「ティール組織」と呼ばれる組織形態が現在、注目を集めています。本稿では、一人ひとりが目的意識とプロジェクトや集団ごとに価値を見出すことで、社員全員が自主的に動き出す新時代のマネジメント「ティール組織」について説明します。
ティール組織とは
ティール組織は、元マッキンゼー・アンド・カンパニーに在籍していた「フレデリック・ラルー」が提唱した新しいマネジメントの形態です。ティール組織は柔軟で多様性のある組織づくりを目指すことが特徴です。このため、とりわけ日本のような膠着化しやすい組織制度において大きな反響を呼んでいます。
現在、世界中のほとんどの企業が、上意下達のピラミッド型構造をなし、競合に勝つことへのプレッシャーなどを社員にかけつづけることでモチベーションを維持しています。しかしそれらの原動力は「恐怖」であり、社員はいつしか疲弊してしまいます。
ティール組織はその真逆です。ティール組織は常に「存在目的」を重視します。ティール組織では、社員個々人が常に「それは組織に有益であるか? また自分は何を目的としているのか」を問い続けます。その結果、人生や全人格をも含めた社員という一人の人間と組織の目的が合致するとき、社員は自主的にその真価を企業に発揮するというものです。
ティール組織は新時代のマネジメント
ティール組織は現在における最新の組織形態であるといっても過言ではありません。なぜなら、ティール組織は過去の組織形態からの歴史的推移を研究した上で、その制度を成立させようとしているためです。
ティール組織で述べる組織の歴史には、力と暴力・そしてエゴイズムだけが支配する原始時代。階級制度によって身分が分けられる中世的・軍隊的な時代。複雑な組織で絶え間なくイノベーションを繰り返してゆく工場的な時代。そしてCSRなどに代表されるような柔軟で多様性のある貢献的な時代と分類し、またそれぞれにおける問題点を指摘しています。そしてそれらの問題をクリアするための組織形態を提唱したのです。
ティール組織3つのポイント
ティール組織は「自分は今、ここで何ができるのか」と「組織」とが重なった場所を社員が見出してゆくことでその真価を発揮します。
しかし、例えば「クレド」の一部を既に採り入れている企業も、世界には数多く見つけることができるでしょう。ティール組織は、その真価を発揮するための3つのポイントを明確にしたことに意義があります。では、その3つのポイントとはどのようなものでしょうか。
セルフマネジメント
ティール組織は従来型組織のような上意下達ではありません。階級的ではなく、上司が与えるプレッシャーなどを捨て去るかわりに、社員一人ひとりが自主的に意思決定をしてゆきます。例えばそれは業務時間であったり、もしくは予算などの場合もあるでしょう。
ホールネス
世界のほとんどの企業では、社員はその人格の一部のみをビジネスの現場に表わしているに過ぎません。ティール組織ではその逆で、ときに少々非合理的であったり、感情的であったりしても、社員が一人の人間として全人格をビジネスの現場に表すことを推奨しています。つまり、自然体でいることの方が、ビジネスにおいても人はその真価を発揮できると言うことを述べているのです。
エボリューショナリー・パーポス
ティール組織の中核となるものがエボリューショナリー・パーポス(存在目的)です。自分が今何をしようとしているのか。どうしてこのビジネスをしているのかを問い、そしてその意味と組織の存在価値とを一致させることで、これまでよりも自主的に動き出すことができるようになるのです。
労働から人へ
ティール組織は一見すると、CSRを重視した組織形態と似ているように見えるかもしれません。しかしCSRを基準にすると、いわゆる「ゆるい」組織になりがちです。ティール組織はあくまでも自分の価値と、企業や組織とをどう密着させるかに重きが置かれています。
そのためには、指示者はこれまで以上に人として社員と対話することが求められます。ティール組織は新しい時代の組織形態です。将来における「働き方改革」による制度改革も踏まえて、少しずつでも取り組んでみてはいかがでしょうか。
(提供:みらい経営者 ONLINE)
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