コアCPI上昇率は前月から0.1ポイント拡大

消費者物価
(画像=PIXTA)

総務省が4月19日に公表した消費者物価指数によると、19年3月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.8%(2月:同0.7%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:0.7%、当社予想は0.8%)を上回る結果であった。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.4%(2月:同0.4%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。生鮮食品が前年比▲6.0%(2月:同▲11.0%)と下落幅が縮小したため、総合は前年比0.5%(2月:同0.2%)と上昇率が前月から0.3ポイント拡大した。

コアCPIの内訳をみると、電気代(2月:前年比7.7%→3月:同7.3%)の上昇幅は縮小したが、ガス代(2月:前年比6.2%→3月:同6.3%)、灯油(2月:前年比1.6%→3月:同2.5%)の上昇幅が拡大し、2月に2年3ヵ月ぶりの下落となったガソリン(2月:前年比▲1.3%→3月:同1.3%)が再び上昇に転じたことから、エネルギー価格の上昇率は2月の前年比4.5%から同5.1%へと拡大した。

その他の品目では、食料(生鮮食品を除く)の上昇率が2月の前年比0.6%から同0.8%へと高まった。人手不足に伴う人件費増を背景に外食が18年7月以降、前年比1%台(3月は1.1%)と高めの伸びが続けていることに加え、3月は菓子類が前年比0.6%(2月:同▲0.2%)と上昇に転じた。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

一方、宿泊料、外国パック旅行の上昇幅縮小などから、教養娯楽の上昇率が2月の前年比1.4%から同0.9%へと鈍化したことがコアCPIを押し下げた。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.41%(2月:0.36%)、食料(生鮮食品を除く)が0.18%(2月:0.14%)、その他が0.25%(2月:0.20%)であった。

食料品中心に上昇品目数が増加

消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、3月の上昇品目数は280品目(2月は268品目)、下落品目数は179品目(2月は188品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は53.5%(2月は51.2%)、下落品目数の割合は34.2%(2月は35.9%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は19.3%(2月は15.3%)であった。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

マヨネーズ、プリン、チョコレート、コーヒー飲料など食料品で下落から上昇に転じる品目が目立っている。

コアCPI上昇率は鈍化へ

コアCPI上昇率は、エネルギー価格の上昇幅縮小をその他の品目の上昇幅拡大が打ち消す形で、ゼロ%台後半の推移が続いている。原油価格(ドバイ)は18年末に50ドル程度まで下落した後、足もとでは70ドル程度まで上昇している。このため、ガソリン、灯油の上昇率は再び高まっているが、原油価格の動きが遅れて反映される電気代、ガス代は上昇率の鈍化傾向が続き、エネルギー価格の上昇率は19年夏頃には前年比でほぼゼロ%となる可能性が高い。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

また、サービス価格との連動性が高い賃金は伸び悩みが続いているが、19年の賃上げ率は前年を若干下回ることが見込まれる。

外食、食料品を中心に原材料費、物流費、人件費などのコスト増を価格転嫁する動きが一部に見られるが、物価全体への影響は今のところ限定的である。コアCPI上昇率はエネルギー価格の上昇幅縮小を主因として夏場にかけてゼロ%台半ばまで鈍化する可能性が高い。

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

【関連記事 ニッセイ基礎研究所より】
貿易統計19年3月-輸出は低迷が続くが、輸入の大幅減少から1-3月期の外需寄与度は前期比0.3%程度のプラスへ
鉱工業生産19年2月-4ヵ月ぶりの上昇も基調は弱く、景気後退の可能性は残る
景気後退は回避できるのか