輸出の減少が続く
財務省が7月18日に公表した貿易統計によると、19年6月の貿易収支は5,895億円の黒字となり、事前の市場予想(QUICK 集計:4,200億円、当社予想は2,878億円)を上回る結果となった。輸出が前年比▲6.7%(5月:同▲7.8%)と7ヵ月連続の減少、輸入が前年比▲5.2%(5月:同▲1.5%)と2 ヵ月連続の減少となったが、輸出の減少幅が輸入の減少幅を上回ったため、貿易収支は前年に比べ▲1,383億円の悪化となった。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲5.5%(5月:▲8.9%)、輸出価格が前年比▲1.2%(5月:同1.2%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲3.2%(5月:同▲1.2%)、輸入価格が前年比▲2.1%(5月:同▲0.3%)であった。
季節調整済の貿易収支は▲144 億円と12ヵ月連続の赤字となったが、5月の▲6,215億円から赤字幅が大きく縮小した。輸出が前月比4.8%と2ヵ月ぶりの増加となる一方、輸入が前月比▲4.4%の減少となった。
6月の通関(入着)ベースの原油価格は1 バレル=73.2ドル(当研究所による試算値)と5月の73.1ドルとほぼ同水準だった。足もとの原油価格(ドバイ)は60ドル台前半となっており、通関ベースの原油価格は7月には60ドル台まで下落することが見込まれる。原油安による輸入金額の減少により貿易収支(季節調整値)は7月以降黒字に転じる可能性があるが、輸出の低迷が続くことが予想されるため、貿易黒字が定着するまでには至らないだろう。
EU向け輸出の減少幅が拡大
19年6月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比2.9%(5月:同▲1.0%)、EU 向けが前年比▲4.5%(5月:同▲8.0%)、アジア向けが前年比▲5.3%(5月:同▲11.8%)となった。
4-6月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲0.1%(1-3 月期:同2.7%)、EU 向けが前期比▲5.5%(1-3月期:同▲2.1%)、アジア向けが前期比0.8%(1-3月期:同▲4.2%)、全体では前期比▲1.0%(1-3月期:同▲2.5%)となった。
米国向けは3四半期ぶりのマイナスとなったが、18 年度後半の大幅増加の後としては堅調を維持している。一方、EU 向けは製造業を中心とした景気減速を受けて減少ペースが加速し、アジア向けは6四半期ぶりのプラスとなったものの、1-3月期の大幅な落ち込みの後としては戻りが弱い。中国経済の減速が鮮明となっていることを踏まえれば、アジア向けの輸出が底打ちしたとの判断は尚早だろう。
一方、4-6月期の輸入数量指数は、1-3月期の大幅な落ち込みの反動もあり、前期比0.3%(1-3月:同▲2.8%)と2 四半期ぶりに上昇した。
4-6月期の外需寄与度は▲0.5%程度のマイナスに
6月までの貿易統計と5月までの国際収支統計の結果を踏まえて、19年4-6月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比0.5%程度の増加、輸入が前期比3%程度の増加となった。輸出の低迷が続く一方、輸入が大幅に増加することにより、4-6月期の外需寄与度は前期比▲0.5%(1-3月期:同0.4%)と2四半期ぶりのマイナスとなることが予想される。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任
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