東京株式市場は冴えない展開となっています。米中貿易摩擦を契機に、世界経済の先行きに不透明感が強まっており、日経平均株価は、10/2(火)に付けた年初来高値から1割を超える下げとなっています。中間決算の発表も終わり、通常であれば好業績銘柄の物色などで盛り上がりそうなタイミングですが、それらの銘柄も現状ではけん引役になっていないようです。

そうした中、個別には日産自動車(7201)がカルロス・ゴーン会長の逮捕で株式市場に大きな衝撃を与え、話題になっています。ただ、株価的には事件発覚直後の11/20(火)に大きく売りが先行したものの、ストップ安まで売り込まれることなく、売り一巡後はもみ合う展開になっています。株価下落で予想配当利回りが6%前後まで高まり、それに魅力を感じた投資家の買いが増え、株価の下支え要因になったものと考えられます。

今回の「日本株投資戦略」では、配当利回りに注目したいと思います。折しも、東京株式市場では日経平均株価の予想配当利回りが一時2.14%と、約6年ぶりの高水準を「回復」し、配当利回りが再び注目されやすくなっています。時価総額が大きく、知名度の高い銘柄でも、予想配当利回りが高水準の銘柄は少なくないように思われます。先行き不透明感の強い株式市場ですが、配当利回りの再評価が、株価底入れの契機になるのかもしれません。

12月に権利確定の好配当利回り銘柄はコチラ!?

日本株投資戦略
(画像=PIXTA)

それではさっそく、スクリーニングにより、12月に権利確定を迎える好配当利回り銘柄の抽出を試みてみたいと思います。スクリーニング条件は以下の5条件です。

(1)東証1部上場銘柄であること
(2)12月決算銘柄であること
(3)時価総額1,000億円以上の銘柄であること
(4)広義の「金融」以外の業種に属している銘柄であること
(5)アナリストが業績予想を公表していること

上記の全条件を満たした銘柄すべてについて、予想配当利回りが高い順に並べたものが表1になります。JT(2914)、キヤノン(7751)といった我が国を代表する企業でさえ、予想配当利回りが5%を超えているのは驚きです。ちなみに、JTの予想配当利回りは会社計画で年間150円となっています。また、キヤノンは現状で、年間ベースの会社予想1株配当は公表されていませんが、前期実績では1株160円となっています。今期の市場予想1株配当が特に強気過ぎるという訳ではありません。

なお、一般的に「配当利回り」は投資家が年間に受け取る1株配当金額を、株価で割って求められるものです。したがって、中間配当金が支払われる会社では、その金額と期末配当金を合計した金額が、株価に対して何%に相当するかを計算することになります。表1では計算のベースに市場予想1株配当を用いていますが、中間配当が実施された会社については同様の注意が必要です。

株式投資から得られる利益にはおもに、このように配当から得られる「インカムゲイン」に加え、値上がりによって獲得される「キャピタルゲイン」もあります。仮に高水準の「インカムゲイン」を享受できても、株価の値下がりにより、「キャピタルゲイン」の部分が大きなマイナスになってしまうと、全体の損益は悪化してしまうことになります。ただ、複数銘柄に投資することによって、リスクを分散することは可能です。

表1に計算した銘柄はすべて、最低売買単位が100株となっています。上位5銘柄に100株ずつ投資するのであれば、合計112万円弱(諸コストを除く)で、全10銘柄の場合は274万円弱で投資することができます。ただ、全般的に、事業展開が世界に及ぶ企業が多いことから、世界経済の変動とともに、業績や株価が変動しやすくなっている可能性もあります。

12月に権利確定の好配当利回り銘柄はコチラ
(画像=SBI証券)

表1:12月に権利確定の好配当利回り銘柄はコチラ!?
コード / 銘柄名 / 株価(11/21) / 市場予想配当利回り / 市場予想1株配当 / 時価総額(億円)
<2914> / 日本たばこ産業 / 2,816 / 5.3% / 150.29 / 56,320
<7751> / キヤノン / 3,181 / 5.1% / 161.18 / 42,427
<7272> / ヤマハ発動機 / 2,259 / 4.0% / 91.03 / 7,905
<5110> / 住友ゴム工業 / 1,520 / 3.9% / 60.00 / 3,998
<6141> / DMG森精機 / 1,411 / 3.8% / 53.96 / 1,777
<5108> / ブリヂストン / 4,345 / 3.7% / 160.00 / 33,089
<4631> / DIC / 3,515 / 3.6% / 126.25 / 3,345
<3436> / SUMCO / 1,587 / 3.6% / 56.56 / 4,654
<6592> / マブチモーター / 3,805 / 3.5% / 133.63 / 2,609
<5214> / 日本電気硝子 / 2,935 / 3.4% / 100.00 / 2,921
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。「市場予想」はBloombergが集計した市場コンセンサス。

株式市場で「配当利回り」に関心が集まる可能性も

冒頭でご説明したように、日産自動車(7201)がカルロス・ゴーン会長の逮捕で株式市場に大きな衝撃を与え、話題になっています。ただ、株価的には事件発覚直後の11/20(火)に大きく売りが先行したものの、ストップ安まで売り込まれることなく、売り一巡後はもみ合う展開になっています。株価下落で予想配当利回りが6%前後まで高まり、それに魅力を感じた投資家の買いが増え、株価の下支え要因になったものと考えられます。

図1は、日経平均株価とその予想配当利回りの推移を週足ベースでみたものです。11/21(水)現在の予想配当利回りは2.13%ですが、この水準を付けるのは最近では10月下旬(10/31に2.14%)前後の数日以来で、それ以前は2012/11/21以来となります。「アベノミクス相場」の中ではほぼ、現在が最高水準であると考えられます。

予想配当利回りは配当が増えたり、株価が下落することで上昇します。野田前首相が解散を表明した2012/11/14(水)、日経平均株価の終値は8,664円73銭で、現在(11/20終値は21,583円12銭)の4割に過ぎませんでした。当時は株価が安かったことが、予想配当利回りの高い理由になっていたと考えられます。しかし、企業業績が「過去最高益」の現在は、予想配当額の多さが配当利回りに結びついていると考えられます。その分、株式投資の魅力は増したものと考えられます。

なお、表1に掲載した銘柄は2018年に入り、株価の低迷が長引いている銘柄が多いとの印象です。その意味で、株価の底入れには時間を要する可能性もあります。ただ、今後株価がさらに下がり、予想配当利回りがさらに上昇した場合、それを魅力と感じる投資家が増えてくるものと期待されます。

図1:日経平均株価と予想配当利回り

日経平均株価と予想配当利回り
※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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