日経平均株価が高値圏でもみ合いとなっています。トランプ米大統領が仕掛けた世界的な貿易戦争が不透明要因となっていますが、米国株自体は史上最高値圏での強い動きになっており、日本株もその影響を受けていると考えられます。

こうした中、東京株式市場は「9月相場」を迎えようとしています。9月は株主優待の権利が確定する銘柄数が425銘柄を数え、3月の792銘柄に次いで多くなっています。さらに、中間期末や期末の配当を計画している銘柄も多く、投資家の関心は株主優待や配当に向かいやすくなると考えられます。

そこで今回の「日本株投資戦略」では、9月に株主優待の権利が確定する銘柄について「深堀り」してみることにしました。9月に株主優待および配当を予定しているのみならず、東証1部上場で業績や財務体質も良好な上、投資金額も少なめで済むような銘柄をスクリーニングにより、抽出してみました。「株主優待には関心があるけれども、リスクをあまり取りたくない」と考える投資家にとっても、魅力的な銘柄群になっていると、「日本株投資戦略」では考えています。

20万円未満で買え、業績・財務ともに良好な「9月優待」の東証1部上場企業

日本株投資戦略,株主優待,20万円未満
(画像=PIXTA)

それではさっそく、スクリーニングを行ってみたいと思います。以下の(1)~(7)の全条件を満たす銘柄について、当社株主優待検索ページにおける「閲覧回数」が多い順に並べたものが表1になります。

(1)9月に株主優待・配当の実施を予定している銘柄であること
(2)株主優待の権利獲得に必要な投資金額が20万円未満であること
(3)自己資本比率が50%以上であること
(4)東証1部上場銘柄であること
(5)予想配当利回りが平均(東証1部は1.71%)を上回っていること
(6)四半期累計の営業増益率が通期会社予想営業増益率を上回っていること
(7)株主優待について、投資金額および保有期間で条件が付けられていないこと

当社の株主優待検索ページは、当社WEBサイトの「国内株式」ページで銘柄検索ウィンドウの下にある「株主優待」のリンクから入ることができます。同検索ページの左隅には「優待内容」、「優待権利確定月」、「つなぎ売り」、「優待獲得に必要な金額」、「こだわり条件」等の項目があり、そこで各種条件を指定することで、株主優待銘柄を絞り込むことができます。今回のスクリーニングでは、上記(1)~(5)の絞り込みについて、当社の株主優待検索ページを使っています。

結果的に、抽出された9銘柄のうち、3月決算銘柄が8銘柄で、コナカ <7494> のみが9月決算銘柄となっています。3月決算銘柄は9月末が「中間期末」で、中間配当を実施することになります。予想一株配当金は、中間配当金および期末配当金のすべてを受け取ったと仮定した場合の金額で、それを株価(8/31)で割ったものが予想配当利回りです。3月決算銘柄の場合、9月末に株主優待および配当金を受け取り、権利確定後すぐ売却してしまった場合、表記された予想配当利回りを享受することはできないことになります。

抽出された銘柄はすべて、9/25(火)が「権利付最終日」の予定です。その日時点で対象銘柄を保有し、株主の権利を確定しておかないと、株主優待や配当を享受することはできませんので、ご注意ください。なお、9月に権利が確定する銘柄の中には「権利付最終日」が例外的に異なる銘柄もありますので、「権利付最終日」については別途、改めてご確認いただきたいと思います。

(2)の条件を付けたことで、1銘柄当たりの投資金額が少なくて済み、その分投資家は分散投資の効果を期待できることになります。ちなみに、表1の銘柄をすべて、最低投資単位で購入しても合計金額(諸コストは未考慮)は115万弱です。投資家は115万円弱の投資で、年間合計27,900円(税込)の配当を期待でき、9銘柄分の株主優待を享受できる計算となります。

なお、(6)の条件を満たすことで、抽出された銘柄が会社予想の営業利益を下方修正するリスクは低下するため「好業績」、(3)の条件を満たすことで、その分負債の比率が低いことになるので「好財務」であると考えられます。

日本株投資戦略,株主優待,20万円未満
(画像=SBI証券)

表1:20万円未満で買え、業績・財務ともに良好な「9月優待」の東証1部上場企業とその各種データ

コード / 銘柄名 / 株価(8/31) / 予想配当利回り / 予想一株配当金 / 四半期営業増益率 / 今期予想営業増益率
<6339> / 新東工業 / 1,029 / 2.14% / 22.00 / 13.0% / 12.5%
<7925> / 前澤化成工業 / 1,214 / 2.47% / 30.00 / 403.0% / 26.4%
<7628> / オーハシテクニカ / 1,608 / 2.86% / 46.00 / 5.5% / 0.7%
<7596> / 魚力 / 1,535 / 2.35% / 36.00 / 22.3% / -17.1%
<9368> / キムラユニティー / 1,196 / 2.26% / 27.00 / 88.8% / 29.1%
<5121> / 藤倉ゴム工業 / 604 / 2.32% / 14.00 / -3.9% / -11.5%
<7494> / コナカ(9月決算) / 504 / 3.97% / 20.00 / -21.9% / -42.3%
<6430> / ダイコク電機 / 1,783 / 2.24% / 40.00 / 黒字転換 / 9.0%
<4676> / フジ・メディア・ホールディングス / 1,910 / 2.30% / 44.00 / 85.3% / 1.0%

※会社公表データを用いてSBI証券が作成。四半期営業増益率は、コナミ(7494)のみ、第1~第3四半期累計の営業利益について、他は第1四半期の営業利益について、前年同期と比較しています。なお、ダイコク電機(6430)のみ、第1四半期営業利益が前年同期比で黒字転換ですが、残りの9ヵ月が前年同期比で横ばいでも、会社計画予想営業利益を達成できる計算であるため、表1への掲載が妥当であると考えられます。

掲載銘柄の株主優待のポイント

上場企業が株主優待を実施する目的としては、会社の製品・商品やサービスを知ってもらい、ファンになってもらうという点があげられます。したがって、消費者を直接顧客とする企業は自社製品・商品の提供が株主優待の内容となるケースが多いようです。

魚力 <7596> は関東地方を中心に鮮魚の小売店や外食店を展開しています。100株以上保有の株主に対しては2,000円相当の海産物が送られます。ちなみに、300株以上保有で4,000円相当、600株以上で7,000円相当、1,000株以上で10,000円相当の海産物が送られます。また、保有期間が長くなると金額が上乗せされる仕組みにもなっています。

藤倉ゴム工業 <5121> は工業用ゴム製品他を製造しています。ゴルフクラブの柄に当たるシャフトの大手メーカーでもあり、100株以上を保有する株主に対する株主優待としては、(1)優待割引券(ゴルフクラブリシャフト40%割引)2枚、および(2)グループ会社指定のアウトドア用品を通信販売において優待価格にて購入可能等となっています。

また、コナカ <7494> は紳士服大手チェーンとして高い知名度を持っています。100株以上の保有で、(1)「紳士服コナカ」、「紳士服のフタタ」、「KONAKA THE FRAG」等で使える優待割引券(20%割引)3枚の他、(2)「FIT HOUSE」(シューズ・バッグ他)で使える優待割引券(海外ブランド5%割引・国内ブランド10%割引)1枚が提供されます。

なお、おもに企業を取引先とする企業は、その製品・商品を株主優待として提供しにくいため、「食料・飲食券」や「金券」を株主優待に使うことが多くなります。鋳造機器大手の新東工業 <6339> は100株保有の株主にクオカード1,000円相当を提供していますが、非常にオーソドクスなパターンであると言えそうです。

その他、自動車部品のオーハシテクニカ <7628> 、総合物流業のキムラユニティー <9368> などはおこめ券の提供をおこなっています。ちなみに「おこめ券」における「1㎏」や「2㎏」の表示はあくまで参考表示です。「1㎏」で440円相当のお米(お米以外に使える店舗もある・有効期限はなし)を買うことができ、金券に近い存在となっています。これに対し、上下水道の機材を製造・販売している前澤化成工業 <7925> は9月末に100株を保有する株主に対し、新潟県産コシヒカリ新米3㎏が生産地より直送されることになります。

パチンコホールや遊技機メーカーを取引先とするダイコク電機 <6430> は100株以上保有の株主に3,000ポイント、300株以上で6,000ポイント、500株で12,000ポイント、700株で15,000ポイント、1,000株以上で20,000ポイントのポイントを付与しています。株主は専用サイトで、1ポイント1円を目安に、約600種類の商品に交換することができます。未使用ポイントは最大2年間繰り越すこともでき、社会貢献への寄付も選択可能となっています。

日本株投資戦略,株主優待,20万円未満
(画像=SBI証券)

表2:20万円未満で買え、業績・財務ともに良好な「9月優待」の東証1部上場企業とその株主優待の概要

コード / 銘柄名 / 株価(8/31) / 最低投資単位(100株)の保有により受けられる株主優待の内容(概要)
<6339> / 新東工業 / 1,029 / クオカード1,000円相当
<7925> / 前澤化成工業 / 1,214 / 新潟県産コシヒカリ新米3㎏
<7628> / オーハシテクニカ / 1,608 / おこめ券1㎏
<7596> / 魚力 / 1,535 / 海産物2,000円相当
<9368> / キムラユニティー / 1,196 / おこめ券2㎏
<5121> / 藤倉ゴム工業 / 604 / アウトドア商品優待価格販売および優待割引券(ゴルフクラブリシャフト40%割引)2枚
<7494> / コナカ(9月決算) / 504 / 優待割引券(20%割引)他
<6430> / ダイコク電機 / 1,783 / 3,000円相当の商品購入可能なポイント付与
<4676> / フジ・メディア・ホールディングス / 1,910 / 自社オリジナル手帳

※当社株主優待検索ページおよび各社WEBサイトをもとにSBI証券が作成。株主優待は8/20(月)現在の情報で作成されています。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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