(本記事は、滝内恭敬氏の著書『なぜ高収入社長よりも、低賃金サラリーマンの方が人生のステージが高いのか?』=サンライズパブリッシング、2018 年7月25日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

会社員の経験や実績は、起業には無意味なので手放そう!

起業家,会社員
(画像=Roman Samborskyi/Shutterstock.com)

起業家ステージに入ると決めた人が肝に銘じるべきことは、会社員のルールと、起業家のルールは、まったくもって別ものであるということです。

サッカーで一流になった選手が野球においても一流になれるのか? と考えたら、必ずしもそうではないですよね。それと同じように、過去のルールを一掃しなければいけません。なぜなら、多くの場合、イケてる会社員ステージでよしとされていることは、起業家ステージでは悪いことだからです。ステージごとにルールが変わるということは以前にもお伝えしていますが、特に、イケてる会社員ステージから起業家ステージへの移行は、顕著なルール変更を伴います。

会社員として営業でトップセールスの経験を持ち、素晴らしいイケてる会社員ステージを過ごされた方が、起業して全然うまくいかずに、結局以前よりも収入の低いサラリーマンに戻ってしまったという話を聞いたことがありませんか?

また、会社の経営幹部として勤務されている方も、イケてる会社員ステージに分類されます。MBAを取得し、社内では優秀な人材として活躍した人だからといって、起業してもうまくいくということにはならないのです。なぜなら、会社員ステージでは、会社の信用や顧客、予算など、会社のリソースを使用することができましたが、起業家は商品作り、マーケティング、経理など、すべてをゼロからスタートさせ、すべてのリソースを自ら生み出す必要があるからです。職人マインドのままでビジネスを始めると痛い結果を手にすることになるのは当然です。

繰り返しになりますが、もし、起業して成功したいなら、過去の栄光に浸るのではなく、今までのルールを一旦白紙に戻し、新しいルールを元に次のステージに入る必要があるということです。

また、会社員では上司が責任をとってくれますが、起業するとすべてが自己責任です。他人依存の思考も捨てなければなりません。そのために、起業家として、マインドセットはもちろん、スキルや知識、健康管理、時間管理などにおいて高いスタンダードを身につけることも必須になってきます。

イケてる会社員ステージから起業家ステージに突入する理想的な形は、イケてる会社員ステージを限界まで飽和させ、自然と浮上してしまい、天井を突き破ってしまった! という感じでしょう。

私自身も、あれだけ一生勤務し続けると決めていた会社を辞める決断をしています。土日のビジネスで収益を十分に出せていたにも関わらず退職しなかったのですが、ビジネスを通じて人々を救いたいという使命感はもちろん、それ以外にも、退職する決断の後押しとなった要因が複数あります。本章では、そのポイントを具体的に解説します。

社長になって堕落する人間は会社員ステージに逆戻りする

脱サラに成功し、私が完全たる起業家ステージに突入した頃、会社員に充てていた時間もビジネスに使うことができるようになったことで、毎月200万円から300万円程度稼ぐことができていました。

当時の私の心境は、本当に気合が入っていました。なぜなら、この先の人生のすべてを自己責任でやっていかなければいけなくなったのですから。

起業家ステージの特権と言えば、何よりも自由気ままさです。まるでソロの演奏家のように自分の音楽を好きなように奏でることができるのです。起業家ステージを志願する人が多いのはそのためです。

中には、自由なだけに生活リズムをうまく作れず、モチベーションも下がり、ダラダラしてしまう人もいますが、もし、社長になったにも関わらず堕落してしまうのであれば、会社員に戻ることになってしまいます。なぜなら、自分の管理ができなければ、誰かに管理してもらうしか方法がないからです。

会社員であれば、何時にどこに行き、何をするべきか、いくら給料がもらえるのか、すべて管理されます。これが嫌なら、自分で自分を管理するスタンダードを決めるべきです。

私の場合は、時間だけでなく、健康面においてもスタンダードを明確に決めていました。社長の健康状態やエネルギーの状態で、売上が決定されるからです。会社であれば、休んでもどうにかなりましたが、起業家ステージに入れば自分が倒れたらおしまいです。

そこで、私は食事を栄養価の高いものに変え、ジムにも通い、プロの力を借りてハイパフォーマンスを発揮するための健康習慣を形成したのです。そのおかげで、私は次々に新規顧客を獲得でき、売上を伸ばしていきました。

独自性を確立して、何かで突き抜けているか?

起業家ステージでは、すべての売上を自分で作る必要があるため、稼ぐスキルを習得することが欠かせません。稼ぐスキルとは、「コンセプト×集客力×営業力」のことです。その中でも、魅力あるコンセプトを確立するために、どこかで突き抜けている必要があります。

多くの人が、動画撮影や映像制作、マッサージサロン、ネイルサロンや美容室、このような世間に認知されているビジネスで起業しようと考えがちです。

しかし、これは多くの場合、稼げないものばかりです。なぜなら、競合が多いために単価が低く、仮に単価を上げれば競合に流れてしまうため難しいのです。なので、既存のビジネスや大手が参入しやすいビジネスは避けるべきです。

イケてる会社員ステージでは、会社の知名度とブランドによって顧客が生まれましたが、起業家ステージとなると、あなたの持つブランドの魅力によって、追いかけずとも顧客が集まる状態を作る必要があります。

もし、突き抜ける部分がない状態のまま独立をしても、魅力がないために顧客が集まらず、収益を上げられません。

では、魅力あるコンセプトを作るには、何を考慮すべきなのか?

それは、「コンセプト=誰のどんなお困りごとを解決するのか?」です。

例えば、カフェ経営で起業するとします。しかし、見渡せば至るところにカフェがあり、コーヒーはコンビニエンスストアでも100円で販売されています。大手企業は人件費が安くつきますが、個人で経営するカフェは、社長自身が店員になる必要があり、時給がおそろしく低くなってしまいます。

お菓子作りで起業したいと言う人もいますが、世の中には、修業を積んだ一流のパティシエが数多くいる上に、すでに世に出回っているお菓子と圧倒的に差別化することが必要になります。すでに有名ブランドが一等地やデパ地下などで商品を販売しており、同じような戦略で個人として始めても、勝てる見込みがありません。

しかし、差別化とは言っても、ただ何かと何かを組み合わせたり、奇抜なことをすればいいというものではありません。奇抜なことをしたところでニーズがない、ということも多々あります。

例えば、ダイソンの羽のない扇風機を買ったことがありますか? 5~7万円する扇風機です。普通の扇風機に比べて高額ですが売れています。デザインがかっこいいから買うという人もいるかもしれませんが、この商品は、子どもやペットが怪我をしないようにというコンセプトで作られました。ですので、家に子どもやペットがいる人にとっては、まさしくお困りごとを解決してくれた商品なのです。

コンセプトを正しく把握していないと、省エネや静音など、商品のことばかりにこだわってしまい、無駄なボタンばかりが増え、何のお困りごとの解決にもつながりません。

儲からないビジネスは、お困りごと解決のギャップが弱く、あまり困っていない人に「ちょっとだけよくなりますよ」という程度の商品を販売しようとしてしまっているのです。そうではなく、ある特定の痛みを持ち、困っている人に、圧倒的によくなるための解決策を販売してください。

起業のコンセプトは、万人受け断固拒否です。そんなものは、大手企業にやらせておきましょう。

収入や売上は自分で決めるもの

当然ですが、起業家ステージになると固定給はないため、思うように収益を伸ばせていない人も多数います。

その原因は、「売上を上げる」プロセスに問題がある可能性があります。

先ほど述べた、稼ぐスキル「コンセプト×集客力×営業力」を再度見てみましょう。これは、魅力あるコンセプトをもとに顧客が自然と集まり、商品が売れていく状態であり、すべてが掛け算で効いてくるために、どこかがゼロになると売上そのものがゼロになってしまいます。

たまに、顧客に自分の商品を買ってもらえるかが定かでないのに、商品作りに没頭し、収益を生まないまま数年が過ぎた…という人がいますが、これはよくない例です。自分がよいと思う商品であっても、売れるかどうかはわかりません。独自商品を作ることに没頭する前に、世の中には、あなたが関わりたいと思う業界で、すでに商品が売れていて実績がある人もいますよね。そのような人の商品を代理販売する方が、早く売上につながります。

私も、最初は既存商品を扱うことから始めました。突然に自分で商品を作っていません。しかし、ネットを使った集客技術と、高額な商品であっても高確率で販売できる営業力を習得することで、最終的には「あなたから買いたい」と言ってくれるファンがたくさんできたからこそ、自分で商品が売れるようになったのです。

「それでも自分の商品を作ることが楽しい!」と言いたくなる人もいますよね。何度も言いますが、収益を生み出していなければ、それは趣味です。なので、あくまで趣味としてやり続けてください。

また、世の中には、生れながらに古いしきたりを壊し、革新を起こすことが得意な人もいれば、そうでない人もいます。各々の才能が異なりますので、誰もがスティーブ・ジョブズやエジソンのように、革新を起こす必要はありません。新しいコンセプトを確立していくのが得意な才能の人は、基本的にクリエイティブで物事の改善が得意な人です。

革新をもたらすより、ルールに従う方が得意な人もいます。その場合は、フランチャイズやライセンス権を購入することで、他の人が確立してくれたコンセプトを活用することをオススメします。

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滝内 恭敬
株式会社GOSPA 代表。高専卒業後、大手航空会社で国際線整備の仕事に就くも、入社2 年で退職し、輸入ビジネスを起業して上海に展開する。ビジネス書を200 冊以上読み、セミナーや教材に数百万円以上のお金をかけて勉強したにも関わらず、失敗して多重債務、ホームレス、破産、日雇い労働者、最終的にはメンタルがやられニート、離婚を経験する。どん底から脱却すべく、平日は大手重工会社でNY 地下鉄の設計の仕事をしながら、2013 年5月に株式会社GOSPAを設立し、社長に就任。現在はシンガポール、フロリダ、パナマなど海外でもビジネスを展開。「世界中の全ての人々の自己実現欲求を満たし、世界の飢えと貧困を根本からなくす!」ことを社会的約束に、GOSPAプログラムのさらなる普及と改善に努めている。

文・MONEY TIMES 編集部/MONEY TIMES

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