本記事は、おさじままさ氏の著書『10人の東洋哲学者が教える ありのままでいる練習』(SBクリエイティブ)の中から一部を抜粋・編集しています。

静けさと瞑想のための竹を背景にしたバランスの取れた石の上に置かれた仏像
(画像=マルコ / stock.adobe.com)

なぜ世界のエリートは東洋哲学を学ぶのか?

「東洋哲学」と聞いた時、「成功者たちが仏教や禅にけいとうしている」という話を思い出す人もいるかもしれません。

実際、ハーバードやスタンフォードなどの名門大学では、東洋哲学の講義が大人気で、グーグルやアップル、メタ(旧フェイスブック)といった企業のトップたちも、マインドフルネスや禅の思想を学んでいます。さらに、ハリウッドスターやトップアスリート、歴史的な偉人たちまで、東洋思想に惹かれ続けてきました。

かつて、エリートたちの目標は明確でした。

「いかに成功するか」

ハーバードやスタンフォードの学生たちも、ビジネスの勝者となるべく、経営学や西洋哲学を学び、競争に勝つための知識を磨いてきました。しかし、卒業生の多くは高収入を得ても、幸せとは言えない状況に陥ったのです。むしろ、プレッシャーやストレスで燃え尽き、人生に意味を見いだせなくなる人が増えていました。

そこで彼らが目を向けたのが、東洋哲学です。

西洋の「個人の成功」を追い求める考え方とは異なり、東洋哲学は「こころの平安」や「周りとどう調和をとるか」を重視します。特に仏教や道教には、物質的成功ではなく、心の在り方やバランスを大切にする教えが多く含まれています。

ハーバード大学では、かつてマイケル・サンデル教授の「ハーバード白熱教室(JUSTICE)」が話題になりましたが、それに匹敵する人気講義となったのが東洋思想や、心の幸せに関する授業です。

700人以上の学生が殺到し、「人生を左右する決断の仕方」や「自己の在り方」について学んでいます。また、スタンフォード大学では「思いやりと利他精神」を研究するセンターが設立され、東洋哲学の概念が深く取り入れられています。

彼らは、単にお金持ちになりたいのではなく、「どうすれば満たされた人生を送れるのか?」という問いに直面していたのです。

ビジネスの世界に目を向ければ、たとえば、グーグルのマインドフルネス研修「サーチ・インサイド・ユアセルフ」が挙げられます。これは、仏教の瞑想を応用した自己認識と集中力向上のプログラムです。グーグルの社員は、競争ではなく「内面の安定」を求めることで、創造性と生産性を高めているのです。

また、アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズも、東洋思想に影響を受けた人物でした。彼は日本の禅僧と交流を持ち、仏教の思想に基づいたシンプルなデザイン哲学を確立しました。結婚式も仏教の儀式で執り行い、彼の人生観そのものが仏教と深く結びついていました。

フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグも「仏教は驚くほど素晴らしい哲学だ」と語っています。彼はカンボジアを訪れ、妻の影響で仏教を学び始めたそうです。

また、AirbnbエアビーアンドビーUberウーバーなどのシェアビジネスの概念も、東洋思想の影響を受けています。「所有するのではなく、共有する」という考え方は、物質主義の行き詰まりを感じた現代社会において、新たな価値観として受け入れられています。

また、ハリウッドスターたちも東洋思想を学んでいます

たとえば、キアヌ・リーブスは映画『リトル・ブッダ』で釈迦役を演じ、仏教を深く学びました。リチャード・ギアは長年にわたるチベット仏教のしんぽうしゃで、ダライ・ラマとも親交があります。

ブラッド・ピットも「アメリカの経済至上主義では幸せになれない」と語り、仏教の教えに影響を受けています。さらにマイケル・ジョーダン(元プロバスケットボール選手)やタイガー・ウッズ(プロゴルファー)も、その全盛期に仏教の教えを日々の実践に取り入れていました。

かのアインシュタインも「もし現代科学に足らないものを埋め合わせるものがあるとすれば、それは仏教である」と述べており、哲学者ニーチェは「仏教はキリスト教の100倍現実的だ」と評しています。

彼らに共通しているのは、「成功」だけでは満たされないという気づきです。

地位や名声を手にしても、内面の安らぎがなければ、幸せにはなれない。その答えを求めて、彼らは東洋哲学にたどり着きました。

成功した後の虚しさや、競争社会の限界に気づいたエリートたちは、東洋の知恵を求め始めたのです。

世界がグローバル化し、テクノロジーが進化する中で、単なる物質的な豊かさではなく、精神的な充足を求める動きが広がり、東洋哲学の価値が再評価されているのです。

あなたもすでに、この大きな流れを感じているかもしれませんね。

10人の東洋哲学者が教える ありのままでいる練習
筬島 正夫(おさじま・まさお)
1970年長崎県に生まれる。
幼稚園の頃、戦争などの争いが絶えない世界に絶望感と無力感を覚え、みんなが幸せになれる道を探し始める。さらに高校時代、後輩の死を通して、良い学校を出て良い就職してお金持ちになれば幸せになれるという幸福観に大きな疑問を抱く。
キリスト系の関西学院大学社会学部に入学し、答えをキリスト教や西洋哲学に求めるも得られず、東洋哲学に目覚める。 世界の哲学・思想を比較する社会学を学び、浄土真宗の布教使として学んできたことを活かして令和6年フリーのユーチューバーとして独立。
すべてのお経を読破したうえで、東洋哲学の深い内容を中心に0から一気にわかりやすく解説し、チャンネル登録7万5,000人を突破。おさじー先生の名前で親しまれている。


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10人の東洋哲学者が教える ありのままでいる練習
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