久々の資金流入
2019年5月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、外国債券以外全ての資産クラスで資金流入となった【図表1】。特に、バランス型が1年ぶりに1,500億円を超える資金流入があり、最も流入が大きかった。加えて、4月にそれぞれ2,500億円を超える資金流出があった国内株式と外国株式も、5月は国内株式が700億円程度、外国株式が1,400億円程度の資金流入に転じた。また、国内REITは高値警戒感からか資金流入がやや4月から鈍化したものの、外国REITは今年1月以来、4カ月ぶりに小額であるが資金流入に転じた。外国債券も資金流出ではあったが、4月と比べて大幅に鈍化した。
ファンド全体でみると、4月の6,000億円を超える資金流出から一転して5月は3,900億円と資金流入となった。今年1月以来の資金流入であり、投信販売が低迷しだした昨年11月以降で5月は最大の資金流入であった。
明暗が分かれた内外株式ファンド
内外株式ともに大きく下落する中、国内株式、外国株式ともに5月は資金流入に転じた。ただ、国内株式と外国株式で明暗が分かれた。国内株式は外国株式と比べて、流入金額が半分以下だったことに加え、アクティブ・ファンドに限ると資金流出が続いていたためである。
国内株式では、インデックス・ファンドに800億円に迫る資金流入があり、全体でみても700億円程度の資金流入に転じた。ただ、アクティブ・ファンドは4月と比べて鈍化こそしていたが、300億円を超える資金流出があった。インデックス・ファンドへの資金流入はタイミング投資の側面が強く、国内株式ファンドの販売は引き続き低迷していたとみることができる。
その一方で外国株式は、テーマ型を含むアクティブ・ファンドを中心に大規模な資金流入があり、販売が復調してきたようにみられた。実際に5月に資金流入が大きかったファンドをみると、6本(赤太字)が外国株式のアクティブ・ファンドであった【図表2】。特に5月に新設された「ティー・ロウ・プライス 世界厳選成長株式ファンド」は4コース(為替ヘッジの有無×分配金の有無)合計で700億円もの投資家の資金を集めた。
では、なぜ国内株式と外国株式で明暗を分けたのであろうか。特に資金を集めた外国株式のアクティブ・ファンドの販路は証券会社の対面販売が主であることが推察される。そのため、証券会社の対面販売で大々的に外国株式のアクティブ・ファンドを推していたということもありえる。ただ、それに加えて国内株式と比べて外国株式の方が内外の金融政策の違いによってやや楽観視できたこともあるだろう。
外国株式、特に米国株式については、米国経済が下ぶれした場合に利下げに動き株価を下支えしてくれる、いわば「パウエル・プット」への期待感があった。その一方で国内株式は、日銀が新たな株価を下支えするような政策を打ち出しにくく、さらに米利下げが円高を誘発し株価の重しとなる可能性も考えられていた。そのため、株価はともに下落していたものの国内株式よりは米国株式を中心に外国株式のほうが楽観視しやすかったと思われる。
ただ、5月は米中問題の深刻化や長期化、さらに世界景気の減速などが懸念される中、内外問わず株式に投資することを敬遠する投資家も多かったと思われる。そのような投資家の資金の受け皿になったため、5月は外国債券の資金流出が鈍化し、外国REITの資金流出が止まり、さらにはバランス型の資金流入が大幅に増加した可能性がある。
5月は資産分散効果があった
バランス型ファンドは、集中投資を行っている株式ファンドと比べて資産分散しているため相対的に価格変動リスクが小さくなることが期待できる。
バランス型ファンドのパフォーマンスを外国株式ファンドと比較してみる【図表3】。5月(縦軸)はほとんどのバランス型ファンド(◇印)が外国株式ファンド(○印)と同様に下落していたが、下落幅は外国株式と比べて小さい傾向があった。外国株式ファンドは、総選挙の結果を好感したインド株式ファンド(【図表4】赤太字)などが例外的に上昇したが、5月に5%以上下落したファンドも多かった。その一方でバランス型ファンドは大きく下落したファンドでも下落幅は5%程度であり、資産分散の効果があったことが分かる。
バランス型ファンドは、今年の1-4月(横軸)のように株価の上昇局面では株式ファンドよりもパフォーマンスが劣後する傾向もあり、一長一短ある。ただ、米中問題や世界経済の先行き不透明感はなかなか払拭されない可能性が高い。ゆえに、株価下落、つまり守りを意識する投資家が多い状況であるため、当面はバランス型ファンドの人気が続くかもしれない。
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前山裕亮(まえやまゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員
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