2017年の婚姻件数は約60万件、対して離婚件数は21万件と3組に1組が離婚している計算です。もはや他人事ではありません。

ところで、離婚時には金銭的な問題を解決しなければなりません。夫婦間におけるお金のやり取りで主なものは、慰謝料(婚姻破綻要因を作った側が支払う損害賠償金)、養育費(未成年の子供の学費・生活費に関する別居側の負担分)、そして今回取り上げる負担分です。

今回は、財産分与に充てる財産別に税金がかかるケースを検証し、如何にして節税を測るかについて考察します。

財産分与をもらった側に税金はかからない

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(画像=sebboy12 / Shutterstock.com)

例えば、夫名義で貯めていた預貯金を離婚時の財産分与で妻名義に変更したとしても、妻に贈与税はかかりません。なぜかといえば、こうした財産分与は単に「夫婦の共有財産を分ける」に過ぎず、贈与には当たらないからです

たとえ夫名義の貯金でも夫婦の協力で築いてきた財産は共有財産であり、妻側には離婚に伴う所有権の清算と将来の生活保障分として、当然請求する権利が生じます。

ちなみに専業主婦であっても、財産分与の権利は変わりません。財産分与では「どちらが稼いだ」ではなく「協力して財産を築いた」との考え方に拠っているからです。

過度な財産分与は贈与税が課される?

では、適正な財産分与の割合はどの程度でしょうか?トップアスリートやIT企業オーナーなど高年収の場合は例外もあるようですが、一般的には2分の1とされています。

ただし、分与すべき財産からは特定財産(結婚前から夫・妻が所有していたまたは親などからの相続や生前贈与で得た財産、別居状態など婚姻関係が破綻した後にできた財産)を除きます。

では2分の1に相当する部分を超える財産分与が行われると、直ちに贈与税が課されるのでしょうか? 確かに税法(基本通達)にはその旨が記載されていますが、実態としてはたとえ財産分与が過大だとしても課税されるとは一概には言えないようです。

離婚の財産分与は共有財産の清算要素だけでなく、慰謝料的要素や将来の扶養的要素も絡んでおり、「2分の1を超えたから贈与税を課します」といった行為に及ぶのには税務署も慎重なのです。

ただし、贈与税は逃れたものの、滞納処分に分与財産が充てられたケースはあります。元夫から受けた2分の1を超える財産分与(土地)について贈与認定を受けなかった一方で、元夫が税金を滞納したために、その土地は税務署に収納(没収)されてしまいました。

財産分与する側には税金がかかる

離婚に伴い夫が名義の土地を妻に財産分与した場合、なんと分与した夫側に税金が課されます。例えば2,000万円で購入した土地の時価が3,000万円なら、3,000万円-2,000万円=1,000万円を譲渡益として分離課税の譲渡所得税が課されます(譲渡費用等は計算より割愛)。

ちなみにこの場合、所有期間5年超の土地は長期譲渡所得として20.305%の税率が課され、5年以下の土地は短期譲渡所得として39.63%の税率が課されます。

ちなみにマイホームを売却した場合の特例(3,000万円特別控除)の特例は、財産分与に対しては適用を受けることができません。親子間・夫婦間の取引に関しては、特例は適用されないのです。

「離婚に伴う財産分与に対し課税されるのは不合理ではないか」そういった声があるのは確かで、現実に国税不服審判や裁判にも持ち込まれています。

その主張は「財産分与は共有財産を分割する行為であり財産分与には当たらない」とするものですが、行政・司法の壁は厚いようです。

昭和53年に原告側主張を一切退ける最高裁判決が出されて以降、審判所採決でも「財産分与に対して譲渡所得課税する」方向性は変わっていません。

今までの住まいを財産分与するのなら、むしろ住まいを第三者に売却の上で現金化し、夫婦で分けるのが得策かもしれません。その場合なら、条件次第で3,000万円特別控除の適用を受けることができ、結果的に節税につながります。

文・J PRIME編集部(提供:JPRIME


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