先月までの動き
先月の年金事業管理部会では、日本年金機構から提出された2018年度実績報告と中期業務実績報告書の案について、質疑や委員からの意見具申などが行われた。また、6月27日の同部会では、同日午前に公表された平成30年度の国民年金の加入・保険料納付状況についての説明と質疑も、行われた。
○社会保障審議会 年金事業管理部会
6月11日(第43回) 日本年金機構の平成30年度業務実績及び第2期中期目標期間の業務実績、他
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000213396_00007.html (資料)
6月27日(第44回) 日本年金機構の平成30年度業務実績及び第2期中期目標期間の業務実績、他
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05476.html (資料)
【想定される今後の予定】
・7月5日 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 決算公表(例年7月第1金曜日)
・7~8月 内閣府 中長期の経済財政に関する試算 公表
・9月 働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会 (厚生年金適用拡大) とりまとめ
ポイント解説:国民年金保険料の納付状況
先月の年金事業管理部会では、国民年金保険料の納付状況などが議論された。本稿では、関連資料も確認しながら、制度や状況、課題について確認する。
●制度:国民年金保険料の対象者には、自営業のほか無職など多様な人々が混在
日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人は国民年金の加入者(被保険者)となり、基礎年金を受給できる(1)。国民年金の被保険者は第1~3号の3種類に区分されており、第2号は厚生年金の加入者(会社員や公務員)、第3号は第2号の被扶養配偶者(専業主婦(夫))で、それ以外は第1号となる。基礎年金に必要な費用のうち第2~3号の分は厚生年金制度から拠出されており、国民年金保険料の対象は第1号のみである。
第1号には第2~3号以外のすべてを含むため、多様な人々が混在している。近年では、雇用者(雇われている人)が約4割、無職が約3分の1で、自営業は約4分の1となっている(図表2)。無職も対象であるため、本人や世帯の所得状況等によっては保険料の免除や猶予を受けられる(2)。
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(1)ただし、老齢基礎年金の受給には10年以上の加入が必要など、一定の要件がある。
(2)免除された場合は、将来の年金額が少なくなる(例:保険料全額を免除された場合、免除期間分の年金額は納付した場合の半額)。将来の低年金化を懸念して、メディアでは免除や猶予を分母に含んだ納付率を伝えているが、日本年金機構の目標としては免除や猶予を除いた納付率の向上になろう。また、将来の低年金化を考える際には、ある個人が現役期間に国民年金の第1号被保険者になる期間や、免除を受ける期間などの長さについて考慮する必要がある。例えば、2017年に65歳に達した受給権者のうち加入期間のすべてが第1号被保険者であった人は約4%にとどまる。
●状況:納付率は改善傾向
保険料の納付期限は対象月の翌月末だが、2年以内なら遡及して納付できる。保険料の納付率(免除や猶予を分母から除外した率)は、納付対象月の年度内でも2年度後でも、全国的に上昇傾向が続いている(図表3。直近の全国平均は、年度内が68%(2018年度分)、2年度後が75%(2016年度分))。
また、年度内から2年度後にかけての納付率の向上幅は、全国平均で近年約10%ポイントに達している。年度内に納付しなかった人への納付勧奨が奏効している、と言えるだろう。
●課題:自動引去りの推進
納付率のさらなる改善にむけて、年金事業管理部会では電子マネーを利用可能にすべきとの意見も出た。しかし、保険料の水準(月額約17,000円)や定期的な納付が必要なことを考えれば、銀行口座等からの自動引去りの推進も重要であろう。
これまでの研究では、将来のことを軽視する傾向がある人ほど、国民年金保険料を納めない傾向があると言われている(3)。このように自分の意志で保険料を納めることが難しい場合には、自動引去りは有効な対策となりえる。総務省行政監察局も、自動引去りの推進が年度内の納付率を高める効果を指摘しており(図表4)、厚生労働省も自動引去りを推進している市町村を表彰して好取組事例の共有化を図っている。しかし、若い世代や都市部での推進が課題となっている(図表5)。
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(3)例えば、中嶋邦夫・臼杵政治(2005)「国民年金の未納要因:主観的な視点の考慮」。国民年金保険料の未納要因に関する研究を整理した近年のものには、阿部由人(2017)「国民年金未納要因の計量分析」がある。
中嶋邦夫(なかしま くにお)
ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任
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