伝わらないのは本質が見えていないから

ジャパネットの代表を退任し、通販番組に出演しなくなってからも、髙田氏は日本各地の隠れた名産品を紹介する『髙田明のいいモノさんぽ』というお散歩番組にだけは出演している。そこには「伝えなければ、ないのと同じ」という想いがある。

「日本各地には、とても素晴らしい名産品や技術があり、生産者、職人の方がいて、多くの人には知られていないけれどいいものがたくさんあります。皆さん、頑張って伝えようとされているのですが、なかなか伝わらずにもどかしい思いをされていることもあると思うのです。なぜ伝わらないのかというと、何を伝えるのかという『本質』が見えていなかったり、生産者だからこそ気づいていない部分があるのではないかと思うのです。

本質というのは、根本的には作った人の想いそのものです。だから本来であればその想いを共有すればいいのですが、作った人が気づかない本質もあります。例えば、カタログの最後に小さく表記してあることが、消費者には魅力的なポイントであることもあります。

人は何を求めているのか、という視点は作り手が見失いがちなところです。ですから私は、日本各地を訪れ、その土地や商品の持つ魅力を引き出すお手伝いをしたい。今は昔と違い、ものや情報が溢れている時代。価格やデザインだけでは、なかなか人の心に響かないのです。その商品が持つ物語や歴史、職人の方々の想いなど、ものが持つ本質を伝えていくことが使命だと思っています」

髙田 明(たかた・あきら)[株]A and Live代表取締役/[株]ジャパネットたかた創業者
1948年、長崎県生まれ。大阪経済大学卒業後、機械製造メーカーへ就職し、通訳として海外駐在を経験。74年に父親が経営するカメラ店へ入社。86年に独立し[株]たかたを設立。90年のラジオショッピングを機に全国へネットワークを広げ、その後テレビ、チラシ・カタログなどの紙媒体、インターネットなどでの通販事業を展開。99年に㈱ジャパネットたかたに社名変更。2015年に社長を退任し、[株]A and Liveを設立。17年より、Jリーグ V・ファーレン長崎の代表取締役社長に就任。近著に『髙田明と読む世阿弥』(日経BP社)。≪写真撮影:江藤大作≫(『THE21オンライン』2019年1月号より)

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