2018年前半の米株式市場の成長をけん引したのは、「CAMBRIC」株だった。どのような銘柄で、なぜ強いのだろうか。

CAMBRICはデータ収益化銘柄

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(写真=PIXTA)

「CAMBRIC」は「キャンブリック」と読み、ハイテク分野をリードする要素の頭文字を合わせて作った新しい造語である。18~19世紀の蒸気機関による「機械化」の第1産業革命、19~20世紀の石油と電力を活用した「大量生産」の第2次産業革命、20世紀後半からのコンピューターによる「自動化」の第3次産業革命に次ぎ、人間の思考や行動がインターネットで補完される「データ化」の第4次産業革命をリードする分野だ。CAMBRICは、データの収益化の仕組みと言い換えることもできる。

最初のCはインターネット経由でサービスを提供する仕組みの「クラウド」、Aは人間の思考や分析をコンピューターが代行する「AI (人工知能) 」、Mは持ち運び可能なデバイスによってどこでもサービスにアクセスできる移動性を表す「モビリティー」、Bは膨大な量のナマのデータを分析してマーケティングや学術研究に役立てる「ビッグデータ」、Rは自動化や遠隔操作の「ロボティクス」、Iはすべてのモノがインターネット接続され、互いの情報・機能が補完し合う「IoT」、Cは悪質化して増大するインターネット上の脅威からユーザーを守る「サイバーセキュリティー」をそれぞれ表す。

これらの最先端を走るのが米IT大手企業であり、株価は好調だ。

IT株指数に見るCAMBRICの勢い

CAMBRICの「本拠地」は、S&P 500 Information Technology (テクノロジーセクター) だ。米国の代表的な500上場銘柄で構成される株価指数であるS&P500の中からテクノロジー株を選別したグループで、フェイスブック、アルファベット (グーグルの持株会社) 、アップル、マイクロソフトなど知名度が高い銘柄が多く含まれる。

このS&P500のテクノロジーセクターのパフォーマンスは2017年に前年比36.9%と、業種別グループのトップに立った。さらに2018年前半においては、前年比10.8%の伸びを見せ、引き続きパフォーマンスは好調だ。 (本記事の株価上昇率は年初から2018年6月末時点のパフォーマンスを記載)

たとえばアルファベット株 (ティッカー:GOOGL) はCAMBRICの要素のうち、クラウド、AI (グーグルアシスタント) 、モビリティー (アンドロイドデバイス向けのアプリやコンテンツ配信にかかる手数料) 、ビッグデータ (ウェブ検索やアンドロイドOS使用履歴に基づくターゲティング広告事業) 、IoT (グーグルホーム・スマートスピーカー) などを擁し、2018年前半に7.2%上げている。さらに底堅い広告販売などで利益と売上高が伸びた。

また、AI (Siri) やモビリティー (iPhoneやiPad) などを持つアップル (ティッカー:AAPL) の株価も8.79%上昇するなど、投資家から好感されている。こちらは2018年に発表されるiPhoneやiPadの売れ行きにも期待が高まっている。膨大なSNS利用者数数から得られるビッグデータを分析し、広告商材につなげるFacebook (ティッカー:FB) の株価も9.37%上昇している。

一方、マイクロソフト (ティッカー:MSFT) は成長が著しいクラウド (Azure) 、AI (Azureやコルタナ) 、モビリティー (タブレット化が可能なSurface製品) 、ビッグデータ (WindowsやOffice 365、LinkedInやTeamsなどのOS・アプリ・サービスから得られるデータ) でOS依存からの「復活」を遂げ、年初来14.49% 上げた。CAMBRICの要素を強調するナデラ現最高経営責任者 (CEO) が就任した2014年以来、株価がほぼ3倍になったことは、CAMBRIC路線の高収益性を示すものとして特筆される。

また、クラウドやAI、ビッグデータなどCAMBRICの要素を多く持つが、小売でもあるためS&P500のテクノロジーセクターには分類されないアマゾン (ティッカー:AMZN) も年初来45.03%の上昇を見せており好調だ。

「データ化」が続けば今後も有望

CAMBRICにけん引されるS&P500テクノロジーセクターのパフォーマンスは、引き続き順調な伸びが予想されることが、「Tech stocks are performing well so far this year, and based on history, that usually means one thing for the broader markets」と題したCNBCの報道からも伺える。

短期的には、米トランプ政権が引き起こす世界貿易摩擦や、米連邦準備制度理事会 (FRB) の利上げ継続路線による想定外の景気の冷え込みなどが、相場の足を引っ張る要因となる可能性がある。

だが、中長期的には「データ化」革命が継続する限り、CAMBRIC銘柄の全体的な好調が続く可能性は大きい。投資に際してCAMBRICの要素を慎重に検討することが、成功に結びつく場面も見られそうだ。(提供:大和ネクスト銀行


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