東京株式市場は「夏枯れ」と呼ぶのに相応しい閑散商状となっています。例年、8月中旬から下旬にかけてのこの時期は、米国や日本で、上場企業の4~6月期の決算発表が終った直後ということもあり、「ネタ枯れ」になりやすいことに加え、夏休みを取る市場参加者が増えるからなのかもしれません。さらに今年の場合は米中貿易摩擦の深刻化等の影響もあり、様子見を決め込む投資家が多いように思われます。

もっとも、市場参加者が少なく動意に乏しいこの時期は、今後の投資戦略を練るのに適したタイミングであるのかもしれません。9月になると、3月決算企業の中間期末が接近するため、それを意識した「配当取り」や「権利取り」の動きも増え、さすがに動意を示す銘柄も増えてくると予想されます。

そこで今回の「日本株投資戦略」では、3月決算企業の中間期末である9月を控え、好配当利回りを期待できる銘柄を抽出すべくスクリーニングをしてみました。株価下落リスクを少しでも抑えるべく、好業績を期待でき、最低売買金額が20万円と低めの銘柄から抽出することとしました。

「20万円以下で買える好業績・好配当利回り予想銘柄はコレ!?

日本株投資戦略,20万円,3月優待銘柄
(画像=PIXTA)

それではさっそく、スクリーニングを行ってみたいと思います。下の(1)~(8)の全条件を満たす銘柄について、予想配当利回りが高い順に並べたものが表1となります。

(1)東証1部上場の3月決算銘柄(広義の金融を除く)であること
(2)時価総額1千億円超の銘柄であること
(3)今期(2019年3月期)の市場予想配当利回りが2%超であること
(4)9月末に中間配当を予想(会社)していること、または前期に中間配当を実施していること
(5)今期の予想純利益が黒字で前年同期比10%超の増益(市場予想)であること
(6)2018年4~6月期の純利益が前年同期比増益であり、その増益率が通期会社予想増益率より高いこと
(7)最低売買単位(100株)での投資金額が20万円以下であること
(8)業種(東証33業種)が重複した場合は予想配当利回りの大きい銘柄を採用すること

「予想配当利回り」は年間に受け取る見込みの全部の配当を株価で割って求められます。3月決算銘柄の場合は、中間期末(9月末)と期末(3月末)に受け取る全配当を計算に入れることになります。中間期末の配当を受け取っただけで売却したり、期末配当だけを受け取って売却した場合、利回りはその分低くなりますので注意が必要です。

今回、予想配当利回りの計算に使ったのは市場予想(Bloomberg集計の市場コンセンサス)の一株配当金です。会社予想の数値とは異なることが多くなっています。最終的な一株配当金は業績等を勘案して企業が決めることになりますが、業績悪化等を背景に、市場予想を下回ることもあります。

そもそも「予想配当利回り」の計算には「株価」が入っています。あくまでも、計算に使った株価で買い付けた場合の利回りを意味しています。株価が変動すれば、予想配当利回りも変化することになります。中間期末や期末が接近すると、配当金の獲得を目指して買いが増える銘柄も出てきます。その結果、株価が上昇し、予想配当利回りが低下するケースも出てきます。また、買い付けた銘柄を最終的に売却し、「損失」となった場合、配当収益を含めたトータルの損益がマイナスになるケースもありますので注意が必要です。

20万円以下で買え、好配当が期待できる東証1部上場企業の例
(画像=SBI証券)

表1:20万円以下で買え、好配当が期待できる東証1部上場企業の例

コード / 銘柄名 / 株価(8/23) / 予想配当利回り / 予想一株配当金 / Q1営業増益率 / 今期予想営業増益率
<2768> / 双日 / 384 / 4.22% / 16.21 / 35.2% / 18.3%
<9506> / 東北電力 / 1,390 / 3.01% / 41.88 / 13.6% / 13.3%
<9069> / センコーグループホールディングス / 876 / 3.01% / 26.33 / 53.6% / 20.9%
<4902> / コニカミノルタ / 1,094 / 2.75% / 30.13 / 108.3% / 18.7%
<4681> / リゾートトラスト / 1,720 / 2.74% / 47.20 / 20.2% / 14.4%
<5020> / JXTGホールディングス / 779 / 2.68% / 20.86 / 663.4% / 12.3%
<5486> / 日立金属 / 1,250 / 2.40% / 30.00 / 22.1% / 16.9%
<7202> / いすゞ自動車 / 1,625 / 2.38% / 38.67 / 16.0% / 12.4%
<4088> / エア・ウォーター / 1,930 / 2.05% / 39.50 / 18.2% / 14.9%

※Bloombergデータおよび会社公表データを用いてSBI証券が作成。「Q1営業増益率」は2018年4~6月期営業利益の前年同期比増減率。「今期予想営業増益率」は2019年3月期の通期会社予想営業増益率。

予想配当利回りの向上で株式投資の魅力もアップか?

今回のスクリーニングの目的は、好配当利回りを期待できる銘柄の抽出にあります。しかし、抽出した銘柄の業績予想が下方修正され、株価が下落するようでは、トータルの損益を高めにくくなってしまいます。そこで、前項の(5)や(6)の条件を入れることで、業績予想の下方修正等による株価下落リスクを下げることが可能であると考えられます。また、(7)の条件を組入れ、最低売買単位(100株)での投資金額を引き上げることで、分散投資が容易になると考えられます。

ちなみに、表1の銘柄をすべて、100株づつ購入すると合計の売買金額は約110万円(諸コストは考慮していません)。言い換えれば、110万円ほどの金額で好配当期待銘柄10銘柄に分散投資することが可能となるわけです。

図1は日経平均株価と、その予想配当利回りの推移をグラフにしたものです。現在、日経平均株価採用銘柄の予想配当利回りは平均で1.96%となっています。前項でもご説明したように、予想配当利回りは株価が上昇すると下げやすくなりますが、足元では株価が上昇傾向であるにもかかわらず、予想配当利回りも上昇しています。企業業績の向上で上場企業の配当は増えているものの、株価の上昇が追い付いていないのかもしれません。予想配当利回りの向上は株式投資の魅力が向上していることを示しているのかもしれません。

なお、予想配当利回りが高い銘柄を単純にランキングし、その上位銘柄を投資するという方法もあります。中には、予想配当利回りが7%台の銘柄も散見されます。多くの投資家の方がご存知の知名度の高い銘柄の中にも、予想配当利回りの高い銘柄は存在しています。例えば、8/24(金)現在、日産自動車 <7201> の予想配当利回りは5.5%(会社予想ベース)、日本たばこ産業 <2914> は4.98%等となっています。個別企業の分析や分散投資の実施等により、そうした銘柄への投資も可能になると考えられます。その意味で、表1の銘柄への投資は「ひとつの考え方」とご理解頂ければ、幸いです。

図1:日経平均株価(月足)とその予想配当利回り~足元ではともに上昇傾向

日経平均株価(月足)とその予想配当利回り~足元ではともに上昇傾向
(画像=SBI証券)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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