本記事は、おさじままさ氏の著書『10人の東洋哲学者が教える ありのままでいる練習』(SBクリエイティブ)の中から一部を抜粋・編集しています。

黄色のボケの背景に仏像の手、知恵と集中力の光のコンセプト
(画像=フアウン / stock.adobe.com)

過去は変えられる

誰だって欲しいものは自分のものにしたいし、手に入れたものは失いたくないと執着しますよね。

しかし残念ながら、「自分のものを取られた」と感じる場面は、日常のあらゆるところにあります。

たとえば、

失恋してしまった時
株が暴落して大損した時
仕事の成果を横取りされた時
愛用品が壊れた時に、

「どうして私が……」「まさか、こんなことになるなんて」「そんなバカな」「なぜ、こんなにも早く……」

などなどマイナスの感情が次々とあふれかえってきます。

それは「どうしても手にしたい」「これだけは自分のものだ」と固執する気持ちが強ければ強いほど、失った時にさらに固執します。

大切なものを失っても、まったく動揺しないつわものにはなかなかなれるものではありません。人間だもの(笑)。

問題は、つらい感情が出た後ですね。

後悔とか、怒りとか、悲しみといった負の感情をいつまでも引きずって増幅させてしまうか、それとも早めに解消したり、しょうさせたりして、良いエネルギーに転じさせられるか。この違いは大きいです。

ちなみに、持っていたものを失ったり、良い関係性が崩れてしまったりした時に感じる苦しみを、仏教ではといいます。

これはさんの1つです。三苦とは、次の3つのことを指します。

(現在、苦しいと感じる苦しみ)
(楽しかったものを失った苦しみ)
ぎょう(将来失うという無常を歎く苦)

苦苦は現在、壊苦は過去、行苦は未来にフォーカスした苦しみです。

しかし、共通しているところがあります。実は3つとも「現在」感じているということです。

壊苦は、過去のことを思い出して現在苦しんでいるし、行苦は、未来を思い浮かべて現在苦しんでいます。ということは、「今・ここ」にいる現在の自分のとらえ方次第で、未来の感じ方も、過去の感じ方も変えることができるのです。

たとえば行苦。もちろん必要な未来への備えは大事ですが、無駄に未来を心配する必要はありません。ああなったらどうしよう、こうなったらどうしようという心配ごとの91.4%は実際には起こらないという研究結果もあります(注②)。

未来を固定的に考えるのは「モノ的」見方です。この場合の「モノ」とは、固定不変で変わらないもの全般を指します。

ただ未来を心配するのではなく、必要な準備をしておこうと備え、未来を生み出していこうとするのは、「コト的」見方。「コト」とは状況や関係性によってすべては変わりゆくし、変えていけるという意味です。

また、たびたび「過去は変えられない」と言われますが、これは半分当たっていて半分間違いです。ある意味、過去は変えられます。どういうことでしょう?

まず、過去を「モノ」としてとらえた場合は変えられません。

たとえば、高校時代、彼女(彼氏)に振られたという事実は変えられないでしょう。これが「モノ(客観的事実)」としての過去です。

でも、その失恋を後悔のみの黒歴史ととらえていた「コト」は変えられます。あの経験は、ものすごく意味があることだった。おかげで自分をもっと磨こうと思えて成長できたし、人の痛み、悲しみもより感じられるようになった、あれもまたいい経験(コト)だった、というように。

過去の事実(モノ的とらえかた)は変えられないけれど、過去の意味(コト的とらえ方)は変えられるし、モノよりコトのほうが重要なのです。

つまり、モノとしてとらえた場合、そこに執着が生まれやすくなり、コトとしてとらえた場合、執着が手放しやすくなるのです。

10人の東洋哲学者が教える ありのままでいる練習
筬島 正夫(おさじま・まさお)
1970年長崎県に生まれる。
幼稚園の頃、戦争などの争いが絶えない世界に絶望感と無力感を覚え、みんなが幸せになれる道を探し始める。さらに高校時代、後輩の死を通して、良い学校を出て良い就職してお金持ちになれば幸せになれるという幸福観に大きな疑問を抱く。
キリスト系の関西学院大学社会学部に入学し、答えをキリスト教や西洋哲学に求めるも得られず、東洋哲学に目覚める。 世界の哲学・思想を比較する社会学を学び、浄土真宗の布教使として学んできたことを活かして令和6年フリーのユーチューバーとして独立。
すべてのお経を読破したうえで、東洋哲学の深い内容を中心に0から一気にわかりやすく解説し、チャンネル登録7万5,000人を突破。おさじー先生の名前で親しまれている。


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