土地を生前贈与しようと思っているが、その手順や手続き、また生前贈与にともなってどのくらいの税金・諸経費がかかるのかとお悩みではないでしょうか。

ここでは、土地を生前贈与する場合の手順・手続きと、生前贈与にともないどのくらいの税金や諸経費がかかるのかを解説するとともに、最後にその税金をできるだけ節税する方法を解説しています。

土地を生前贈与した場合の税金・諸経費とその節税方法
(画像=税理士が教える相続税の知識)

1.土地を生前贈与する際の手続きと流れ

(1)贈与契約書を作成する
(2)土地の名義変更登記を行う
(3)贈与税の申告を行う

土地の生前贈与には、「贈与契約書の作成」「名義変更登記」「贈与税申告」の大きく3ステップがあります。順番に解説していきます。

(1)「贈与契約書の作成」
土地を贈与するということを書面に残します。法律では口頭でも贈与は成立することになっていますが、書面を作成しないと後々、名義変更登記や贈与税の申告の手続きを行うことができませんので、必ず贈与契約書は作成が必要です。

(2)「名義変更登記」
土地の名義を変更するための変更登記が必要となります。法務局で手続きを行うのですが、自身で行うのが難しい場合には専門家である司法書士に依頼することも可能です。

(3)「贈与税申告」
次項以降で詳しく解説しますが、生前贈与を行う土地の価格が年間110万円を超える場合には贈与税と呼ばれる税金がかかります。そしてその贈与税は納税者自身が計算し自分で税務署に申告かつ納税を行う必要があります。

土地の生前贈与の手順を解説してきましたが、次項では土地を生前贈与する際に必要となる税金や諸経費について、詳しく解説していきます。

2.土地を生前贈与するときにかかる税金・諸経費の一覧

土地を生前贈与する際には、そのときにかかる税金や諸経費のことを必ず考慮しておく必要があります。
特に税金は生前贈与をした後からかかってくるもので、こんなはずじゃなかったとあとで後悔しても手遅れになる場合もあります。生前贈与をする前に、ここでよく税金や諸経費について理解をしましょう。

2-1.生前贈与に伴う名義変更で「登録免許税」と「不動産取得税」がかかる

生前贈与によって、不動産である土地の名義変更を行うことで、「登録免許税」と「不動産所得税」の2つの税金が必ずかかります。

・登録免許税は固定資産税評価額の2%

登録免許税は、生前贈与を行った土地の固定資産税評価額の2%がかかってきます。
例えば、5,000万円の土地を生前贈与した場合には、

5,000万円×2%=100万円

の登録免許税がかかります。

・不動産取得税は固定資産税評価額の1.5%

不動産取得税は、生前贈与を行った土地の固定資産税評価額の1.5%がかかってきます。
例えば、5,000万円の土地を生前贈与した場合には、

5,000万円×1.5%=75万円

の登録免許税がかかります。なお、1.5%は宅地を贈与した場合で、かつ平成30年3月31日までの軽減措置となっています。

2-2.土地の価格が110万円を超えれば「贈与税」がかかる

生前贈与をした土地の価格が110万円を超えると「贈与税」と呼ばれる税金がかかります。
この価格は、相続税評価額で、詳細は割愛しますが、路線価をベースに計算する必要があります。一般の方が自分で正確に求めるのは困難なため、生前贈与しようとしている土地の価格がいくらになるのかは専門家である税理士に相談しましょう。

贈与税の税率は非常に高く、例えば生前贈与する土地の価格が5,000万円を超えるとその税率は55%となり、半分以上が税金でとられる計算になってしまいます。
ですので、通常は土地を生前贈与する際にはこの贈与税がかからないようにうまく節税対策を行うことが必要となります。

次項の「3.土地の生前贈与を行う際の「贈与税」を節税するための方法」を参照してください。

2-3.専門家に依頼する場合の手数料

土地の生前贈与に関する一連の手続きを専門家に依頼する場合には、司法書士と税理士に依頼する必要があります。土地の名義変更登記に関する手続きの代行は司法書士に、贈与税の申告手続きは税理士にしか行うことができないためです。

費用は司法書士に払う報酬は、約5万円程度、税理士に払う報酬は贈与する土地の金額にもよりますが、5万円~10万円程度かかります。

3.土地の生前贈与を行う際の「贈与税」を節税するための方法

土地を生前贈与した際の贈与税の負担をできるだけ軽減する方法をご紹介します。
税制で設けられている様々な特例をできる限り使用しますが、それぞれの特例に使用できる条件が定められていますので、あなたが使用できる特例がないかどうかよく読んで確認をしてください。

3-1.婚姻期間20年以上の夫婦間で自宅の土地なら2,000万円まで無税

婚姻期間が20年以上の夫婦間において、自宅の土地を贈与する場合には土地の価格2,000万円までは無税で贈与することが可能です。特に複雑な要件はなく、婚姻期間が20年であることと、贈与する土地が自宅で実際に住んでいる土地であればOKです。

通称、「おしどり贈与」と呼ばれる有名な特例で、この特例を利用して夫婦間で贈与を行われる方は多いです。但し、この特例を使用するためには贈与を行った翌年の確定申告の時期に、税務署に対して申告手続きを行う必要があるので注意が必要です。

「おしどり贈与」については、詳しくは以下の国税庁のHPを参照してください。

参考:夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|国税庁

3-2.「相続時精算課税制度」という特例で一時的に2,500万円まで無税

60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上の子又は孫に対する贈与であれば、2,500万円まで一時的に無税で贈与をすることが可能です。この特例を「相続時精算課税制度」と言います。特に、贈与するものの内容は問われず、現金でも土地でもなんでも大丈夫です。

但し、あくまで“一時的”に無税になるだけで税金がかからないわけではありません。将来、贈与をした父母や祖父母が亡くなりその財産を相続する際に、相続税の課税対象となります。言わば、税金の計算だけ“後回し”にできる制度です。制度の名称にあるように、「相続の時に精算をする」ということです。

ただ、この「相続時精算課税制度」を利用すると年間110万円の基礎控除が使える「暦年贈与」が行えなくなったりするというデメリットが生じることになりますので、使用する際には慎重に検討する必要があります。

「相続時精算課税制度」について詳しく知りたい方は、「まとまったお金をタダで贈与! 相続時精算課税制度の完全ガイド」を参照してください。

3-3.毎年複数回に分けて贈与することで110万円控除を繰り返し使う

年間110万円以内の贈与であれば贈与税がかかりません。これを利用して、毎年土地の贈与を複数回にわけてこまめに行うという方法があります。
そうすると、1,000万円の土地でも、10年間にわたって分割して贈与すると贈与税は無税で贈与することが可能です。

但し、贈与の度に専門家報酬を支払っていたのでは、おそらくトータルコストでは逆に高くついてしまうことも考えられますので注意が必要です。

実行される前、贈与税のことだけではなく、土地を生前贈与する際にかかるトータルのコストを計算してみてください。

【コラム】土地の生前贈与をするときの価格は相続税評価額
土地の生前贈与をするときの贈与税を計算するための土地の価格は相続税評価を用います。
相続税評価は、通常路線価から計算します。実際に売買する金額や固定資産税評価額とは異なるので注意が必要です。ただ、おおよその目安ですが、固定資産税評価額を1.14倍したものが相続税評価額に理論的にはなるように設定されています。

4.土地を生前贈与することのメリット・デメリット

なぜ、土地を生前贈与するのか、人それぞれ目的があると思いますが、ここでは土地を生前贈与した際のメリット・デメリットについて説明してみたいと思います。

メリットとしては大きく2つあります。一つは気持ちの問題です。ものを贈るということで、感謝の気持ちを伝えるという目的で土地を生前贈与される方は実際にいます。

もう一つは、相続税の節税です。前述の2,000万円まで無税で贈与できる「おしどり贈与」を行えば、贈与を行った人の相続財産から2,000万円分の財産が減ることになり、その部分の相続税の圧縮効果が得られます。

次に、デメリットですが、やはり諸経費でしょう。ここまで述べてきたように、登録免許税や不動産取得税、さらに贈与税や専門家の費用などがかかります。

ちなみに、土地を子供に渡す渡し方で生前に贈与する以外には、亡くなったタイミングで相続で渡すという方法もあります。具体的には「遺言書」を作成し、「この土地は、息子に相続させる」と書いておくことです。 そうすると、相続によって土地を取得したものにはまず不動産取得税がかかりません。かつ登録免許税も固定資産税評価額の0.4%で、生前贈与のときの2.0%と比べると大幅に低い税率となっています。さらに、贈与税よりも相続税の方が通常は税率が低くなっています。

このように、土地を生前贈与するにはメリット・デメリットをよく理解し諸経費のトータルをよく比較検討する必要があります。

5.まとめ

土地を生前贈与した際にかかる諸経費・税金について解説してきました。
金額の大きな土地を贈与する場合には、それに伴う税金や諸経費も多額にかかってきます。ただ、条件に当てはまればそれらを大幅に節約できる可能性もあります。
自己判断で土地を生前贈与するのではなく、やはり事前に税理士等の専門家に相談されることをお勧め致します。(提供:税理士が教える相続税の知識