区分所有マンションを投資先とする不動産オーナーはたくさんいます。年金などの社会保障問題や経済動向など不安な報道が多い現代では、子どもや孫に区分所有マンションを遺してあげたいと思う人もいるのではないでしょうか。ただし区分所有マンションは、戸建てなどとは違った所有形態の不動産です。この場合、相続税法上の評価はどのようになるのでしょうか。

区分所有マンションを相続する場合の税法上のチェックポイント

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(画像=Bacho/Shutterstock.com)

区分所有マンションが一戸建てや一棟建てと大きく異なるのは、「一つの不動産を複数の人間が別々に保有していること」「共有部分があること」です。区分所有マンションは、基本的に一つの建物の土地を複数の人間が別々に所有しています。さらに所有者が専用で利用している「専有部分」とすべての居住者が共同で使用している共有部分と2種類あるのが特徴です。

共有部分とは、廊下やエントランス、ホール、エレベーターといった専有部分以外の箇所になります。区分所有マンションの財産評価を行う場合には、「複数の人間で一つの土地や建物を保有している現況をどう按分するか」に注意しなくてはなりません。

相続税法上の評価方法

区分所有マンションは「区分所有の土地」「区分所有の建物」の2つに分けて評価を行います。賃貸物件である場合には、評価の仕方はそれぞれ以下のようになります。

土地

1 土地そのものの評価額を算出
土地は「建物が建っている敷地を所有者全員が共同で所有している」と考え、全敷地のうち所有者の持ち分に対応する部分が相続税の課税対象です。具体的には以下のように計算します。

・土地の相続税評価額=敷地全体の面積×路線価方式あるいは倍率方式で算出した1平方メートルあたりの価格×区分所有マンション所有者の敷地権の割合

ここでいう「敷地権の割合」とは、マンション保有者の敷地の持ち分割合をいい、マンションの登記簿謄本の表題部や固定資産税通知書に記載されています。

2 賃貸物件としての評価を算出
持ち主の居住用ではなく賃貸事業のための物件については、さらに次のような計算を行います。

・1で算出した土地の相続税評価額×(1-借地権割合(※)×借家権割合(通常30%)×賃貸割合)

※借地権割合は地域によって異なります。国税庁がウェブサイトで公開している路線価図で確認できます。

賃貸割合は、賃貸に出している部屋の面積の割合です。所有している貸室が10室で面積が各100平方メートルの場合、そのうち3室で300平方メートルが空室ならば、賃貸事業として稼働しているのは7室の700平方メートルになるので賃貸割合は70%になります。このほか敷地が不整形地や奥行長大などである場合には、補正率を乗じて調整することになります。

建物

建物については、「専有部分+持ち分割合に応じた共有部分」が相続税の課税対象です。「自分で計算しないといけないの?」と思うかもしれません。しかし実際は固定資産税の課税証明書や固定資産税納税通知書の「固定資産税評価額」がそのまま「専有部分+持ち分割合に応じた共有部分」の金額です。したがって賃貸用の区分用マンションについての評価額計算は次のようになります。

・区分用マンション(建物のうちの所有部分)の相続税評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合(通常30%)×賃貸割合)

節税するなら小規模宅地等の特例の適用も忘れずに

節税するうえで忘れたくないのが小規模宅地等の特例の適用です。区分所有マンションを配偶者や親族が相続した場合、申告期限まで賃貸事業を営むなどの事業継続要件などを満たしていれば、不動産賃貸業用の不動産として扱われます。その結果、区分所有マンションの敷地部分につき、200平方メートルを上限として評価額が50%減額することが可能です。

このほか相続税をできるだけ節税するならば「空室をなくす努力」が必要になります。先述の計算式で見た通り、空室部分があればその分評価額が上がるため、日ごろから賃貸の募集をかけるなど手間がかかることを認識しておきましょう。(提供:YANUSY

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