大リーグ、エンゼルスの大谷選手といえば、投手と打者の両方で活躍が期待され「二刀流」は彼の代名詞にもなっています。ただ、右肘に損傷が見つかり、来年は投手をできない可能性も出てきたようです。なかなか「二刀流」を実現することは難しいようです。
株式市場で「二刀流」の活躍を期待できる銘柄はあるのでしょうか。今回の「日本株投資戦略」では、株主優待の権利を享受できるだけでなく、好配当も期待できるような銘柄を「二刀流銘柄」と称し、その抽出を行ってみました。3月決算、9月決算の銘柄を対象にスクリーニングしてみましたが、「二刀流銘柄」は数少ないというのが現実です。
9月末の権利付最終日が次第に接近する中、株主優待で投資家の閲覧数が多い銘柄の中には、業績面で苦戦している銘柄も多いようで、投資するにはある程度注意が必要とみられます。希少価値の「二刀流銘柄」をご参考にされてはいかがでしょうか。
「優待」と「配当」の両方で期待できる「二刀流銘柄」を探る
それではさっそく、スクリーニングを行ってみたいと思います。
(1)9月に株主優待および株主配当を実施する予定の会社であること
(2)9月末の予想一株配当金の株価(6/13)に対する利回りが1.5%以上であること
(3)四半期営業増益率(前年同期比)が通期予想営業増益率(会社予想)を上回ってい
ること。または期中に営業利益予想の上方修正を行っていること
上記のすべての条件を満たす銘柄を(2)の利回りが高い順に並べたものが表1となります。これらの銘柄は、株主優待の権利を享受できるだけでなく、好配当も期待できるような「二刀流銘柄」であると「日本株投資戦略」は考えています。
(1)については分析の対象が3月決算、9月決算の銘柄になることを示しています。ちなみに権利付最終日は表1の銘柄すべてについて9/25(火)になっています。
また、(2)については年度の半分の期間に対応する一株配当金の利回りであることに注意が必要です。表1では、「9月末予想一株配当」の項目で示した利回りになっています。9月末に株主の権利を確定した後すぐに当該銘柄を売却してしまった場合、参考になるのはこちらの利回りになります。なお、「予想配当利回り」は中間期末および期末の配当をすべて受け取った場合の利回りで、表1では「通期予想一株配当」の項目で示した利回りとなっています。
9月末に一定水準以上の配当が期待できる上、株主優待も実施している銘柄は多くありませんでした。特に、株主優待で投資家に人気の銘柄(当社WEBサイトの株主優待検索サイトで閲覧上位)で好配当の銘柄は多くありませんでした。
なお、予想配当はあくまでも現時点で会社側が予想している配当です。業績の変動等を背景に今後変更される場合があり、注意が必要です。したがって、保有した銘柄の業績が悪化して予想配当金額が下方修正される事態は避けたい所です。そこで、(3)の条件を付けくわえることで、こうしたリスクを下げることができると考えられます。ただ、資料作成後に業績予想等が変動する場合もあり、注意が必要です。
なお、「四半期営業利益」は3月決算銘柄の場合、2018年4~6月期、9月決算銘柄の場合、2017年10月~2018年6月期になります。「四半期利益が」前年同期比で「黒字転換」の場合、通常の増益よりも増益率が大きいとみなします。
表1:「優待」と「配当」の両方で期待できる「二刀流銘柄」(配当データ)
コード / 銘柄名 / 株価(9/14) / 9月末予想一株配当 / 通期予想一株配当円 / 利回り / 円 / 利回り
<7494> / コナカ(9) / 508 / 10.00 / 1.97% / 20.00 / 3.94%
<3465> / ケイアイスター不動産 / 2,257 / 42.00 / 1.86% / 84.00 / 3.72%
<2362> / 夢真ホールディングス(9) / 1,150 / 20.00 / 1.74% / 35.00 / 3.04%
<6417> / SANKYO / 4,360 / 75.00 / 1.72% / 150.00 / 3.44%
<4061> / デンカ / 3,650 / 60.00 / 1.64% / 120.00 / 3.29%
<6412> / 平和 / 2,628 / 40.00 / 1.52% / 80.00 / 3.04%
<7628> / オーハシテクニカ / 1,536 / 23.00 / 1.50% / 46.00 / 2.99%
※各社公表データをもとにSBI証券が作成。決算期は銘柄名の右に(9)と記した銘柄が9月決算で、他は3月決算。「9月末予想一株配当」は9月決算の場合が期末配当で、他の3月決算の場合は中間期末の配当。予想はすべて会社予想。なお、権利付最終日はすべて9/25(火)です。
「二刀流銘柄」の株主優待内容・業績は?
表2は、表1でご紹介した銘柄について株主優待の内容の概要を示したものです。なお、株主優待の内容は当レポート作成時のものであり、今後変更されるケースもありますのでご注意ください。
コナカ <7494> は100株保有の投資家に対し、優待割引券(20%割引)3枚が付与されます。これらは「紳士服コナカ」、「紳士服のフタタ」、「KONAKA THE FLAG」等で使うことができます。「FIT HOUSE」で使える優待割引券(海外ブランド5%割引・国内ブランド10%割引)1枚も付与される計画です。予想配当利回り(年間)も3.94%(9/14現在)と高水準です。なお、第3四半期累計の営業利益は前年同期比21.9%減ですが、通期の予想営業利益は前期比42.3%減の見込です。
ケイアイスター不動産 <3465> は北関東や都内を中心に展開する低価格住宅メーカーです。通期の予想営業利益は前期比20.4%増の予想ですが第1四半期の営業利益は前年同期比30.9%増と好調なスタートでした。9月末に一株当たり42円の配当を予想。100株保有の投資家に対し、クオカード1,000円相当が付与される計画です。
「建設現場の施工管理」に展開する夢真ホールディングス <2362> は9/7(金)に業績予想の上方修正を発表するなど、業績拡大基調が続いています。期末に一株当たり20円の配当を実施する見込みです。株主優待の権利を獲得するには300株保有し、権利を獲得する必要があります。300株保有では、1ポイント1円相当の株主優待ポイントが3,000ポイント付与されます。なお、保有株数や保有期間により、ポイントが異なってきます。
パチンコ機器メーカーである平和 <6412> およびSANKYO <6417> は予想配当利回りが高水準であることに加え、ともにゴルフ場を安価に使用できる株主優待を付与しています。このうち、平和は100株保有の株主に対し、自社グループゴルフ場で利用可能な株主優待割引券(3,500円)を2枚を付与しています。また、SANKYOは「吉井カントリークラブ」を平日10,000円割引、土日祝日は5,000円割引で使える割引券を1枚付与しています。
表2:「優待」と「配当」の両方で期待できる「二刀流銘柄」(株主優待内容の概要)
コード / 銘柄名 / 株価(9/14) / 株主優待の権利が確定する最低投資単位での株主優待内容の概要
<7494> / コナカ / 508 / 優待割引券(20%割引)×3枚他
<3465> / ケイアイスター不動産 / 2,257 / クオカード1,000円相当
<2362> / 夢真ホールディングス※ / 1,150 / 300株で株主優待ポイント3,000円相当分
<6417> / SANKYO / 4,360 / ゴルフ場割引券(10,000円)×1枚
<4061> / デンカ / 3,650 / 自社子会社製品(化粧品)の優待価格販売
<6412> / 平和 / 2,628 / グルフ場株主優待割引券(3,500円)×2枚
<7628> / オーハシテクニカ / 1,536 / おこめ券1㎏分
※株主優待の権利が確定する最低投資単位は※印の夢真ホールディングス <2362> のみ300株で、他の銘柄はすべて100株です。なお、株主優待内容は株主優待の権利が確定する最低投資単位での概要を示すもので、そのすべてを示している訳ではありません。保有株数や保有期間により、株主優待の内容が異なる場合があります。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之 SBI証券 投資調査部
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