「PHR(パーソナルヘルスレコード)」とは

「HealthData Lab」で提供されるPHR(パーソナルヘルスレコード)とは、利用者の歩数などの運動状況や、睡眠時間・体重・体脂肪率などの健康情報をまとめて管理し可視化するサービスです。

これらの健康情報はスマートフォンのセンシングデバイスを利用して収集され、蓄積されたデータには、専用アプリケーションでアクセスできるようになります。専用アプリケーションの提供はこの冬頃としています。将来的にはこのPHRと遺伝子情報によって得られたデータから利用者の健康維持に関する総合的な分析によるアドバイスが行われる予定です。


経済・政治の関心まで分析するモニター募集

既に記しました通り、ヤフーはゲノム分析サービスの一般提供に先立ち無料モニターを募集しています。無料モニターに選ばれれば、キット料金や解析費用、送料も全て無料となります。また、約120項目の解析項目があり病気のリスクや体質だけでなく、言語能力や学習能力、非言語IQ、経済・政治の関心といった項目までも分析対象となりますので、結果によっては落ち込んでしまうような人は避けた方が良いかもしれません。

また、ゲノム解析以前に、健康情報や生活習慣・性格・学歴などに関する約250項目ものアンケートにも答えねばなりませんから少々情熱が必要かもしれません。なお、結果は「Yahoo!ヘルスケア」のマイページで確認できるようになります。

また、病気のリスクや体質が分かるだけで無く病気を予防するためのアドバイスの提供も受けられます。ただ、無料モニターに選ばれた人は、最低2年間の健康調査に関するアンケートなどが行われますのでそのことも承知しておく必要があります。いろいろと面倒そうではありますが、本来であれば数万円かかるゲノム解析を無料で受けられるのですから多少の手間は惜しんではならないと言えそうです。


IT企業が遺伝子解析サービスに参入

先行するサービスとして、米国の23andMeから遺伝子検査サービスがわずか99ドル(1万円前後)で提供されています。同社のサービスでは、自分にはどういった人種の血がどのくらい混じっているのか、どういった薬が効くとかリスクがあるといったDNA分析を唾液の採取だけで簡単にできてしまいます。国内のサービスとしては、8月からDeNAよりMYCODEが開始されています。また、エムティーアイ子会社のDearGeneからは「がん+生活習慣病遺伝子解析キット」が3月から販売されています。特にDeNAは遺伝子検査サービスを、現在の売上の大半を占めているゲーム事業に次ぐ収益の柱に育てるとしています。

実は国内だけでも遺伝子検査ビジネスにはIT企業を含めて700社余りが算入していると言われている成長期待産業です。ただ、その品質にはまだ市場からの信頼性が低いとして、DeNAなど後発組は検査の質の向上を図っております。

そして遺伝子検査ビジネスが期待されている市場であることを示すかのように、米Googleも遺伝子解析を中心とする医療研究プロジェクト「Baseline Study(基礎研究)」を開始することを明らかにしています。

このようにIT企業が遺伝子検査ビジネスに参入していることは、彼らが得意とするビッグデータ解析と予防医療の融合が、同業界の関心の強さを示しているからだと言えそうです。

Googleでは解析のために入手した個人情報は一切他用せず、匿名のデータとして処理します。例えば保険業界への提供なども一切行わないとしていますが、他社では将来マーケティングに使用する可能性があります。実際ヤフーではウェブ上に、「今後、お客様にとって有用な商品やサービスの提案ができるようになるか検討やテストを繰り返し、技術的倫理的に実用に足りると判断した場合」には何らかの利用を行う事を示唆する文言を記しています。

また、米国では現在、ITとヘルスケアの融合領域に関する投資がベンチャーキャピタルを中心に急増しているといいます。その背景には遺伝子検査の費用が一般消費者向けにまで低価格化したことや、検査方法の簡易化、あるいはウエアラブル・デバイスの進化により健康管理ツールが普及するであろうという予想があることなどが考えられます。

そのことにより、投資家達の間では遺伝子検査ビジネスの市場が拡大すると予想されているのです。まだ現段階では遺伝子検査ビジネスの市場規模がどの程度に拡大するか見ていませんが、投資形にとっては期待出来る市場と産業であると認識されていることは間違いないでしょう。

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