ESG投資に対する関心が世界的に高まっている。国内でも2017年、年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) が日本株のパッシブ運用を1兆円規模で開始している。

ESGは、「環境」 (Environment) 、「社会」 (Social) 、「企業統治」 (Corporate Governance) の頭文字をとったもの。従来、投資をする際には、企業価値を判断する材料として製品やサービスの品質、利益成長率といった定量的な財務情報が中心だったが、それらに加えて、非財務情報であるESGの要素を考慮する投資を「ESG投資」と呼ぶ。ESGが注目されている背景には、地球上で活用しうるエネルギーや食料、水資源などの限界が迫りつつある中、危機解消のために経済の中心的な存在である企業や投資家の積極的な取り組みが必要だという意識が高まっているためだ。

こうした問題意識のもと、国連が2015年に公表したのが「SDGs」 (Sustainable Development Goals) であり、日本語では「持続可能な開発のための2030アジェンダ」 (以下、2030アジェンダ) と訳されることが多い。持続可能な世界を実現するための17の目標と、さらにそれを細分化した169のターゲットから構成され,「地球上の誰一人として取り残さない」ことを宣誓している。

経済・社会・環境をめぐる広範な課題に国連加盟国が一体となって取り組むための目標だ。国内でも官公庁・民間レベルでさまざまな取り組みが行われている。

SDGsの17の達成目標と日本独自の優先課題

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(写真=PIXTA)

以下では「SDGs」17の達成目標を大きく3つに分類して紹介しよう。

(1) 人々のより良い生活の実現
1.貧困、2.飢餓、3.保健、4.教育、5.ジェンダー、6.水・衛生

(2) 持続可能な社会基盤の構築
7.エネルギー、8.経済成長と雇用、9.インフラ、産業化、イノベーション、10.不平等、11.持続可能な都市、12.持続可能な生産と消費

(3) 世界の平和の実現
13.気候変動、14.海洋資源、15.陸上資源、16.平和、17.実施手段

上記を達成するために各国が連携して取り組むことを掲げている。国内では、2030アジェンダに掲げられている5つの方向性 (5つのP:People、Planet、Prosperity、Peace、Partnership) を元に細分化した8つの優先課題を掲げ、実施に取り組むこととしている。日本が世界に提供できる先端技術の活用、国内の優先課題でもある人口減少・少子高齢化や女性の社会進出を大きな柱として方向性を示している。

【8つの優先課題】

  1. あらゆる人々の活躍の推進
  2. 健康・長寿の達成
  3. 成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
  4. 持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
  5. 省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会
  6. 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
  7. 平和と安全・安心社会の実現
  8. SDGs実施推進の体制と手段
    8つの優先課題は、大きく3つのテーマで整理できるのではないだろうか。

1つめのテーマは「経済発展と社会的課題の解決の両立」である。
AI・ロボット等の先端技術を社会生活や産業に取り入れ経済発展に寄与すると同時に、発展に伴って起こりうるさまざまな問題、エネルギーや食糧の需要増加、地域間格差の増大も抑制していくという内容となっている。日本が持つ技術を駆使し新たな価値を生み出し、世界に先駆けて質の高い社会を示していくこととしている。

2つめは「地方創生・魅力的なまちづくり」である。
日本の大きな課題として人口減少・少子高齢化・地方の過疎化が挙げられるが、とくに地方都市の活性化のために医療・福祉・商業等の生活基盤を整備し、農業・建設・ICTの分野の強化を行い、安心した暮らしができる街の実現を目指すとしている。

3つめは「女性・次世代の活躍の推進」である。
すでに日本国内では「働き方改革」「女性の活躍推進」が取り組まれているが、国内のみならず国際社会においても女性の社会進出や次世代の育成を支援していくこととしている。

成果目標は自分で決める「本気度が試されるSDGs」

国内企業は上記5つの方向性と8つの優先課題を独自に取り組むことになるのだが、法的な拘束力は無く、SDGsに対するスタンスや取り組む内容は各企業に委ねられる。ただ今後は「弊社はSDGsに取り組んでいます」「弊社の取り組みはSDGsの◯◯に該当します」といったアピールだけでは日本国内ではもちろん、国際社会においても勝ち残れない可能性もある。

実際、EUではSDGsの目標を指針としてルールを独自に策定し、環境に配慮していない等の一定の基準に満たない製品を市場から排除しようという動きもある。こうしたルールが確立されれば、基準を満たしていない日本企業の製品はEU市場から締め出されることになり、すなわち国際競争力の低下を意味することにもなる。

企業レベルの取り組みは ?

民間企業においてもSDGsへの取り組みが広がっている。銀行が取り組んでいる一例を紹介すると、こどもの自立支援や医療支援に取り組む団体などへの支援をおこなうために、数種類ある定期預金ごとに毎月の預入残高の一定割合を年2回に分けて寄付する活動が実施されている。これは8つの優先課題のうちの「あらゆる人々の活躍の推進」に寄与するもので、このようなSDGsに対する認知・意識が広がって実施される活動やSDGsに関する企業の発信は広がりを見せている。

長期的な視点で見ると今後の企業経営においてはSDGsの目標を念頭に置いた舵取りが重要となってくるかもしれない。(提供:大和ネクスト銀行


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