2019年6月に金融庁が発表した報告書に登場した、「老後2,000万円不足説」は大きな波紋を広げました。その直後に財務大臣が報告書の受け取りを拒否するなど内閣は火消しに追われましたが、金融庁がそのような認識を持っていることを知らしめる結果となりました。

年金だけで老後の生活費をまかなえると本気で考えている人は少ないと思いますが、いざ2,000万円も不足するという試算結果を突きつけられたことで、衝撃を受けた人も多いのではないでしょうか。

国がどれだけ否定しようとも、世に出てしまった2,000万円という数字。老後破産を回避して安心できる老後生活を送るために、現役世代のうちにやっておくべきことを解説したいと思います。

金融庁の報告書は何が「衝撃的」だったのか

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(画像=Min C. Chiu/Shutterstock.com)

大きな波紋を広げている「老後2,000万円不足説」は、金融庁が発表した報告書に記載されています。夫婦2人が95歳まで生きるためには2,000万円の金融資産を保有してそれを切り崩していく必要があると提言されており、その金額の大きさゆえに注目を浴びたのです。

総務省が集計・発表している2018年の「家計調査報告」によると、平均貯蓄額は1,752万円であり、平均さえも2,000万円を下回っています。貯蓄保有世帯の中央値は1,036万円であり、老後に不足するとされる2,000万円の約半分しかありません。

貯蓄がある世帯だけでもそのデータになるのですから、貯蓄ゼロの世帯も含めると大多数の人が衝撃を受けたことは言うまでもありません。

人生100年時代を前提にする必要性

先ほどの金融庁の報告書の内容は、95歳まで生きる想定で算出されています。毎月約5万4,000円不足し、それが95歳までの30年間で2,000万円になるというのが根拠です。この想定からも分かるように、資産形成を考える際には、今や人生100年時代となっていることを鑑みる必要があります。

ライフプランで自分が亡くなると想定した年齢になる前に亡くなれば、貯蓄が底をつくことはないかもしれませんが、その逆はリスク要因です。仮に75歳まで生きる想定で老後資金の手当てをしていた人が80歳まで生きたとすると、最後の5年間はお金に苦労することになります。うまく対処できなければ、最悪の場合、老後破産状態になる恐れもあります。

つまり、老後に向けて資金計画を立てる際には、自分が考えるよりも長く生きることを想定する必要があるということです。金融庁も報告書を作成する際に、人生100年時代を意識してそれに近い95歳を想定したのでしょう。

現役期の資金計画がますます重要になる

同報告書は、単に「95歳まで生きると2,000万円不足する」と述べているだけではなく、それに対して現役世代のうちに資産形成に取り組むべきと提言しています。これまでは預貯金で老後に備えて年金の足しにするという考え方が主流でしたが、今後は積極的に資産運用や投資などによって現役世代のうちから資産形成をしておくべきという新しい視点が盛り込まれているのが印象的です。

しかしこれは、すでに多くの人が実感として持っていることだと思います。年金があてにならないと考える人は多いでしょうし、そもそも将来、年金制度が破綻しているかもしれないと考える人もいます。年金だけに依存するのではなく、自分で何らかの手当てをしておくべきという「新常識」に、金融庁がお墨付きを与えただけと捉えることもできます。

では、具体的に今からどうすればいいのでしょうか。現役世代のうちにできることとして推奨されているのが、積立による資産形成です。少額であっても積立期間が長くなれば老後資金も大きくなります。つみたてNISAやiDeCoといった税制優遇があることからも、老後に向けて自助努力をするべきという国の方針性が垣間見えます。

「老後に働かなくても暮らせるように年金を納めてきたのに約束が違う」という意見もあるでしょう。しかし、少子高齢化が進むことで年金財政がひっ迫することは、政治的な意見を差し引いても明白な事実です。まずは今始められることからやってみること、それが老後への不安を解消する第一歩となるのです。(提供:YANUSY

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