コアCPI上昇率は前月から0.1ポイント縮小

消費者物価
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総務省が6月21日に公表した消費者物価指数によると、19年5月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.8%(4月:同0.9%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:0.7%、当社予想は0.8%)を上回る結果であった。

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生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.5%(4月:同0.6%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。生鮮食品が前年比▲0.1%(4月:同▲0.3%)と7ヵ月連続で下落し、総合は前年比0.7%(4月:同0.9%)と上昇率が前月から0.2ポイント縮小した。

コアCPIの内訳をみると、ガソリン(4月:前年比2.2%→5月:同2.8%)、灯油(4月:前年比3.0%→5月:同5.1%)の上昇幅は拡大したが、既往の原油安の影響から、電気代(4月:前年比5.8%→5月:同3.6%)、ガス代(4月:前年比5.5%→5月:同4.8%)の上昇幅が縮小したことから、エネルギー価格の上昇率は4月の前年比4.6%から同3.7%へと縮小した。

一方、食料(生鮮食品を除く)の上昇率は4月の前年比0.9%から同1.0%へと高まった。人手不足に伴う人件費上昇を背景に外食が18年7月以降、前年比1%台の伸びが続いていることに加え、原材料費上昇の影響から、菓子類(4月:前年比0.9%→5月:同1.8%)、麺類(4月:前年比0.9%→5月:同1.2%)の上昇率が高まった。

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一方、10連休の効果剥落により宿泊料(4月:前年比3.8%→5月:同▲0.2%)、外国パック旅行(4月:前年比15.1%→5月:同6.6%)の伸びが大きく低下した。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.30%(4月:0.37%)、食料(生鮮食品を除く)が0.23%(4月:0.21%)、その他が0.26%(4月:0.31%)であった。

下落品目数が3ヵ月連続で減少

消費者物価
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消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、5月の上昇品目数は296品目(4月は296品目)、下落品目数は168品目(4月は171品目)となった。上昇品目数は前月と変わらなかったが、下落品目数が3ヵ月連続で減少した。上昇品目数の割合は56.6%(4月は56.6%)、下落品目数の割合は32.1%(4月は32.7%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は24.5%(4月は23.9%)であった。

食料品に加え、電子レンジ、電気冷蔵庫、電気掃除機などの家庭用耐久財、テレビ、ビデオカメラなどの教養娯楽用耐久財でも上昇品目が増えている。

コアCPI上昇率は夏場にかけてゼロ%台前半へ

5月のコアCPIはエネルギー価格の上昇率鈍化、10連休による押し上げ効果の剥落から上昇率が鈍化した。

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原油価格(ドバイ)は18年末の50ドル程度から70ドル程度まで上昇した後、足もとでは60ドル台前半で推移している。電気代、ガス代は上昇率の鈍化傾向が続いているが、このところ上昇率が高まっているガソリン、灯油も6月にはマイナスに転じることが見込まれる。エネルギー価格の上昇率は夏場にかけて前年比でマイナスとなる可能性が高い。

外食、食料品を中心に原材料費、物流費、人件費などのコスト増を価格転嫁する動きが一部に見られるが、物価全体への影響は今のところ限定的である。

コアCPI上昇率はエネルギー価格の下落、携帯電話通信料の大幅低下などから、夏場にかけてゼロ%台前半まで鈍化することが予想される。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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