上場企業の2018年10~12月期決算発表が佳境を迎えています。2/6(水)にはトヨタ自動車(7203)やソフトバンクG(9984)といった主力企業の発表が、さらに2/7(木)までには時価総額上位10社すべての発表が終わりました。2/8(金)には533社の発表となり、ここが社数ベースではピークになりました。
世界景気がピークアウトの様相を強める中、米中通商協議や英国のEU離脱(Brexit)などの不透明要因が増え、我が国の企業業績は踊り場を迎えつつあります。2/8(金)の東京株式市場では日経平均株価が大幅安となりましたが、決算発表を通じ、厳しい企業業績の全容が明らかになりつつあることが背景にあるとみられます。ただ、決算発表シーズンが一巡することで、その分リスクを取りやすくなることも確かです。また、業績で銘柄を選別し、ポートフォリオの入れ替えが本格化する季節になるという側面もありそうです。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、2018年10~12月期決算発表で「好決算」が発表され、市場の期待も高まっているとみられる銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。全体的な企業業績は明らかに減速感が強まっており、「好決算」と評価できる銘柄は多くないと考えられ、逆に「好決算」の銘柄は目立つかもしれません。
市場が注目しそうな意外な好業績銘柄とは!?
それではさっそくスクリーニングにより、2018年10~12月期決算発表で「好決算」が発表され、市場の期待も高まっているとみられる銘柄を抽出してみたいと思います。条件は以下の通りです。
(1)東証1部上場銘柄で、広義の金融やREIT、ETF等を除く業種であること
(2)時価総額1千億円以上の銘柄であること
(3)当四半期累計(2018年4~12月期)営業損益が黒字で前年同期比増益となっていること
(4)当四半期累計(2018年4~12月期)営業損益が事前の市場予想を10%超上回っていること
(5)当四半期(2018年10~12月期)が前年同期比増益で、その増益率が(3)の営業増益率を上回っていること
(6)市場予想営業利益が今期(2019年3月期)・来期(2020年3月期)ともに増益見通しとなっていること
表1は上記のすべての条件を満たした銘柄を、第3四半期の営業増益率(前年同期比)が高い順に並べたものです。
12/7(木)現在、当四半期累計(2018年4~12月期)では、経常利益が前年同期比2.6%増益、純利益が同2.9%減益(日経調べ)と計算されています。同じ日を基準としてSBI証券が集計したデータでは同四半期累計の営業利益は4%増益(この日発表された銘柄の一部を除く。あくまで参考値)でしたが、10~12月期は前年同期比2%減益でした。これらから、2018年は10~12月期にかけ、米中貿易摩擦の影響に世界経済のピークアウトが重なり、企業業績が急速に悪化したとみられます。
1/17(木)に第3四半期決算と通期業績の下方修正を発表した日本電産(6594)について、同社の永守会長は記者会見において「11月、12月に受注で尋常ではない変化が起きた」と述べています。電子部品大手6社の受注は2018年10~12月期に前年同期比3%減と、9四半期ぶりに減少しました。また、工作機械受注額は12月、中国向けが12月に前年同月比56.4%も減少しました。
今回のスクリーニングで抽出された銘柄は、(4)の条件をクリアしており、四半期累計の決算が事前の市場予想を上回っており、良い意味で「意外な」好業績銘柄となっています。しかも、(5)にもあるように、2018年10~12月期の増益率が加速傾向になっています。この四半期に減速する銘柄が多数派を占める中でやはり、「意外な」好業績銘柄と言えそうです。
表1:市場が注目しそうな意外な好業績銘柄とは!?
コード / 銘柄 / 株価(2/8) / 第3Q営業増益率 / 第3Q累計営業増益率 / 今期市場予想営業増益率 / 来期市場予想営業増益率
<9474> / ゼンリン / 2,735 / +116.4% / +116.4% / +15.6% / +16.2%
<4816> / 東映アニメーション / 4,705 / +45.4% / +45.4% / +31.8% / +7.1%
<2326> / デジタルアーツ / 8,030 / +43.7% / +43.7% / +36.1% / +29.6%
<2327> / 新日鉄住金ソリューションズ / 2,871 / +27.2% / +27.2% / +8.9% / +5.7%
<4549> / 栄研化学 / 2,450 / +22.1% / +22.1% / +25.6% / +17.3%
<9143> / SGホールディングス / 2,958 / +19.5% / +19.5% / +11.1% / +6.8%
<4114> / 日本触媒 / 7,190 / +1.8% / +1.8% / +4.0% / +12.6%
※会社公表データ、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。第3Qは2018年10~12月期、第3Q累計は2018年4~12月期のこと。営業増益率は前年同期に対する増益率で計算。市場予想はBloomberg集計の市場コンセンサス。今期は2019年3月期、来期は2020年3月期のこと。
抽出銘柄の投資ポイント
ここでは、表1に抽出した銘柄の一部について、業績・株価動向等に関し簡単にコメントを付けたいと思います。
ゼンリン(9474)は地図情報で圧倒的な存在感を誇っています。IoTや自動運転などの分野で、地図情報をどのように活用するかが課題となっています。2018年4~9月期の営業利益は738百万円(前年同期比57.0%増)でしたが、10~12月期は825百万円(同227.4%)となりました。カーナビ向けの好調に加え、IoT関連の売上も貢献したようです。
同社は1/29(火)に決算発表を実施し、好業績を好感され株価は同日終値2,594円から2/4(月)に一時2,856円と上昇しましたが、以降は跳ね返されてしまいました。12/4(火)高値を抜け切れなかったことが一因とみられ、今後押し目では買いが増える可能性がありそうです。
東映アニメーション(4816)は東映系のアニメ制作会社です。2018年4~12月期の営業利益は12,659百万円(前年同期比45.4%増)と好調です。『ドラゴンボール』の版権は海外が50%増、国内が21%増となっています。
1/28(月)に決算発表と業績予想上方修正を発表し、株価は同日終値4,220円から2/4(月)4,990円まで上昇しました。好業績はいったん織り込まれた可能性がありそうです。その後は押し目を形成していますので、押し目買いチャンスが接近してきそうです。
デジタルアーツ(2326)の主力製品は、ネットの有害情報を遮断したり、情報漏洩防止に役立ったりしています。第3四半期累計の営業利益は1,674百万円(前年同期比43.7%増)と好調。特に2018年10~12月期の営業利益は前年同期比163.6%増と加速気味でした。公共向け市場でメールフィルタリングソフトが好調に推移しました。
同社は1/31(木)に四半期決算を発表。株価は同日終値7,020円に対し、2/7(木)には8,250円まで上昇するなど、好業績の織り込みが進んでいます。なお、SBI証券企業調査部では、2/6(水)付で同社レポートを更新し、目標株価を8,000円から10,000円に切り上げています。
新日鉄住金ソリューションズ(2327)の第3四半期累計の営業利益は17,624百万円(前年同期比27.2%増)と好調でした。商号変更を控えている上に、事業体制強化を目論む、新日鉄住金向けが好調です。IoTやAIを活用したソリューションでグループ外の販路を拡大できるのも強みと言えそうです。
同社は2/1(金)に決算発表を実施。株価は2/4(月)に3,195円まで上昇しましたが、その後は伸び悩んでいます。ただ、下値には25日移動平均線が接近しています。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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