生産は3ヵ月連続で低下し、市場予想を大きく下回る
経済産業省が2月28日に公表した鉱工業指数によると、19年1月の鉱工業生産指数は前月比▲3.7%(12月:同▲0.1%)と3ヵ月連続で低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲2.5%、当社予想は同▲3.0%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比▲4.0%と2ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比▲1.5%と3ヵ月ぶりに低下した。
1月の生産を業種別に見ると、アジア向けを中心に半導体製造装置、半導体電子部品の輸出が大きく落ち込んでいることを反映し、生産用機械(前月比▲9.8%)、電子部品・デバイス(同▲8.4%)が急低下したほか、供給制約の緩和によって18年末にかけて持ち直していた自動車工業(同▲8.6%)も大幅減産となった。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は18年10-12月期の前期比2.0%の後、19年1月は前月比▲8.0%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は18年10-12月期の前期比2.8%の後、19年1月は前月比▲1.9%となった。
18年10-12月期のGDP統計の設備投資は前期比2.4%と2四半期ぶりの増加となった。現時点では潤沢なキャッシュフローを背景とした設備投資の回復基調は維持されているが、好調を続けてきた企業収益はここにきて変調の兆しもみられる。先行きの設備投資は減速に向かう可能性が高いだろう。
消費財出荷指数は18年10-12月期の前期比▲0.8%の後、19年1月は前月比0.5%となった。耐久消費財が前月比▲6.7%(10-12月期:同4.5%)と大きく落ち込んだが、非耐久消費財が前月比4.0%(10-12月期:同▲3.7%)の高い伸びとなった。
18年10-12月期のGDP統計の民間消費は前期比0.6%と2四半期ぶりの増加となったが、1月の消費関連指標は、本日公表された商業動態統計の小売業販売額をはじめとして弱めのものが多い。雇用所得環境は改善を続けているものの、消費者マインドの弱さが消費の下押し要因となっている。1-3月期の民間消費は前期比でほぼ横ばいにとどまることが見込まれる。
戦後最長景気は確定せず
製造工業生産予測指数は、19年2月が前月比5.0%、3月が同▲1.6%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(1月)、予測修正率(2月)はそれぞれ▲4.5%、▲2.3%であった。1月の実現率のマイナス幅は、豪雨、台風、地震などの影響で生産計画が大幅に下振れした18年7~9月を上回る大きさとなった。
19年1月の生産指数を2、3月の予測指数で先延ばしすると、19年1-3月期は前期比▲1.4%となる。19年1-3月期が2四半期ぶりの減産となることは確実で、実際の生産が計画を下回る傾向が続いていることを割り引くと自然災害の影響で大きく落ち込んだ18年7-9月期の水準を下回る公算が大きい。1、2月の生産は中華圏の春節の影響で振れが大きくなりやすく、基調を見極めるためには1、2月分を均してみる必要があるものの、海外経済の減速に伴う輸出の低迷を背景に、鉱工業生産は実勢として弱い動きとなっている可能性が高い。
茂木経済財政政策担当大臣は、1月の月例経済報告後の記者会見で「今回の景気回復期間が19年1月で戦後最長になったとみられる」と表明したが、鉱工業生産などの19年1月の経済指標の結果を見る限り、戦後最長の更新は持ち越しとなった。
景気動向指数の一致指数に採用されている9系列のうち、鉱工業生産指数をはじめとした過半数の系列が18年10月までにピークをつけている。鉱工業生産指数については19年1月の水準が直近のピーク(18年10月)より▲4.8%も低い。2月の予測指数は前月比5.0%の高い伸びとなっているが、実際の生産が計画から下振れする傾向があることを考慮すると、18年10月の水準を上回るまでには時間がかかるだろう。戦後最長の景気回復が幻に終わる可能性も否定できない。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任
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