富裕層ならば、いずれ発生する相続に備えて相続税対策をしておく必要があります。相続税対策には暦年贈与の他に、生命保険の非課税枠や養子縁組を活用する方法があります。それぞれのメリット・デメリットを理解して早めに準備しましょう。

相続税がかかる仕組みと暦年贈与

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(画像= Africa Studio/shutterstock.com)

相続税対策をする前に、相続税の仕組みについて基本を押さえておきましょう。相続税は、相続や遺言で受け取った財産が基礎控除を超えた場合に発生します。基礎控除とは相続税がかからない範囲のことで、法定相続人の人数によって金額が変わります。

基礎控除の計算方法はシンプルです。法定相続人の人数に600万円を乗じた金額に3,000万円を加算して計算します。例えば法定相続人が3人なら、基礎控除は4,800万円です。基礎控除の範囲内であれば、相続税は一切かかりません。基礎控除を超える場合は、超えた部分に相続税率を乗じて税額を計算します。

最もポピュラーな相続税対策は、暦年贈与です。富裕層の多くは、銀行の担当者や税理士に提案され、子どもや孫に暦年贈与をしています。暦年贈与とは、相続が発生する前に事前に現金を贈与しておくことで、相続税の対象となる財産総額を減らし、相続税を軽減する相続税対策です。

相続税では所得税と同様に累進課税が採用されており、財産総額が大きくなるほど適用される税率が上がります。6億円を超えた場合、55%もの相続税率が適用されます。暦年贈与によって財産総額を減らしておけば、適用される税率を引き下げることができます。

贈与税にも基礎控除があり、年間110万円までであれば贈与税は発生しません。今後資産が大きく変動する可能性がある場合や、お子様がまだ小さい場合は、基礎控除の範囲内で贈与するのがおすすめです。詳細な相続税のシミュレーションをしなくても簡単に効果を得ることができるからです。

相続税対策を急ぐ場合や、相続税の対象となる財産総額が大きい場合は、詳細なシミュレーションをした上で、相続税と贈与税の税率を比較する必要があります。場合によっては、暦年贈与以外の相続税対策も併せて検討するようにしましょう。

保険の非課税枠の範囲内なら相続税はかからない

一般的に、生命保険金には相続税はかからないと思われています。それは、生命保険金に非課税枠が設定されているからです。非課税枠は、法定相続人の人数に500万円を乗じて計算します。

例えば法定相続人が3人なら、非課税枠は1,500万円です。この場合、1,500万円までの生命保険金であれば、相続税はかかりません。まずは現状の保険を整理し、生命保険金が非課税枠に達していないのであれば、非課税枠ぎりぎりまで生命保険に加入することで、相続税の負担を軽減することができます。

相続税対策として養子縁組する時の効果と注意点

相続税には、基礎控除や保険の非課税枠など「相続税のかからない範囲」が設定されています。そして、基礎控除も保険の非課税枠も法定相続人の人数をもとに計算します。つまり、法定相続人が多くなるほど「相続税のかからない範囲」が増えるということです。

法定相続人とは、民法で定められた財産を相続する権利がある人を指します。「財産を遺したい人」ではないので、注意しましょう。法定相続人には優先順位があり、「配偶者・子」「配偶者・父母や祖父母などの直系尊属」「配偶者・兄弟姉妹」の順に権利が発生します。

養子縁組をすることで、法定相続人の人数を増やすことができます。よくあるケースは、子の妻との養子縁組です。子の妻を養子に迎えることで、1人につき基礎控除が600万円、保険の非課税枠が500万円増えることになります。ただし、孫を養子にする場合は相続税が2割加算される仕組みになっているため、注意が必要です。

相続税対策として養子縁組をする際に気をつけたいのは、実子への十分な説明です。養子とはいえ、実子と同等の権利が発生します。遺産分割においても、当然発言権を持つことになります。養子縁組を活用する場合は、実子に十分に説明し、了解を得てから実行するようにしましょう。

文・木崎 涼(ファイナンシャル・プランナー)

(提供:JPRIME


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