本記事は、新井 亨、鄭 剣豪氏の著書『シン・華僑の教え』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

影響力
(画像=vegefox.com / stock.adobe.com)

世界60カ国で6,000万人、広がるシン・華僑の影響力

異国の地に降り立ったとき、ふと目に入る赤い提灯の灯り、漢字が並ぶ看板、湯気が立ちのぼる屋台、賑わって活気のある市場、どの国に行っても見かける「チャイナタウン」の風景は、単なる観光名所ではなく、長年にわたり築き上げられてきた壮大な経済ネットワークの象徴であり、この中心にいるのが「華僑」と呼ばれる人々です。

華僑とは、祖国である中国を離れ、世界各地へと移住した中国系移民のことを指します。異国の地に根を張り、地元社会に溶け込み、独自の経済圏を築き上げ、飲食業、貿易、製造業、金融業、さらにはIT産業や最先端のAI産業に至るまで幅広い分野で成功を収めています。

世界には約6,000万人の華僑が存在し、その総資産は約2兆5,000億ドル(約400兆円 ※2024年:1ドル160円で計算)と推定されており、経済的な影響力は世界第8位の国力に匹敵するといわれています。

日本においても、横浜、神戸、長崎などに形成された中華街は、華僑コミュニティの繁栄と影響力を象徴する存在であり、単なる観光地としてだけでなく、地域経済の一部として確固たる地位を築いています。

例えば、横浜の「元町・中華街駅」は、その名のとおり、街の一角にとどまらず、都市の一部として広く認識され、駅の名前にもなっているほどです。

華僑の強い影響力の秘密

なぜ華僑はこれほどまでに強い影響力を持つに至ったのか? その秘密は、彼らが持つ強固な結束力と、独自のビジネスノウハウの継承にあります。

華僑は、異国の地においても互いに助け合い、情報や商売の知識を共有しながら発展するというスタイルを持っており、彼らのネットワークは、単なる血縁や地域性を超え、信頼関係を基盤とした強力な経済圏を生み出しています。

さらに、こうした華僑の精神は、伝統的なビジネスにとどまらず、現代のIT産業やグローバル企業の経営にも受け継がれ、新たな世代の起業家たちによって、さらに発展し続けているのです。

シンガポール、インドネシア、タイ、アメリカ、カナダ、欧州やアフリカなど、華僑が活躍する地域には例外なく経済圏が生まれ、その影響力は現地の経済にとどまらず、国際的なビジネスの中枢にまで及んでいます。

シンガポールが世界有数の金融センターとして確立されている背景には、華僑系のビジネスパーソンたちの積極的な活動があります。シンガポールの富裕層の大半は華僑系で、シンガポールの発展を主導しています。

シンガポールは、公用語として中国語が通じる国で、華僑系を中心に金融都市としての地位を築き、アジアで1人当たりGDPが最も高い国となりました。シンガポールだけでなく、華僑は東南アジア諸国の経済の70~90%を支配しているといわれ、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンなどでは、財閥企業の多くは華僑系であり、その影響力は圧倒的なのです。

アジアに世界の人口の約60%(約46億人)が集中し、経済成長率も伸び続けるなど「アジアの時代」がこれから本格化すると言われているなかで、華僑はすでにアジア経済を牛耳ぎゅうじっています。

アジアの主要企業の多くは華僑系企業によって創業されており、影響力は年々拡大しています。一方で、日本は「失われた30年」と呼ばれる低成長時代を経験し、今も経済の停滞が続いているため、その差は年々広がっていくでしょう。

世界中で影響力のある「世界三大商業民族」の正体

ここで「華僑」についてさらに詳しく解説します。

世界には、ビジネスの分野で卓越した能力を発揮し、世界経済に強い影響を与えている「世界三大商業民族」と呼ばれる人たちがいます。

それが、印僑(インド系商人)、ユダヤ人、華僑(中国系商人)の三大民族です。それぞれ異なる強みを持ち、得意とする分野やネットワーク構築手法は異なりますが、どのグループも世界経済において圧倒的な存在感を示しています。

①印僑(インド系商人) ── IT事業とグローバル戦略の巧者

印僑は、インド出身者が世界各国に広がり、特にIT・テクノロジー分野で成功を収めており、宇宙研究のNASAやシリコンバレーのIT企業の多くでインド系CEOが活躍、技術革新を武器にグローバル経済での影響力を持っています。

印僑の成功の秘訣は、教育と技術に対する投資、英語力を活かした国際競争力の高さ、ネットワークを活用した情報共有にあります。インド国内で高い教育を受けた人材は、海外に出てグローバル企業で経験を積み、次世代へとその知識と経験を継承しています。特にIT分野では、Googleの元CEOであるサンダー・ピチャイをはじめ、インド系経営者が世界的な企業を率いています。

②ユダヤ人 ── 金融・法律のエキスパートとして影響力を発揮

ユダヤ人は、金融・法律・メディアといった分野で圧倒的な影響力を誇っており、単なる商売のうまさではなく、知識と戦略を駆使し、ルールをつくる側に回ることに強みを持っています。

歴史的に差別や迫害を受け、特定の職業に就くことが制限されてきたユダヤ人は、流通業や土地所有よりも、金融、法律、メディア、学問などの知識を武器にすることで経済界での影響力を強めてきました。

例えば、ロスチャイルド家をはじめとするユダヤ系の銀行家たちは、国際金融の分野で長年にわたって世界を動かし、金融・法律・メディアなど世界経済を動かすルールをつくる側として成功しており、ハーバードやスタンフォードなどの名門大学にも多くの学者を輩出し、政界とのつながりも強くあります。

ユダヤ人のネットワークの特徴は、血縁や宗教を超えて、「知識と資本による結束」を重視する点にあり、専門知識を最大限に活用し、世界の金融市場や法律のルールを熟知しながら、より有利な立場を築いています。

③華僑(中国系商人) ── 商売全般に強く、地域に根付くビジネスを世界へ拡大

華僑のビジネスの最大の特徴は、現地に根差した強固なネットワークを活かし、商売を展開することです。ユダヤ人のように金融市場を操るわけでなく、印僑のようにIT分野に特化しているわけでもありませんが、どの土地に行ってもゼロから商売を成功させる能力を持っています。

その能力には、主に3つの特徴があるといわれています。

1つ目は、現地の商圏に深く入り込む点です。
華僑は異国の地に移住すると、まずは地元の経済圏に入り込んで地域密着ビジネスをスタートさせ、そこから徐々に事業を拡大し、現地に根を張りながら商圏を広げていくことで地域のインフラになるまで拡大させます。

2つ目は、強固なコミュニティと互助システムがあることです。
華僑は、同郷や家族のつながりを非常に重視し、互いにビジネスを支え合う文化があります。新しくビジネスを始める際も、すでに成功している華僑ネットワークから資金や取引先を紹介し合うことで、スムーズに事業を展開しています。

3つ目は、環境に適応し、機会を見極めるスピードが速いことです。
華僑は、状況に応じて新しい市場へシフトし、チャンスを掴むという「商売の本質」を正しく理解しています。リスクもいち早く察知し、柔軟に変化して新しいビジネスチャンスを探し続ける姿勢を持っているのです。

華僑の強みは、ジャンルや国やビジネス規模に関してもオールマイティで成功できている点です。印僑がIT企業に強く、ユダヤ人が金融に強いといった特有のジャンルで強みを持っているのに対して、華僑は、どの業種でも成功をしている万能型といえます。

『シン華僑の教え』より引用
(画像=『シン・華僑の教え』より引用)
『シン・華僑の教え』より引用
新井 亨(あらい・とおる)
サブスクD2C総研株式会社代表取締役。ARAIインベストメント代表、株式会社Telemarketing One代表取締役。株式会社RAVIPA代表取締役社長。英国ウェールズ大MBA卒業。年商1000億の企業のサポートも行なうサブスク業界の第一人者。
中国・北京へ留学し、現地で富裕層向け美容室事業、貿易事業、不動産事業など複数事業を成功へ導く。2024年には東京証券取引所へ新規上場を果たす。サブスク事業やSaas事業のクライアントのマネタイズ実績は累計1000億円以上。本書共著者の鄭剣豪氏と日本AIロボット株式会社を創業し、日本一のサブスクを決めるサブスク大賞2024にて「AIロボットのサブスク」が特別賞を受賞。医療法人理事に就任し、「新宿クリニック」「新宿消化器内科クリニック」「表参道総合クリニック」「クロト薬局」の経営もしている。国内外の華僑ビジネスにも深く精通しており、「華僑経営オンラインスクール」の塾長もしている。
鄭 剣豪(てい・けんごう)
中国人実業家。剣豪集団株式会社会長。一般社団法人日本中国商会(JCCC)会長。日本寧波商会会長。中国寧波市生まれ。神戸大学法学修士。北京大学光華管理学院EMBA。
アジア貿易、投資ファンド運営、企業M&A、工業団地開発、文化交流事業、不動産開発管理など多岐に事業を行ない、寧波、香港、北京、東京、大阪、北九州など各地に法人を運営。2014年に神戸にあるP&Gジャパンの30階建ての本社ビルを買収したことは日本でも大きな話題となった。経営者として活躍するほか、20年間以上日中友好交流活動に力を入れ、両国のマスコミを通じ、日中友好論者として積極的に活動を展開している。

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『シン・華僑の教え』
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