海の向こうの米国では、11/2(金)の雇用統計(10月)発表、11/6(火)の中間選挙などの重要日程が終わり、さらに7~9月期の決算発表もおおむね一巡しつつあります。そうした中、東京株式市場では投資家の関心が再び、国内上場企業の決算発表に移りつつあるようです。
その意味で、11月第2週の東京株式市場は「企業業績」から目の離せない1週間になりました。11/5(月)にソフトバンクグループ(9984)、11/6(火)にトヨタ(7203)が決算発表を終了し、「質」の面では決算発表の峠を越えたとみられます。さらに、11/9(金)には506社の企業が決算発表を実施したとみられ、「数」の面でも決算発表の峠は越えたとみられます。
今後は、決算発表の結果を踏まえ、上場企業を業績や将来見通しの面から再評価してくる動きが本格化してくるものと考えられます。そこで、今回の「日本株投資戦略」では、11/8(木)までに決算発表を終えた銘柄から、好業績銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。
決算発表が佳境!「主役」を目指す好業績銘柄を探る
前回もご説明した通り、今回の決算発表では、事前の市場予想を下回ったり、業績見通しを引き下げたりする銘柄も少なくなく、決算発表後に株価が急落するケースも多くなっています。このため、決算発表予定日に向けては、警戒感から買いポジションを整理した投資家も少なくないと考えられます。
しかし、決算発表自体への警戒感が強かっただけに、逆に決算発表以降は安心感が強まる銘柄も増えるとみられます。そこで、今回の「日本株投資戦略」では11/2(金)~11/8(木)までに決算発表を終えた銘柄を分析対象とし、好決算銘柄の抽出を試みました。スクリーニング条件は以下の8点です。
(1)東証1部上場銘柄であること
(2)3月決算銘柄であること
(3)時価総額1,000億円以上の銘柄であること
(4)11/2(金)~11/8(木)に決算発表を終了した銘柄であること(※)
(5)2名以上のアナリストが業績予想を公表していること
(6)上期(2018年4~9月期)の営業利益が、事前の市場コンセンサスを上回っていること
(7)上期(2018年4~9月期)の営業増益率(前年同期比)が通期(2019年3月期)会社予想増益率を上回っていること
(8)来期(2019年3月期)の市場予想営業利益が10%以上の増益予想となっていること
※前回の「日本株投資戦略」で11/1(木)以前に決算発表を実施した銘柄を分析対象としたため、今回はそれらの銘柄を分析対象外としました。
上記の全条件を満たした銘柄について(7)の上期営業増益率が高い順から10銘柄を抽出。それらを(6)で使った数字、すなわち上期(2018年4~9月期)の営業利益が、事前の市場コンセンサスを、何%上回ったのかその数字(表1の「市場予想比」)が高い順に並べたものが表1となります。これらの銘柄は今後、株式市場で再評価の対象になる場面もあると「日本株投資戦略」では予想しています。
表1:「主役」を目指す好業績銘柄を探る
コード / 銘柄名 / 株価(11/9) / 2018年4~9月期営業利益 前年同期比 / 2018年4~9月期営業利益 市場予想比 / 2019年3月会社予想営業増益率
<3774> / インターネットイニシアティブ / 2,543 / 25.8% / 11.7% / 3.5%
<8252> / 丸井グループ / 2,632 / 24.8% / 11.3% / 12.7%
<6055> / ジャパンマテリアル / 1,231 / 62.3% / 7.1% / 31.0%
<4849> / エン・ジャパン / 4,320 / 39.1% / 6.8% / 11.1%
<7211> / 三菱自動車工業 / 757 / 28.6% / 6.5% / 12.0%
<3099> / 三越伊勢丹ホールディングス / 1,346 / 41.5% / 6.4% / 18.8%
<6750> / エレコム / 2,989 / 27.1% / 6.1% / 7.9%
<6287> / サトーホールディングス / 3,045 / 30.8% / 4.9% / 21.6%
<7220> / 武蔵精密工業 / 1,729 / 32.6% / 4.2% / 7.8%
<6197> / ソラスト / 1,402 / 29.3% / 2.9% / 13.2%
※Bloombergデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。丸井グループ(8252)は今期より会計方針を変更しているため、前期の営業利益については、会社公表データから逆算して求めています。
抽出銘柄の株価推移・投資ポイント
抽出条件で示した通り、表1に掲載した銘柄は上半期の営業利益が市場コンセンサスを上回っている上、通期の会社予想営業利益も増額修正含みになっていると考えられます。それでも、決算発表後の株価は上昇基調に転じているとは限らず、投資タイミングが重要になると考えられます。
そうした投資環境ではあるものの、インターネットイニシアティブ(3774)は決算発表を実施した11/6(火)の取引時間中から急騰していますので、短期的にはその反動に対する注意が必要とみられます。反面、「ダブル・トップ」となっていた6月と9月の高値水準を更新してきた(図1)ので、中長期的には強い形になっているようです。
丸井グループ(8252)は上半期の営業増益率(前年同期比)が24.8%増となり、通期の営業利益予想を400億円から410億円に上方修正しました。これを受けて、事業モデルの独自性を評価するアナリストもあり、11/9(金)の株価は大幅高となっています。急変動の後でもあり、短期的には値動きが激しくなる可能性がありますが、中期的には9/28(金)の高値回復が視野に入ってくる可能性もありそうです。
ジャパンマテリアル(6055)は東芝メモリを主要顧客にしており、同社向けの配管工事や特殊ガスの販売が伸び、上半期は営業利益が前年同期比25.8%増となりました。しかし、9/20(木)付ですでに上方修正を発表していることもあり、今回は上方修正はありませんでした。東芝向け受注、および半導体業界自体のピークアウトを心配する向きもあり、株価は11/9(金)に急落しています。ただ、他社向けの仕事も増えている模様です。
エン・ジャパン(4849)は11/8(木)の取引時間終了後に決算発表を行い、好業績から11/9(金)は買い先行となりましたが、11/5(月)の高値4,670円を上回る4,700円を付けた後に下げてしまいました。年初来高値6,750円から10月末に一時4,000円を割り込み、そこからの反騰局面になっていましたが、戻り売りに押された形です。ただ、労働の現場で「AI・自動化」が進み、業務の見直しが増える中、新たな派遣需要も出ているようです。事業環境は悪くないと考えられます。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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