• 7月17日の市場引け後、2019年度第2四半期決算発表
  • 予想売上高:49.3億ドル
  • 予想EPS:0.56ドル

決算報告が近づく中、ネットフリックス(NASDAQ:NFLX)への投資家の信頼は厚く、同社株価は1年間の最高値から10%以内の低下に収まっている。だがこの好調ぶりも直に終わる可能性がある。

同社は負債を抱え、レバレッジも高く、過去類を見ないペースで現預金を消費している。この財務面での不安と来年に予想される競争激化により、同社の築いてきた砂上の楼閣は崩れ去るかも知れない。

以下で同社決算報告での注目ポイントを確認していく。

成長の質に地域間で違いが

同社は間違いなく成長を続けており、会員数・年間売上高ベース共に継続的に成長している。前四半期の同社売上高45.2億ドルは前年同期比22%増となっている。会員数についても、25.2%増の1億4880万人に上っている。

前四半期米国売上高は14%増の20億7000万ドル、米国外売上高は32.8%増の23.6億ドルとなっており、この数字だけでは問題には気づけない。しかし利益率に注目してみると、米国は34.4%、米国外は11.6%となっており、成長が持つ意味が地域間で異なっている。そして同社の成長は、利益率の低い米国外に支えられているのだ。

ネットフリックスは米国において既に高い普及率を誇っているものの、未だに高い成長率がバリュエーションにおいて加味されており、今後の成長は現在よりも利益率が低い地域によるものであることを反映していないように見受けられる。

現預金の消費と有利子負債が大きな不安材料

ネットフリックスのビジネスモデルは構造上、多額の負債を抱え続けてきた。同社の契約残高(ライセンス料支払い義務、負債、その他義務)は前年第1四半期に284億ドルであったが、2019年度第1四半期には77億ドル(27%)増加し、361億ドルとなった。同社EBITDAは17億ドルに留まり、将来負債/EBITDAは21倍超となっている。

これらの支払い時にはEBITDAの成長が予想され、現時点で問題にはなっていない。しかし、同社株のボラティリティが非常に高まり株価に影響を与える可能性がある。

同社はコンテンツ制作に150億ドルを投じる予定で、そのトレンドは増加傾向にある。ネットフリックスのキャッシュフローは継続してマイナスであり、前四半期は△3億8000万ドルであった。数年後までの費用投下を考慮すると、少なくとも2022年までキャッシュフローはプラスに転じないと見られる。費用の抑制と会員利用料の更なる増加がキャッシュフローをプラスにする唯一の策だが、同社にそれが可能なのだろうか。同社マネジメントの、レバレッジに関する計画へのコメントに注目したい。

アベンジャーズその他との戦い

ストリーミングサービスの競争激化は、コンテンツ・費用面の両者においてネットフリックスにプレッシャーを与えている。

ネットフリックスは業界の先駆者として独占的な地位をこれまで享受してきた。数十億ドルに上る費用を投じてきたが、今後もこの地位を保持することが出来るのか疑問の声が上がっている。

競合もよりコンテンツに費用を投じるようになってきている。AT&T傘下のHBOは主流サービスへの転換を狙い、高品質ニッチセグメントからネットフリックスと競合するポジションへ移行しつつある。2020年開始のHBO MAXにおいて、ネットフリックスでも人気な「フレンズ」の版権を獲得している。

ウォルト・ディズニー(NYSE:DIS)もディズニー+という独自のストリーミングサービスを11月に開始する。月額利用料は7ドル(ネットフリックスは13ドル)で、マーベルやスターウォーズシリーズなどのディズニーが所有するコンテンツへアクセスできる。アマゾン(NASDAQ:AMZN)は勿論以前から競合となっており、アップル(NASDAQ:AAPL)もアップルTV+というサービスを間もなく開始する。

こうしたサービスにおけるコンテンツ制作量は非常に高額で、今後数年間でキャッシュフローが継続してプラスになる企業は限られると見られる。数社は必ず失脚する運命にあり、ネットフリックスが競争に敗れた場合、同社のレバレッジを考慮すると大きな痛手となりことが予想される。

もう一つ注目すべき点は、ネットフリックスがストリーミングサービス専業であるという点だ。ディズニー、アマゾン(NASDAQ:AMZN)、アップル等は全て他の収益源があり、ネットフリックスよりも安価でのサービス提供、そして会員数増加のための積極的な資金投下が可能になっている。

総括

ネットフリックスへの投資は安全なものではない。ファンダメンタルズ面で多くの懸念が存在し、財務的観点から不安定な会社だと考えられる。

米国外での成長の利益率の低さ、競争の激化など暗雲が立ち込めてもいる。現在の成長率及び金利環境を考慮すると、ネガティブなカタリストが発生しない限り、同社株のショートは推奨できない。しかし長期的に、同社の抱えるリスクは株価に織り込まれていくと予想する。(提供:Investing.comより)

著者:クレメント チボー