我々は気づかぬところで「トウモロコシ」を食べている
世界で最も多く作られている農作物は何だろう。
コムギでもなく、イネでもなく、トウモロコシである。
トウモロコシと言えば、私たち日本人にとっては、出店の屋台の焼きトウモロコシやサラダやスープなどが思い付くところだ。トウモロコシが、コムギやイネ以上に食べられているようにはとても思えない。
アメリカの先住民や移民の間で重要な食糧であったトウモロコシは、やがて硬い土を耕す「鋤」の発明や蒸気機関の登場による機械化によって、大規模生産が行われるようになった。しかし、穀物として人間に食べられるトウモロコシも、じつは少数派である。
今やトウモロコシは単なる食糧ではない。トウモロコシは栄養価が高いので、世界のトウモロコシの多くは、家畜の餌として用いられているのだ。
そのため、トウモロコシを食べていないと思っても、牛肉や豚肉などの肉を食べたり、牛乳を飲むことで、間接的にトウモロコシを食べていることになるのだ。
人間の半分はトウモロコシでできている!?
しかし、トウモロコシの役割はそれだけではない。じつは、さまざまな加工食品や工業品の原料としても活躍している。
さまざまな加工食品に用いられるコーン油も、コーンスターチも、トウモロコシを原料としている。驚くべきことに、かまぼこやビールにまでトウモロコシは入っているのだ。
それだけではない。トウモロコシのデンプンからは、「果糖ぶどう糖液糖」という甘味料が作られる。そのため、チューインガムやスナック菓子、栄養ドリンク、コーラなど、さまざまな食品に入っていて、知らず識らずにトウモロコシを食べている。
ダイエットのために、お菓子やドリンク類を控えているという人は、もしかすると糖類を抑えた特定保健用食品や、脂肪の吸収を抑える飲み物を利用している人もいるかも知れない。これらの商品には「難消化性デキストリン」という成分が入っている。この難消化性デキストリンもトウモロコシに由来して作られたものである。
私たちの体は、さまざまな食品から作られる。一説によると、人間の体のおよそ半分はトウモロコシから作られているのではないかと言われるほどである。
人間の体は、トウモロコシでできている。
まさに神がトウモロコシから人を作ったという、マヤの伝説そのものである。