各界で活躍する超一流の人材を数多く輩出する米アイビーリーグのイェール大学やハーバード大学。ずば抜けて質の高い教育を財政面から可能とする大学財団の資産運用でも、年率10%を上回るリターンで超一流の成果を出している。

そのパフォーマンスの高さの理由は「エンダウメント投資」にあると言われるが、どのようなものなのか。また、個人投資家が学べる考え方や手法はあるのだろうか。

エンダウメント投資とは ?

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(写真=PIXTA)

エンダウメント投資とは、主に卒業生や父兄などの寄付で築いた大学の巨額資産を「投資のプロ」の手にゆだねて大きく増やし、高等教育機関に必須の質の高い教授陣、イノベーションを育む施設群、優秀な学生を確保するための給付型奨学金の原資など、大学を持続的に発展させるお金を確保することが目的の活動である。

たとえば、ハーバード大学が2018年度に受領した寄付金は史上最高の14億ドル (約1,582億円、1ドル113円換算。以下同) であった。こうしたお金を元手にして、学生や教授陣の能力を開花させる大学の使命を支援する社会性の高い投資がエンダウメントだ。

そのため、リスク選好型の投資とは違い、安全性を重視して運用することが多い。一般的にはリスクの低い投資の利潤は低く、高リスクの運用は危険度が増すがリターンも高いものだ。

ところが、米『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、2018年度においてイェール大学は資産が前年比12.3%増、スタンフォード大学は11.3%増、最も振るわなかったハーバード大学でさえ10.0%増など、安全性を重視した運用にもかかわらず、米優良株で構成されるS&P 500株式指数に基づいて「株式60%、債券40%」の割合で投資するポートフォリオの成績である8.4%を上回った。

この結果、ハーバード大学のエンダウメント資産残高は392億ドル (約4兆4,296億円) 、イェール大学は294億ドル (約3兆3,222億円) など、知的活動を加速できる潤沢な資金を確保できている。

高パフォーマンスの理由は ?

なぜ比較的低リスクでハイリターンという、投資の常識に反するような成績が叩き出せるのか。大きな理由はヘッジファンドや投資信託と違い、寄付などでまかなわれる運用基金は支援者に返済する必要がなく、市場の一時的な上げ下げで狼狽売りや利食いを急ぐ動機が低くなるからだ。じっくり構えた長期的な保有が、安定した高利回りを可能にする。

また、ポートフォリオの内容を広範に分散させるのもエンダウメント運用の特徴だ。ハーバード大学の2018年度の資産運用構成比率を見ると、未上場企業の株式である「プライベート・エクイティ」が全体の16%を占め、資産額の伸びが前年比21%の85億ドル (9605億円) と好成績。一方、全体の31%と最も比率の大きい「公開株式」は14%のリターンをもたらした。

さらにエンダウメントでは、ポートフォリオの内容は柔軟に増減できる。2018年度中にハーバード大学は「天然資源資産」の保有を6億ドル (約678億円) 減らし、同様に「不動産資産」も10億ドル (約1,130億円) 相当を売却、40億ドル (約4,520億円) 分まで縮小して資産全体の13%とした。こうしたなか、「ヘッジファンド」の保有は80億ドルから129億ドル (約1兆4,577億円) まで増やして全体の21%にするなど、高リスク資産への傾倒を若干深めている。

秘訣は「腕前の良いプロに任せる」

イェール大学やハーバード大学の運用成績が良い理由は、運用を「優秀な投資家」に任せているという側面もある。これらの成績優秀な運用者には系譜があり、現在ハーバード大学の運用責任者であるN. P.ナーベカール氏もスタンフォード大学の責任者のロバート・ウォレス氏も、「ニューヘイブン (イェール大学所在地) の賢人」と呼ばれるエンダウメントのプロ、デイビッド・スウェンセン氏の「弟子」なのだ。このスウェンセン氏こそ、「イェール投資モデル」を使って過去20年間の年平均運用成績を11.8%と、同期間の全米大学平均の6.8%を大幅に上回るレベルに押し上げた功労者である。

このように見てくると、個人投資家がエンダウメント投資の手法に学べる点が多いことがわかる。長期的な目標を定めたら動じずに確実なリターンを狙うこと、ポートフォリオを多様化・分散させる一方で柔軟に構成要素の増減を行うこと、評判の良いプロに運用を任せることなどである。その根底にあるのは、大学財団のように「投資目的に社会性を持たせる」考え方かもしれない。(提供:大和ネクスト銀行

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