貿易収支(季節調整値)は再び赤字へ

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財務省が4月17日に公表した貿易統計によると、19年3月の貿易収支は5,285億円と2ヵ月連続の黒字となり、事前の市場予想(QUICK集計:3,800億円、当社予想は3,925億円)を上回る結果となった。輸出が前年比▲2.4%(2月:同▲1.2%)と減少幅が拡大する一方、輸入が前年比1.1%(2月:同▲6.6%)と3ヵ月ぶりに増加したため、貿易収支は前年に比べ▲2,557億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲5.6%(2月:同▲0.6%)、輸出価格が前年比3.4%(2月:同▲0.6%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比0.4%(2月:同▲6.5%)、輸入価格が前年比0.7%(2月:同▲0.1%)であった。

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季節調整済の貿易収支は▲1,778億円(2月:265億円)と2ヵ月ぶりの赤字となった。輸出が前月比▲1.0%と減少する一方、輸入が前月比2.1%の増加となったことが貿易収支の悪化につながった。2月の貿易収支は、中華圏の春節の影響で1月が大幅な赤字となった反動で黒字となったが、3月は再び赤字となった。貿易収支(季節調整値)は基調として赤字が続いている。

3月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=65.6ドル(当研究所による試算値)となり、2月の62.5ドルから上昇した。足もとの原油価格(ドバイ)は70ドル程度まで上昇しているため、通関ベースの原油価格は4月に70ドル近くまで上昇した後、5月には70ドル台となることが見込まれる。輸出の低迷が続く中で、原油高により輸入金額が膨らむことから、貿易収支(季節調整値)は赤字が継続する可能性が高い。

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アジア向け輸出の減少ペース拡大

19年3月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比0.3%(2月:同4.1%)、EU向けが前年比4.8%(2月:同4.7%)、アジア向けが前年比▲8.0%(2月:同▲1.3%)となった。

1-3月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比2.6%(10-12月期:同4.3%)、EU向けが前期比▲1.7%(10-12月期:同5.0%)、アジア向けが前期比▲4.5%(10-12月期:同▲1.8%)、全体では前期比▲2.5%(10-12月期:同0.0%)となった。

米国向けは堅調を維持したが、景気減速が鮮明となっているEU向け、アジア向けが減少した。特に、アジア向けは18年1-3月期以降、5四半期連続で前期比マイナスとなっており、19年1-3月期は半導体電子部品などのIT関連の落ち込みを主因として減少幅が大きく拡大した。なお、中国向けの輸出数量指数(当研究所による季節調整値)は18年10-12月期の前期比▲2.8%から19年1-3月期は同▲6.9%へ減少幅が急拡大した。

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日本の輸出数量に対して先行性のあるOECD景気先行指数(OECD+非加盟主要6カ国)は18年入り後低下傾向が続き足もとでも下げ止まっていないが、低下ペースはこのところ緩やかとなっている。また、輸出減少の主因となっている中国経済は下げ止まりの兆しも見られる。欧州経済は減速局面が続いており、好調が続いていた米国経済も減速しつつある。このため、輸出が全体として17年のような勢い取り戻することは期待できないが、中国経済の持ち直しに伴い19年度入り後には輸出の減少に歯止めがかかる可能性があるだろう。

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なお、1-3月期の輸入数量指数(当研究所による季節調整値)は、前期の高い伸びの反動や国内需要の弱含みから、前期比▲2.8%(10-12月期:同2.7%)と2四半期ぶりに低下した。

1-3月期の外需寄与度は0.3%程度のプラスに

3月までの貿易統計と2月までの国際収支統計の結果を踏まえて、19年1-3月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比▲2%程度の減少、輸入が前期比▲3%台半ばの減少となった。輸入の減少幅が輸出の減少幅を上回ることにより、1-3月期の外需寄与度は前期比0.3%(10-12月期:同▲0.3%)と4四半期ぶりのプラスとなることが予想される。

当研究所では鉱工業生産、建築着工統計等の結果を受けて、4/26のweeklyエコノミストレターで19年1-3月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、設備投資が減少に転じることなどから国内需要は弱めの動きとなるが、外需が成長率を押し上げることから、前期比年率ゼロ%台のプラス成長を予想している。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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