会社員の楽しみと言えば、年2回のボーナスです。毎年、6月、12月のボーナス時期になると、「今年の夏のボーナス平均○○万円」などと、報道されます。それほど関心が高いボーナスですが、もし期待していたボーナスが突然「出ない」と言われたら、どうしたらいいのでしょう。そんな状況の対応策を詳しくご説明いたします。

ボーナスの歴史と意味

ボーナス,出ない
(画像=PIXTA)

会社員など、毎月給料をもらっている人を日本では、「サラリーマン」と言います。「サラリー」は、給料という意味でも使われていますが、コトバンクによると、元々「サラリー」は、「塩」を意味するラテン語「salalium(「塩」の意味)」が語源です。古代ローマ時代には、当時貴重品だった塩を給料として与えていたことから、由来していると言われています。

それでは、「ボーナス」はどうでしょうか? コトバンクによると、「ボーナス」も、同じくラテン語の「bonus(「良い」の意味)」が語源です。この「bonus」は、ローマ神話の成功と収穫の神「Bonus Eventus(ボヌス・エヴェンタス)」に由来すると言われています。

日本で「ボーナス」と言うときに、「ご褒美」という意味が含まれていることも、この語源から理解できます。コトバンクによると、日本では、江戸時代に武士には、「四季施」と言うものが、身分の高い人から支給されていました。支給されていたのは、文字どおり春夏秋冬の年4回の仕事着でした。この「四季施」が現在のボーナスに当たります。

時代は明治、当時欧米で支給されていた「ボーナス」が、初めて日本で支給されたのは、1876年(明治9年)の三菱だと言われています。その後、日本の会社で「ボーナス」の制度が確立されたのは、第二次世界大戦後です。家庭の支出が増大することに対応する形で、各会社が夏と冬に一時金を出すようになりました。

ただ欧米では、業績が上がった場合の「成功報酬」としての意味合いであるのに対して、日本では、初めから「年収」に組み込まれている点が大きく異なります。

ボーナスと法律の関係について

従業員や労働者に対して、会社が最低限守らなければならない基準を定めた法律が、「労働基準法」です。この中には、もちろん「賃金(給与)」関しても規定されています。

例えば、第24条第1項には、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。…」とあります。さらに、第24条第2項には、「賃金は、毎月一回以上、一定に期日を定めて支払わなければならない。…」とあり、賃金(給与)の支払い期日が定められています。

しかし、この後に書かれている賞与に関する部分には「ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(略)については、この限りではない。」とあります。つまり、賞与については、「一定の期日を定めて支払わなければならない」ものではないのです。

これは何を意味するのかというと、会社の経営者が「今年はボーナスを支給しません(支給できません)」と言っても、決して「労働基準法」に違反しないということです。

先程もご説明したように、日本のボーナスは初めから「年収」に組み込まれていると、多くの人が認識していますし、実際もそのとおりです。また、ボーナスの年収に占める割合が高いことも、より一層賞与を待ちわびる要因になっています。

しかし、給与の数ヵ月分もある春夏のボーナスを「今年は支給されません」と突然宣言されても、決して違法ではないことは、きちんと認識しておくべきでしょう。

ボーナスが出ない時はどうすればいいのか

もし会社から「今年はボーナスが出せないから我慢してくれ」と言われたら、どうしたら良いでしょうか? 先程、「労働基準法」では、ボーナスの支給は義務付けられていないとご説明しました。これに従えば、泣き寝入りするしかありません。

しかし、もしあなたが、入社する際に「労働契約」を結び、そこにボーナスの支給額(「何ヵ月分」も含む)が規定されていれば、ボーナスの支給を請求することができます。支給されないのは、明らかに契約違反だからです。

では、「労働契約」の中に、明確なボーナス支給の規定がなかった場合はどうでしょうか? この場合は、経営者側と交渉することになります。もし労働組合があれば、それぞれの社員の意見を集約して、労働組合の代表者が経営者と交渉することになります。

労働組合がなくても、社員が一致団結して、意見を集約した上で、「要望書」という形でまとめ、経営者側に提出してみましょう。ストライキなどの過激な行動を取ることはできませんが、「ボーナスカット」に対して、何かの意思表示をするべきです。

「ボーナスは出て当たり前」という考えの人がほとんどだと思いますが、法的にはカットされても違法にはなりません。ただし、「労働契約」でボーナスが規定されていれば、正々堂々と要求することができます。規定がなくても、経営者側に意思表示をしましょう。

文・井上通夫(行政書士・行政書士井上法務事務所代表)/fuelle

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