています。「通期予想増益率」は、通期の会社予想営業増益率を示しています。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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